“社会課題をエンターテイメントで解決する″を掲げ、「THAT’S FASHION WEEKEND」、「 Best SDGs Award for University Students」など、ファッションを軸にサスティナブルな企画を次々とプロデュースする株式会社Banksy代表 菅野充さん。
35歳までずっとモヤモヤしていたという彼がコロナ禍にもがきながら見つけた新たな価値を生み出す「視点」とは?
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PROFILE
菅野充(かんのみつる)
◉――“社会課題をエンターテイメントで解決する″をコンセプトにサスティナブルファッションを体現するプロジェクト『THAT’S FASHION WEEKEND』を主催。
◉――情報発信、若手支援、チャリティファミリーセールといった3つの活動を通して“地球に優しく生きる“という価値観を提案している。
▼Rethink INDEX
1.35歳まで「自分に何が向いているか」わからず、ずっとモヤモヤしていた
2.イベント立ち上げ当初は参画がゼロ社。コロナ禍のアパレル業界の課題解決が転機に
3.立ちはだかる壁を突破するためには、24時間「Rethink」を繰り返すこと
4.「自分の理想を信じ続けること」理想をエネルギーに変えてほしい
1.35歳まで「自分に何が向いているか」わからず、ずっとモヤモヤしていた。
「とにかくエネルギーをどこにぶつけていいかわからなかったんですよね。
30歳から33歳の3年間はエネルギーの使い方を間違えて、モヒカンにしてました(笑)」
現在42歳の菅野さんは、35歳までの自身のことを根拠のない自信だけ持っている“ずっと売れないお笑い芸人“のようだったと例える。
社会人になってからデザイン、動画制作、EC事業、イベント時には小説を書いたりと様々なことにチャレンジしてきたが、それでも「自分に何が向いているかわからない」とモヤモヤする日々。「こんなものじゃない、もっと社会にインパクトのあることをやらかす人間だ」と自分が描く理想の姿と現実のギャップに、行き場のないエネルギーをどこに発散していいかわからない、そんな”モヤモヤ”を長年抱え続けてきたそう……。
「大丈夫か自分?」と不安になる日々に何度も心が折れそうになったが、それでもチャレンジを諦めなかったのは、「理想の自分」を持ち続けていたから。
実は、その軸を形成したのは、地域の社会課題に向き合って介護事業を手掛ける両親の姿だったと言う。影響を受けた両親の背中を追いかけるように、「少しでも自分の理想に近づくためにとにかく時間やお金をすべて突っ込んできました」
今思い返してみると、「もがきながら動いてきた時間こそが、『未来の自分への投資』だったんだと思います」と振り返る。
「でも、まだ少し風が吹いてきたかな? 程度で、ぜんぜんまだまだですよ(笑)」。菅野さんの描く理想ははるか先にあるようだ。
転機はコロナ禍に訪れた。ファッション業界が抱える社会課題について、大手アパレル企業の役員から相談されたのが大きなきっかけとなる。
「コロナ禍の影響で、消費者のライフスタイルや価値観が大きく変わったんです。外出機会の減少で、在庫問題が大きな社会課題になっていることを知りました。
アパレル業界の方々と話している中で、特にファストファッションの大量生産、大量消費、大量廃棄という負のサイクルが2000年代から社会問題になっていると。この流れから抜け出さなければ、持続可能な社会に変えることができないと強く感じたんです。そこで、自分ができることを考えはじめました。」
世界的に見ても、従来のアパレル業界は、ファストファッション全盛で製品の大量生産を生み出すサプライチェーンが主流。しかし、環境問題やコロナ禍での価値観の変化により、このサイクルに疑問が生じはじめていたのも事実。 「これはファッション業界に限ったことではありませんが、売上や店舗数至上主義の世の中の評価基準を変えなければ、本質的に変えることは難しいんです。メーカー側ももちろん強い課題意識があったものの、消費者は地球に優しい商品よりも価格が安い方に流れてしまうものです。
そこで、『消費者側の意識を変えない限りは、この問題の本質的な解決はない』との想いから、サスティナブルファッションを体現するプロジェクト『THAT’S FASHION WEEKEND』の立ち上げを行ったのです。しかし、2020年の開始当初は、コロナ禍という逆風もあり、また実績もないことから参画を見合わせる企業やブランドが多く、いきなりゼロ社という苦境の中の挫折だらけの船出という状況でした(笑)」
そこで菅野さんが着目したのが、アパレル業界では、サスティナブルファッションが世界的に注目されているということ。この世界的なトレンドをとらえて、業界各社やブランドにあきらめずに自身の想いや理想を語り続けた。更には、業界や各ステークホルダーが抱える課題にもう一歩踏み込んでみては、常に「理想の6角形」に立ち返り、相手の視点で考え、共感を引き出すことを繰り返した。
1.パートナー企業の満足度
2.お客様の満足度
3.国(官公庁)、地域(自治体)の満足度
4.メディアの満足度
5.スタッフの満足度
6.自分自身の満足度
『THAT’S FASHION WEEKEND』のファミリーセールでは「ファッションの力で日本を元気にする」というテーマを掲げて、複数の人気ブランドから過剰在庫を集めて販売。また、売上の一部をコロナ禍で疲弊している医療従事者に寄付するほか、それでも売れ残った商品はアップサイクルの材料として大学生に作品制作素材として使ってもらう、といったエコサイクルを構築。
この概念に賛同した、「エストネーション」や「フリークスストア(FREAK’S STORE)」「ヌメロヴェントゥーノ(N21)」「ナノ・ユニバース(NANO UNIVERSE)」「マウジー(MOUSSY)」などなど、錚々たるブランドが参加することになる。
また、格闘家 朝倉未来プロデュースの「MATIN AVENIR」ほか、著名人のエシカルファッションブランドも続々と参加。チャリティフリーマーケットでは、大倉士門、ノンスタイル井上、レイザーラモンRGなどの私物の出品も行われた。
更には、売れ残ったお花(ロスフラワー)でイベント会場を装飾するなど、このエシカルなイベントは、今では全国3エリア、19ブランドまで拡大し、その共感の輪は全国広がっている。
最近では、全国のSDGsに関わる学生団体が繋がるプロジェクト"Best SDGs Award for University Students"を開催。このプロジェクトは、コロナ禍で活動が制限された全国の大学生に対して活動を発信する舞台と社会との接点の場を作り、学生の活動によりスポットライトが当たる場を創出している。パートナー企業や大学生の活動団体を巻き込むことで、ファッションの領域を超えた、社会課題の解決の場づくりを加速させている。
菅野さんは、「学生時代はまだ何が向いているかわからない時期なので、モヤモヤしていて当たり前。35歳まで何も見つからなかった自分のような人間もいるので、焦らずに自分を信じて興味を持ったらなんにでもチャレンジしてほしい。モヤモヤには、『何をやっていいかわからないモヤモヤ』と『理想にたどりつけていないモヤモヤ』の2種類あるとのこと。前者は、いろんな体験を積み重ねて、経験値を積んでいけば少しずつ消えていくでしょう。後者は、そのエネルギーをどこにぶつけていいかわからないときがあると思います。すぐには結果が出ないので、今投資している時間やお金が無駄だと思ってしまうものです。これこそ視点を変えて、未来の自分のための大きな投資になっていると考えてみてください。やりたいことに出会えて夢中になることがまず素晴らしいことですし、決して無駄な投資ではないと思います。
ぜひ今は、いろんなことにチャレンジして自分に何が向いているかを探してみて欲しい。「何か」が見つかったら、小さなアイデアを形にしていくことで、試行錯誤しながら目の前の壁を一つ一つ壊していってください。まったく予期せぬポジティブな風が吹いてくるでしょう。
私自身も「自分は次世代に何を残せるだろう」って考えながら、“社会課題をエンターテイメントで解決する″という理想をもっともっと実現させていきたいと思っています。
取材・文:学生の窓口編集部 FURI
編集:学生の窓口編集部
取材協力:THAT’S FASHION WEEKEND
※次回の「THAT’S FASHION WEEKEND」は2023年3月に日本橋エリアで開催予定(近日詳細公開)。
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