【プロアスリートを支える仕事】世界で戦うデフバレー女子日本代表を手話通訳者として支える岡田直樹さんの“つなぐ力” #つながる体験部

学生の窓口編集部

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2025年11月15日から、日本初開催となる「東京2025デフリンピック」がいよいよ幕を開けます。「デフ(Deaf)」とは、英語で“耳が聞こえない”を意味し、デフリンピックは聞こえない・聞こえにくい人のための国際的なスポーツの祭典です。

オリンピックと同じように4年に1度、夏季大会と冬季大会がそれぞれ開かれます。ルールはオリンピックとほぼ同じですが、耳の聞こえない人のために様々な工夫がされています。

例えば、100メートル走のスタートの出発音。

オリンピックでは、審判がピストルを鳴らして、スタートを知らせますが、デフリンピックでは、光がピカッと光る『フラッシュランプ』でスタートを知らせます。それ以外にも、重要になってくるのが、選手同士のコミュニケーションや、監督やコーチと選手のコミュニケーションです。そこで、有効なコミュニケーション手段の1つとして、「手話」があり、選手と監督の意思疎通には、「手話通訳者」が欠かせません。

今回は、デフバレー女子日本代表チームで、手話通訳として活躍する手話通訳者の岡田直樹さんに、デフバレーの魅力や手話通訳の重要性、やりがいなど、人と人とをつなぐ意思疎通支援の重要性について、#つながる体験部が話を伺いました!

INDEX:

デフバレーってどんな競技?“音がない”世界のルールや特徴
人によって伝え方が違う!?手話通訳の“伝える工夫”
三者協同を目指す「手話通訳」の“神業”が見られる!東京2025デフリンピックでは手話通訳に注目
CODAコーダとして育ち、手話通訳者に。伝わらない経験を経たからこそ、今がある
耳が聞こえない、聞こえにくい人とコミュニケーションをとるために“意識していること”
「最後に、東京2025デフリンピックでのデフバレーの見どころを教えてください!」
Q. 今日の感想は?

デフバレーってどんな競技?“音がない”世界のルールや特徴

本日はよろしくお願いします!まずは、デフバレーという競技について教えていただけますか?

今回岡田さんにお話しを聞くのは#つながる体験部メンバー・コさん!

デフバレーは、聞こえる人のバレーボールとルール自体は同じ。ですので、国際大会の競技種目に準ずる形でルールが構成されています。 ルール以外で違う部分が2つあって、1つは監督がタイムを取るときにボタンを押し、フラッシュランプの光で知らせることです。それを見て、審判員がタイムを取るという流れです。監督や審判員にもデフの方がいたりするので、視覚的に光でお知らせするんです。

今回お話を伺ったデフバレーボールの女子日本代表チームで手話通訳をつとめる岡田直樹さん

もう1つは、審判がプレーを止める時。バレーボールでは笛を吹きますが、聞こえない選手は気づかずにプレーを続けてしまうので、審判員がネットを揺らして気付かせます。練習中も、みんなに注目してほしい時にネットを揺らして合図を送ることがあります。

ルールは同じだけれど、合図が違うのですね。チームメイト内での合図もあるのでしょうか?

そうですね。試合が始まると、聞こえる人ならボールを見ながら音声で指示ができますが、デフの選手は目でボールを追いながら周囲の動きも見ています。競技中に手話での会話は難しいので、基本的にプレーの構成のサインをあらかじめ決めています。

練習中に手話通訳を行う岡田さん

また、試合中の一瞬に、どんなボールが欲しいかというのを指示するためのハンドサインを出すこともあります。攻撃がしやすいチャンスボールが返ってきたら、一瞬でみんながサインを出して、ボールを受ける選手はボールを目で追いつつどう対応しようか決めています。特にセッターは常に360度見渡しながらアイコンタクトでコミュニケーションを取っているので、それもデフバレーの特徴かなと思いますね。

すごい!たくさんの視覚情報がある中でプレーしているんですね。観客席で応援をしたいときは、どのようにするのがよいですか?

スポーツ全般に言えることですが、カメラなど光が出るものは選手が気になってしまうのでNGです。

「頑張れ!」は、腕を曲げて上下に振るのだそう

デフバレーとしては、得点が入り、試合が落ち着いたタイミングで、選手と目が合った時に『拍手』や『頑張れ!』とか『応援』を表す手話をすると、喜んでくれると思います。

「すごい!拍手は……こうですか?」

『拍手』は顔の横で手をひらひらさせるんですね!旗を振る動作の『応援』も覚えやすいです。『頑張れ!』の両手をグーにして肘を力強く下に2回下ろす動きは、気持ちを込めて届けられそうですね!

人によって伝え方が違う!?手話通訳の“伝える工夫”

岡田さんは、デフバレーの現場で手話通訳としてどんなサポートをしていますか?

聞こえる監督やコーチの音声を手話に変える、また、選手が話している手話を監督たちにわかるように日本語に変える、という通訳の役割が基本の仕事になります。

じゃあ、選手と監督の間をあちこち走り回っているのですね!?

いえいえ、走り回るというほどではないですが、体育館の範囲内を移動している感じです。スポーツ通訳の特徴の1つかもしれませんが、手話通訳者は1か所にとどまってずっと手を動かしているのではなく、監督やコーチがいつでも話せるように、動きに合わせて近くにいます。選手は監督の表情や口元を見ているので、なるべく監督の近くで選手の視線を同じにするように心がけています。

選手はみなさん手話がわかるのでしょうか?

いいえ、聴覚障がいと言っても、ひとえにいろいろな聴覚レベルの方がいて、補聴器を付ければ聞こえる人もいれば、全く聞こえない方もいます。

さらに、言語レベルにも違いがあって、手話ではなく口話(日本語)で育ってきた人や、デフファミリーという全員聞こえないという家庭で育った人は、もともとの言語が日本語ではなく手話の文法で育っていることもあります。
そういったあらゆる人たちが集まっているので、どの人にポイントを絞って通訳をするかを判断するのが難しいですね。

コミュニケーションひとつとっても、人によって違いがあるんですね!手話の文法、ということは、日本語とは違うのですか?

そうなんです。たとえば自己紹介の時、日本手話は『私』『名前』『岡田』の手話になります。手形だけでなく眉上げやうなずきに助詞を表せる視覚言語です。日本語手話だと『私』『の』『名前』『は』『岡田』『です』と“てにをは”を含めた単語を一つ一つ入れて日本語が見えるような話し方になります。
人によって好みや表現が違うし、暮らしていた地域や性別によって表現が変わることもありますよ。

岡田さんに自己紹介の仕方を教えてもらいました(写真はコさんの「こ」を指文字であらわしている様子)

手話にも方言があるなんて知らなかったです!そう言ういろいろな人がいる場合は、どんな手話をするのですか?

話をしながら、声を出している人の日本語を聞いて『この人には日本語手話が望ましいかな』と判断したり声を出さずに手話でよく話す人には『日本手話が第一言語として分かりやすい手話なんだな』と見極めたり、話しながら『関西の方かな』って探っていって合わせていくというようなことをしています。

すごい!手話ってとても奥が深いのですね。

三者協同を目指す「手話通訳」の“神業”が見られる!東京2025デフリンピックでは手話通訳に注目

デフバレーの手話通訳として、監督やコーチの言葉を伝える役目として、意識していることはありますか?

表情や体の動きを意識しています。ちょっと専門的になるのですが、手話では、口を真一文字に結ぶ表情は『真面目な』という意味が含まれます。逆に、口元を少し開けて緩む表情は『してもしなくてもいい』という意味が入ってきます。

ほかにも同じ単語でも目のすぼめや、口の緩急、肩のすぼめなどで意味が変わってくるので、監督の言わんとしていることがそのまま的確に伝わるよう、表情や動きには気を付けていますね。

手の動きだけでなく、表情や体の動きにも意味があるのですね。じゃあたとえば、監督が怒っている時は岡田さんも怒った表情で伝えるのですか?

あ、それはしないですね(笑)。もう怒っているという雰囲気は見ればわかるので、私は“何を言いたいか”を伝える方にシフトします。
日本語は遠回しに伝える言語ですが、手話は直接的で英語圏に近い話し方になるので、そのまま伝えるのではなく、監督の意図をくみ取って伝える必要があります。

話した人と、相手の頭の中が同じになれば“通訳成功”と思うんですが、違う解釈をしてしまうこともあり、今でも難しいです。受け手と聞き手が双方に確認し合いながら、通訳をうまく使うことがコミュニケーション成立の大きな一歩。三者協議の状態が理想です。だから、違う言語で意味を同じにさせるって、本当に“神業”だなと思います。
でも、だからこそちゃんと伝わった時の喜びは大きいですし、やりがいを感じますね。

CODAコーダとして育ち、手話通訳者に。伝わらない経験を経たからこそ、今がある

岡田さんが手話を始めたのは、大学生の時。両親に聴覚障がいがあり、CODAコーダ(聞こえない親の元に生まれた聞こえる子ども)として育ちました。ですが、家庭でのコミュニケーションは音声の日本語と、簡単な手話を使いながら会話をしていたそうです。

高校時代に知的障がいのある成年の余暇活動支援のボランティアに参加したことで、障害者福祉を学ぶ大学へと進学。そのころから手話講習会の初心者コースを受講して本格的に手話を学び始めました。

学びを深めていくうちに手話の楽しさを知り、社会福祉協議会の職員として手話通訳の仕事に就きました。

実は岡田さん、高校時代はバレー部に所属。就職後も社会人チームでバレーボールを楽しんでいました。その関係者とのつながりから、2013年にデフバレー女子日本代表チームに手話通訳者として加入。現在も東京2025デフリンピックに向けてサポートを続けています。

手話通訳として仕事をしてみて、どうでしたか?

通訳者になったのが大学を卒業して1年後なのですが、新米のころは日々わからないことだらけで仕事をしていました。周りの方に勉強させてもらいながら手話通訳者になったという感じなのですが、やはり直接聞こえない方と会話するのはすごく勉強になります。
ただ、もちろん現場ではうまく伝わらなかった、通じなかったという経験もしました。でもそれがあったから今の自分があって、育ってきたんだなとも思います。

デフバレーの手話通訳者として10年以上活躍されていますが、やっていて良かったと感じたのはどんなことがありますか?

監督やコーチの指示がちゃんと伝わり、選手がその動きをちゃんと取り入れて成長していった時はうれしいなと思いますね。身長差を克服する戦略として、意識するポイントを通訳した時に、選手みんながちゃんと理解して取り入れ始めていった時は、伝わってよかったなと思いました。

手話通訳の仕事は、チームの強化向上に関われる重要な仕事なのですね!デフバレー以外で、手話通訳として思い出に残っている場面はありますか?

結婚式の通訳ですね。新婦の手紙を聾のお母さんに手話で通訳した時、お母さんが泣かれたのを見て『伝わったんだな』と感じて、自分も感動しました。一生のうちの晴れの舞台で、しっかりと伝わる手話をしていく。そしてちゃんと伝わったっていう場面は、手話通訳者の仕事をしていてよかったなと思いました。

手話通訳者は、伝えるだけでなく、誰かの大切な一場面にも寄り添うことができるのですね。素敵な仕事です。

耳が聞こえない、聞こえにくい人とコミュニケーションをとるために“意識していること”

“伝える”ために、普段のコミュニケーションで意識されていることはありますか?

CODAコーダだからっていうのもあるかもしれませんが、しっかりアイコンタクトをとったり、うなずきを大きくしたりしています。

話し方とかテンポとか、早口に言ったら伝わらないなとかを考えながら話しますが、結局その配慮の結果が伝わっているかも目で見ないとわからないですよね。
きっと、自分が聞こえる世界にいる中で、周囲で『伝わってないな』と感じることを目にしてきたので、自然と子どもながらに言いたいことが伝わっているかを目で見るようになったのかなと思います。こういったコミュニケーションの仕方を意識しているのは、両親のおかげかなと思いますね。

そういったコミュニケーションがあるからこそ、その先で手話のお仕事につながっているのかもしれないですね。

そうですね、手話は日本語とは違う言語ですが、コミュニケーションし合うものとしては同じです。伝わっているかなと考えるのは、通訳として必要な確認の作業なので、その意識は仕事につながっているなと感じますね。

手話がわからない人でも、コミュニケーションをとるためにできることはありますか?

周りにはいろいろな人がいて、みんな自分とは違います。それを前提に、わかってもらうよう説明の努力をする。そして、たとえば相手が耳が聞こえないということがわかったら、どんな工夫をしたらいいか、どんなふうに接したらいいのかを聞いて、それを頑張ってみる。もし、書いてほしいと言われたら筆談するし、身振りで伝える方法もありますよね。

まずは相手にどう接したらいいか聞いてみる、ということも大事なのですね!

「最後に、東京2025デフリンピックでのデフバレーの見どころを教えてください!」

最後に、東京2025デフリンピックでのデフバレーの見どころを教えてください!

今、最終合宿に入って、強化を図っているところです。アメリカやウクライナ、イタリアなどの背が高い海外勢がライバル国。ですので、背が低い選手でも、正確なレシーブと速いトスとスパイクで、ブロックが完成する前に点を取るというコンビバレーを見てもらいたいなと思います。
また、声での会話がない中で見えないところにトスを上げてスパイクを決めるところも見どころです。
あとは、手話通訳としてスタッフの席の後ろに私も座っていますので、タイムの短い時間の中で的確に指示内容を伝えていく通訳の様子を見てもらえるとうれしいです(笑)。

楽しみです!岡田さんを探してみます!

ありがとうございます(笑)。まずは手話通訳という仕事を知ってもらえるのは貴重な機会なので、これからの仕事の参考にしてもらえたらうれしいなと思います。
もちろん、この仕事を選ばなくても、今後聞こえない人と関わる機会が人生にあると思うので、その時に手話という言語や聞こえない人とどうコミュニケーションを取ったらいいのかということを知ってもらうだけでもすごくうれしいなと思いますね。

本日はありがとうございました!

Q:今日の感想は?

今日お話しを伺って、前提に「相手の立場を理解する」ということを意識したコミュニケーションをしていきたいと感じました。

また、岡田さんに自己紹介の手話を教わって、手話に興味を持ちました。将来、仕事をしている時に聞こえない方と接する時も、簡単な手話を覚えていたら慌てずにコミュニケーションが取れると思うので、手話を勉強する機会を作ってみようかなと思います。まずはデフリンピックで手話を使った応援にチャレンジしてみたいです!


岡田さんの言葉からは、単に言語を置き換えるだけではない、“思いまで届ける力”が伝わってきました。相手をよく見て、手や表情、動きで伝える。その一つひとつに、人とのつながりを丁寧に結ぶ技術と想いがあります。

“伝えること”は、相手と向き合い、理解し合うこと。その瞬間を支える手話通訳の世界には、さらなる「コミュニケーションの面白さ」が見えてくるのかもしれません。
まずは迫る東京2025デフリンピックでデフバレーを観戦し、試合と手話通訳の仕事をじっくり見てみてはいかがでしょうか。



日本初開催!きこえない・きこえにくい人のためのオリンピック
「東京2025デフリンピック」が11/15~11/26 開催

今回お話を伺った岡田さんも手話通訳を担当する「東京2025デフリンピック」は、 2025年11月15日〜26日東京都内の会場で行われます。ぜひみんなで応援しましょう!

デフリンピック2025 公式HPはこちら

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