傷だらけになってでも、成し遂げる人生を。AK-69が追い求める、真のかっこよさとは #セルフライナーノーツ

編集部:ゆう

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大きな成功やそれに伴う喜びを手に入れるためには、努力が必要だと言われています。しかし努力とは、地味な作業の積み重ねであるケースがほとんどです。その作業を面倒に感じ、自分を甘やかしてしまったり、始める前に無理だと諦めてしまったり……。精神的な理由から、挫折を経験したことのある人も少なくないのではないでしょうか。

ヒップホップシーンを牽引し続けるAK-69さんは、キャリアを重ね、数々の結果を出してもなお、次なる目標を打ち立て、走り続けています。なぜ向上心を燃やし続けられるのでしょうか。AK-69さんを駆り立てる渇望感について、お話を伺いました。

文:蜂須賀ちなみ
 写真:友野雄(YU TOMONO)
編集:学生の窓口編集部

現状に満足がいかない。渇望感の塊みたいな人間

――今回のアルバム『LIVE : live』は、ライブ(LIVE)と人生(live)をコンセプトにしたそうですね。

AK-69:はい。このコロナ禍で、本質がないものはどんどん淘汰されて、やがてなくなっていくと感じたんですよ。今回のアルバムはコンセプトを決めてから作り出したわけではないんですけど、そういう流れもあり、制作していくなかで「俺の本質ってなんだろう?」というところに立ちかえることになって。

そう考えたときに、俺の本質はまずライブ、そして人生を生きるなかでつむがれていくリアルなメッセージだと思ったんですね。そこからアルバムのタイトルやコンセプトが思いついた感じです。結果、必然的に「これが100%、AK-69だ」と言えるアルバムになったと感じています。

――なかでも「If I Die feat. ZORN」はご自身の死について初めて唄った曲です。

死生観は強いほうですし、「俺が死んだら」というタイトルで曲を書いてみたいという気持ちはずっとあったんですけど、世界のレジェンドたちも唄っては本当に亡くなってしまっている大きなテーマなので、なかなか手をつけられなかったんですよね。

だけどコロナ禍で、仲のよかったラッパーが死んじゃったり、本当にいろいろなことがあって。

俺もこの先あと何枚アルバムを残せるかわからないし、仮に今命が途絶えたとして「最期に俺のアティチュードを伝えたい人たちはもうこれだけいるんだ」と感じたので、今がこの曲を書くときだと思いました。

――AKさんの人生において、喜怒哀楽がそれぞれどのくらい重要だったのか、全体を100として数字で表していただけますか?

喜怒哀楽では表しづらいですけど、強いて言うなら、喜びが10、怒りが40、哀も40、楽が10ですかね。

「現状に満足がいかない」という渇望感の塊みたいな人間なんですよ。目標というものを山に喩えると、登り始める前はもちろん「この山を登れるだろうか」という気持ちでいます。それでもガーッとやってみる。登りきったあとは「やってやったぞ!」という気持ちになる。

だけど振り返って、ここまで登ってきた距離を見たときに「あれ? この山、たいしたことねえぞ?」と思ってしまうんですよね。

だから登り終えた瞬間にはもう次の山を見てしまうんです。

それは別に、意識的にそう考えようとしているわけではなくて、自然とそうなっちゃうんですよね。

なぜかというと、登っているときの自分が好きだからだと思います。自分の足りないところを補って、山頂に向かっていく道中ってつらいですし、自分のことを律しないとダメなんですけど、そういうときほど「生きてる」って感じるんですよ。

目標を達成したときにはもちろん喜びや楽しさを感じているんですけど、達成感ってそう長くは続かない。

だから、そこに行くまでの苦悩のなかで生まれる感情……つまり怒りや哀しみのほうが俺にとっては大きいかなと思います。

かっこよさの鍵は、過程が痺れるかどうか

――「この山は登れないかも」と感じたことはないですか?

そう思うことは今でもあります。だけどそれを理由に止まってしまったら、心のバランスが取れなくなりそうなんですよね。だからチャレンジホリックというか、泳いでいないと死んでしまうマグロみたいなものだと思います(笑)。

「これってなんなんだろう」と立ちかえって考えてみると、やっぱり「男だからかっこよくありたい」という気持ちに行き着きますね。

「俺はこういうふうになりたいんだ」って口で言うだけではかっこつかないし、ファッションで着飾ったからといってかっこいいわけでもないし、整形してイケメンになったからといってそれでかっこよくはなれない。もがき苦しんででも、自分の言ったことをやってのける。本当のかっこよさっていうのは、そういうところにありますよね。

だから俺はそれを常に目指している。俺にも弱いところはたくさんあるし、元々はぐうたらな人間です。「それなのに、つらいことに立ち向かえるのはなぜですか?」と聞かれたら「かっこよくありたいから」と答えると思います。

――今話していただいた「かっこいい」は自己評価だと思うんですけど、他人からどう見られるかを気にしてしまう気持ちから、失敗を恐れ、挑戦に踏み切れないという人もいますよね。

それは本当のかっこよさじゃないです。人は挑戦をしないとレベルアップできないし、挑戦には怪我がつきものです。

仮に無傷で成功したとしても、それってたまたま宝くじに当たったのと変わらないですよね。失敗して、傷だらけになって、恥ずかしい思いをして、その先で何かを成し得たときに初めてその傷すらもかっこいいということになるんですよ。

俺の場合、「AK-69はかっこいい」と言われているのは、インディーズから一つずつのし上がってきたっていうドラマがあるからこそで。たとえば、大きな事務所やレーベルから「期待の新人です」ってドーンと売り出してもらって、おかげで突然ブレイクスルーしたとしても、それは苦労なく人の力で売れたということになるから、同じ成功でも中身が全然違いますよね。

結局、「過程が痺れるか」というところにすべてはあるんですよ。だから、失敗を恐れている時点でかっこよくはなれないです。

――AKさんは「アリとキリギリス」で言うところのアリタイプだと自覚されているようですが、いわゆるキリギリスタイプ――泥臭い過程を踏むことなく、ラッキーを掴んで次のステップにどんどん進んでいく人――が羨ましくなることはありませんか?

全くないですね。そういう人が一気に咲いてすぐに枯れていくところをこれまで何回も見ているので。とはいえ俺も人間なので、突然出てきて追い抜かれたその瞬間には、正直一瞬焦ります。

でも、地べたからのし上がってきたという文脈、ストーリーが自分のなかにあるから、自信を持つことができているんですよね。時代の流れにうまくハマるのも、事務所やレーベルの施策にうまく乗っかれるのも、すごいことだし喜ぶべきことだとは思います。

だけど、そういう人たちって本質が伴ってないことが多いし、その儚さを俺は知っているから、最後には俺が勝つんだという自信があります。

だからキリギリスタイプの人を見ても羨ましくは思わないです。またこいつも消えていくんだろうなぁと思いながら見てます。

自分を見限ったらそこで終わり。悔しいならやるしかない

――では、自分と同じアリタイプにあたる、他の人を見て悔しさを感じたことはありますか?

それはありますね。ジャンル内外問わず、心の距離が一番近いのがUVERworldのTAKUYA∞なんですけど、彼に対しては悔しさを感じることがあります。

俺、前回のツアーのファイナルでドームライブをやると宣言したんですよ。それって今の段階ではめちゃくちゃ遠い目標なんです。

逆に言うと、武道館2デイズも去年やったし、「ドームでやる」と口にさえしなければ大概のことはクリアできていた状態でした。それで目標を喪失していた期間がしばらくあったんですけど、そのときほど、力が湧いてこなかったことってないですよね。目標なしに努力するのはなかなか難しい。

そんなときに、UVERworldの男祭り(※)を見て。東京ドームを男だけで埋めるなんて、世界規模で見てもまれなケースなんですけど、それだけ圧倒的なものを目の当たりにしたとき、悔しさに襲われたんです。それと同時に、ドームライブという一段上の目標を無意識に除外しようとしていた自分に気づかされました。

(※男性客限定ライブ。かつて男性ファンが少なかったことにメンバーがジレンマを感じていたことから、2011年にスタート。2019年12月の東京ドーム公演で「FINAL」と銘打たれた)

――大学生世代だと、夢に向かって努力している人が輝いて見えてしまい、その人と自分を比べて暗い気持ちになってしまう人も少なくないんですよね。

あ~、それはまさにUVERと俺の話に近いですね。AK-69はヒップホップシーンでは敵なしかもしれないけど、日本のポップスシーンで言うと、俺よりすごい人はまだまだたくさんいるんですよ。

それを改めて目の当たりにしたときは「あれ?」「あいつらにできることが、どうして俺にはできないんだろう」と思うことがあります。

――そういう悔しさはどうすれば乗り越えられると思いますか?

やっぱりやるしかないですよね。だからこそ俺は、ドームを目標にしたんですけど。仮に「あ、これは俺にはできないことだ」「俺とTAKUYA∞とは違うから」みたいに線を引いてしまったら、そこで終わりじゃないですか。「俺もやってやる」って火をつけられたんだとしたら、解決方法としては、やっぱりやるしかないです。

自分の納得がいく人生を生きられたかどうか。自分の納得する走り方をできているかどうか。とどのつまり、それが一番大事なんですよ。そこ(目標)に至るまでのドラマは、何のために必要なのかと言うと、すべては自分のためだと思います。

「俺、AKさんぐらいになれたらなんにもいらないです」「もういいじゃないですか。何も悩む必要なんてないじゃないですか」と言われることもありますけど、何よりも自分が現状に満足できていない。「完成した」と思えていないんです。

――過去のインタビューで「自信があるように見えて全然自信がない」と仰っていましたが。

それは今でも変わらないです。HALEO TOP TEAM(※)でトレーニングをするようになって約5年(トレーニング自体は20年近く)経つんですけど、きっと自信があったらトレーニングなんてやらなくていいんですよ。

自分の心の弱さを自覚しているからこそ、怖いことから逃げないような心を作るために、鍛えているわけで。今の自分のままだと不安だからこそ努力をしている。それだけなんですよね。

その時々で悩みの次元は高くなってきていますけど、常に何かを追い求めて、走り続けている感じはします。いずれはリタイアして暇な時間を過ごしてみたいけど、まだまだ先になりそうですね(笑)。

(※サプリメントブランド・HALEOが運営するトレーニングチーム。AK-69はトップアスリートとともにトレーニングしている)

編集部:ゆう

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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