世界最先端! 九州工業大学で開発された「自律型ロボット」がすごい! 3ページ目
■森林の整備・メンテに利用できるロボットの開発!
――先生が次に開発したいロボットとはどのようなものですか?
浦先生 いろいろあるんですが……、森の維持管理がロボットで対応できないかと考えています。林業に従事している人から「きこりロボット」ができないものか、といわれています。
――なるほど。林業に従事している人が減って、森林のメンテが大変という話をよく聞きますね。
浦先生 ただこれは大変に難しい。人間の代わりに木を切るロボットを作るというのはできない。先ほど申し上げたとおり、人間をリプレースするのではなく、ロボットに何ができるのか、こういうやり方だったらロボットはできるよ、という発想の転換が必要なんです。
僕たちができるのは、森林の管理に役立つロボットです。例えば、森林の植生を調べるという仕事があります。これは木の育成状況を知る上で大事な仕事です。現在は、人間が森林に分け入って調べています。これをセンサーを積んだドローンを飛ばしてできないか、とかね。
――いいプランですね。ドローンの技術も向上していますし。
浦先生 それでも難しい点がたくさんあるんです。例えば、深い森林になるとGPS信号が受信しにくいですし、また木の枝が邪魔になってうまく飛べないとか。そういう困難をどうやってクリアするのか、ここがロボット屋の腕の見せどころなわけです。
――「森のドローン・ロボット競技会」を開催されている理由はそういう点にあるのですね。
浦先生 他にも大事な「下刈り」という作業があります。植林して育てている木の周りに下草が生えるから、これを刈らなくてはなりません。これも今は人力で行っています。これをロボットにやらせることができないか、と。
――そういえば、ゴルフ場でも最近は全自動の芝刈りロボットが活躍していますね。
浦先生 あれはなぜロボットできるかというと毎日刈っているからなんですよ。刈るとしても1cmとか丈の短いものでしょう。下刈りでは丈の高いものなどがあるとロボットにはなかなか難しい。だから、最初の1回だけ人間がやって、丈の高いものをなくしてしまいます。
大変な作業ですが最初だけは人間がやって、後は毎日ロボットがやれば走りやすいし刈りやすい。やり方をロボット向きに変えるのです。そういう風に考えればお金も掛からないし、ロボットを作りやすいのです。
――人間を丸々リプレースしようとするとロクなことにならないわけですね。
浦先生 何だったらロボットにできるか、どういう風にすればロボットがやりやすいかを考えてやらないと駄目なんですよ。
――たくさんプロジェクトを手掛けていらっしゃるようですが……。
浦先生 もう年取っちゃったから(笑)、こういうのやろう! と掛け声を掛けてるだけですけどね。
――学生さんたちはどうような活躍をされていますか?
浦先生 下刈りロボットは林研究室の学生が作っていますよ。ベースのアイデアは先生が出していますが、九州工業大学の学生たちがロボットを作っています。
陸上のロボットは壊れたらすぐ助けに行けるからいいんだけど、海中のロボットはそうもいかないので、重要な部分は企業に発注しています。ソフトは学生がやったりするけど、それでも間違ってると大変なので企業に協力を依頼することが多いですね。海の現場はなかなか厳しいですよ(笑)。
――ありがとうございました。
社会で役立つロボットというと、つい鉄腕アトムみたいなものを考えがちですが、それでは駄目なようです。ロボットに何をどのようにやらせるかを考えた上で作られなければ、本当に社会の役に立つものはできないのですね。
『九州工業大学 社会ロボット具現化センター』
公式サイト
http://www.lsse.kyutech.ac.jp/~sociorobo/
(高橋モータース@dcp)