「えいや!」と飛び込んで挑戦を楽しむ。17歳で上京し、大学在学中選挙に出馬。起業家・金光左儒さんの視点を変える方法とは? #Rethinkパーソン

更新:2023/07/10

社会人ライフ

大学在学中に区議会議員選挙に出馬し、その後起業家として活躍してきた武内製薬株式会社の代表取締役・金光左儒さんに、視点を変えて新たな世界に飛び込む方法について話をうかがいました。

→【しくじりを恐れないで!!】 新卒入社も半年で退職し、起業。 WEBサービスクリエイター・関口舞さんの、“失敗体験から視点を変える方法“とは? #Rethinkパーソン

PROFILE

金光左儒(かねみつさじゅ)

◉――1984年生まれ、広島県出身。高校中退後に上京し、フリーターを経て25歳で早稲田大学法学部へ入学。在学中の2011年に新宿区議会議員選挙へ立候補するも、落選。その後ワックス脱毛に出合い、起業を決意。2013年創業、2016年武内製薬設立。

◉――2022年に株式会社オーイズミグループに参画。現在は、健康食品・化粧品のD2C、OEM事業を主軸に展開する。

1.17歳で高校中退しゼロから東京でスタート

今振り返ると、とても独立心が強い少年だったと思います。私が生まれたのは広島県広島市。その中でも山奥の田舎の方で育ちました。幼い頃は欲しいものを自分の小遣いで買えないことが辛くて、父親に頼んで小学5年生から新聞配達をしていました。そのおかげで少しお金持ちの少年時代を過ごしましたね。

中学生の頃から自分の将来について違和感のようなものを感じていたんです。それがはっきりとしてきたのは高校に進学してから。このまま大学に進み、就職してやがては家庭を築く…。そんな“予定調和な未来像”が、自分の中ではどうしてもしっくり来なかったんです。それより、誰も知り合いのいない東京で、ゼロからスタートしてみたいと。その思いがだんだん強くなってきて、17歳の時に高校を中退して上京しました。

それからは、いわゆるフリーターをしていました。いろんなバイトをしながら、本を読んだり映画を観たりと暮らしていましたね。充実した日々ではありましたが、もともと勉強や読書が好きだったので、しっかり学んでみたいという気持ちも湧いてきて、25歳の頃大学に進学しました。

2.信頼できる仲間とやり抜く底力を得た、区議会議員選挙への挑戦

私には大学でやろうと思っていたことが、二つあったんです。一つは、思いっきり勉強して知識を深めること。そしてもう一つが、まだ経験したことがないようなアルバイトをすることでした。それで大学で仲良くなった先輩に国会議員の秘書のアルバイトを紹介してもらい働き始めたのです。

アルバイトを通じて初めて政治の世界を目の当たりにして、社会に与えるインパクトの大きさに感動を覚えました。特に区議会議員は、より地域の人に与えるインパクトが大きく、すごく意義のある役割だと思いました。自分も挑戦してみたいと思うようになり、大学在学中の27歳の頃、当時住んでいた新宿区の区議会議員選挙に出馬しました。

結果だけみると落選でしたが、私にとってはとても収穫のある挑戦だったなと思っています。友人や大学の後輩が選挙活動を手伝ってくれ、多くの仲間を得ることができたからです。その縁は起業した今でも続いています。選挙を戦い抜くことは決して容易ではありませんでした。どんなに辛い状況でもとにかくやり抜く姿勢こそが、応援してくれる人々に対して誠実さを示すこと。この経験を通してかなり底力がつきましたね。

選挙が終わった後は、友人が経営している会社でアルバイトをしながら、再び学業に専念する日々を過ごしました。大学では法学を学んでいたので、卒業後はロースクールに進み、法曹の道を目指そうと考えていたんです。

そんななかで、29歳の頃に転機となる出合いがありました。当時世界的に市場が拡大していたブラジリアンワックス脱毛の存在を知ったのです。いろいろと調べてみると、 世界では毎年10%以上成長している事業だということがわかったのですが、日本ではまだまだ注目されておらず、市場がないに等しい状態でした。私はニッチな市場でトップシェアを取ってガリバー企業になることが、ベンチャーが成功する一番の近道だと考えていたので、「これはすぐに挑戦するしかない」と決意しましたね。

大学を休学し(のちに中退)、ロースクール進学のために貯めていたお金を元手に起業したのが、武内製薬の始まりです。

3.ワックス脱毛の停滞から、OEM事業という新たな挑戦へ

起業した当初は、池袋にブラジリアンワックス脱毛の専門サロンをオープンするところからスタートしました。 ワックス脱毛の市場を戦略的にドミナンスする必要があると考えていたので、店舗数を増やし、同時にスクール事業や、工場での脱毛剤の製造事業、物販事業にも参入しました。その結果、創業してから4、5年でサロンやスクール、物販、製造といった各分野でトップシェアを取ることができたんです。ワックス脱毛の市場も順調に成長していったのですが、 2018年頃から、徐々に市場が停滞してしまいました。

その頃、会社を急成長させるためにどんどん事業投資をしていたので、かなり苦しい状況に追い込まれてしまいましたね。

そんな状況の中でも何かできることがないかと社内で話し合いを重ねました。そして、これまで培ってきた「物販機能」と「開発を含めた製造技術」を活用したOEM事業を始めることにしたのです。

→「OEM」ってどういう意味?

自社商品を作って中長期的な成長を目指すとともに、他社名義やブランドの製品を製造する仕事を受注することで、短期的にも収益を得られるようにしたのです。

OEMは戦略的に始めた事業ではなかったのですが、思いもしなかった成果がありました。OEM事業を始めてから、研究能力や製造能力が飛躍的にアップしたんですよ。研究能力の高い他社の仕事を受注することで、知識や技術が増し、自社商品の開発にもそれが活きてきたのです。ワックス脱毛事業といういわば一本足打法から、OEMと自社商品という二軸の事業に切り替えることで、再び成長軌道に乗って今日を迎えられました。

→武内製薬のOEM事業をもっと知る!

今年武内製薬は、プライム上場企業である株式会社オーイズミグループの傘下になりました。今後は、我々が持っている商品開発力と販売力を武器にグループ全体の成長を牽引していくことを目指しています。そして、魅力的な技術を持ちながら、それを活かしきれていない工場や企業を仲間にしていくことで、日本のものづくりをアップデートしていきたいと考えています。

4.ひらめきは、既存の視点の組み合わせから生まれるもの

新しい視点や発想は、今ある既存の視点や発想の組み合わせによって生まれるものだと思います。決してゼロから生まれるものではありません。

例えば回転寿司は、とてもイノベーティブなアイデアですが、「寿司」と「回す」を組み合わせるという発想から生まれたものですよね。新しい視点を持つためには、ただ情報をインプットするだけでは足りません。思考力を鍛える必要があります。

そのために私自身が実践しているのが、事業者やサービス提供者の立場になって考えてみること。すごい事業やサービスに触れたときには、必ず「どういう視点を組み合わせて、これを思いついたのだろう」と考えるようにしています。なるべく多く既存の視点に触れて考えてみるという“筋トレ”を繰り返すことで、発想力が鍛えられるはずです。

5.とりあえず「えいや!」と飛ぶ込むことが大事

私はこれまで、自分の人生を自分のものとして生きることを大切にしてきました。
自分自身で人生をグリップすることで生きることに夢中になれ、当然、喜怒哀楽も大きくなります。それが人生の醍醐味なんじゃないかなと。そのためには、とりあえず何事にも挑戦してみることが大事。「えいや!」と飛び込んでみて、予想外の出来事に翻弄されながら、なんとか前に進むためにもがいていく。辛いこともうれしいこともいろいろあると思いますが、後から振り返れば強い充実感が得られるはず。人生は光陰矢の如し。一瞬で終わってしまうものなので、やらなかった後悔をする前に、迷っていることがあれば、とりあえず飛び込んでみてはいかがでしょう。新しい世界が開けると思います。

私自身、高校を辞めて東京に来て、25歳までは“中卒の地方出身者フリーター”という立場でした。周りから見れば社会的弱者かもしれませんが、毎日充実していましたし、全然不幸じゃなかったんですよ。幸福度は今と変わらないと思います。もちろん、飛び込んでみた結果、周りから評価されない場合もあると思いますが、“そこに幸せの基準を置かないこと”が重要です。挑戦に結果ばかりを求めてしまうと、思い通りにいかなかったときに「失敗」となってしまいます。そうではなく、何かに挑戦して自分の人生を主体的に生きること自体を目的にすれば、生きるのがすごく楽で楽しくなると思いますよ。


取材・文:安藤茉耶
編集:学生の窓口編集部
取材協力:武内製薬株式会社
https://takeuchi-corp.jp/

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