【しくじりを恐れないで!!】 新卒入社も半年で退職し、起業。 WEBサービスクリエイター・関口舞さんの、“失敗体験から視点を変える方法“とは? #Rethinkパーソン

2022/10/21

社会人ライフ

新卒で入社した広告代理店を半年で退職し、WEBサービスの会社を立ち上げた関口舞さんに、失敗を活かして新しいサービスを生み出す方法について話をうかがいました。

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PROFILE

関口舞(せきぐちまい)

◉――1990年生まれ。明治大学文学部日本文学科卒業後、外資系広告代理店に就職するも半年間で退職。2014年3月に株式会社プールサイドを創業。自身の就職での失敗を生かした、就活・転職webメディア「sketch(スケッチ)」をはじめ、「2015bestnine」や「エムグラム診断」などを企画開発、プロデュースを手がける。

◉――2022年2月にはRethink PROJECTの一環として、株式会社カヤックと共同で、SNS誹謗中傷体験・裁判例の共有サイト「TOMARIGI(トマリギ)」をリリース。メンタルヘルスに関心を持ち、同年8月に新会社を設立。メンタルヘルスの問題を抱える人たちを救うための新たなサービスを企画中。

1.将来ベンチャーで活躍するために広告代理店へ就職

大学生の頃は、自分がWEBサービスクリエイターという仕事に就くとは想像もしていませんでした。むしろパソコンを使うことが苦手な方で、将来は小説家になりたいと思って文学部に進みましたから(笑)。
学生時代は小説を書いたり、下北沢の小劇場で舞台に立ったりしていましたね。就職する気もあまりなく、大学を卒業したら劇団員になろうと思っていたのですが、大学3年生のときに参加したIVSのイベント(インターネット業界の経営者・経営幹部が集まる招待制カンファレンスのこと)で、就職に対する考えが大きく変わりました。

私は軽い気持ちで参加したのですが、参加者の中には学生でありながら起業をしている人がたくさんいたんです。大学生って「△△大学の〇〇です」というように、大学名を名刺代わりにする人が多いですが、このイベントではみんな「こういう会社をやっている〇〇です」と自己紹介していて、それが格好良かったんですよね。衝撃を受けると同時に、私には何もないという事実を突きつけられたようで、とても悔しく感じました。

ただ、当時の私は自分で起業できるとは夢にも思わず、起業家である彼らと一緒に働ける方法がないかなと考えていました。人と話すことが好きだったので、PRの仕事であれば文系の私にもできるかもしれないと。
そんな経緯があり、外資系広告代理店への就職を決めました。いずれはスタートアップ企業に転職して、バリバリ活躍できる人材になりたいと考えていました。

2.就活は成功!だが入社後のミスマッチで苦悩するはめに

就職活動は上手くいきましたが、その後は決して順風満帆とは言えませんでした。入社してからはミスマッチでとても苦しい思いをすることになりました。

私が就職したのは外資系の大手広告代理店。新人にいきなりバリバリ仕事を振る会社ではなく、時間をかけて少しずつ仕事ができるようになって欲しいというような優しい会社でした。ですが、私は就職したらすぐサービスや商品のPR戦略を考えるような仕事ができると思っていたので、焦りを感じてしまいました。このままでは5〜10年働いても、スタートアップで必要される人材にはなれないんじゃないかと危機感を持ったのです。

そのため、焦るあまりにやる気が空回りしていました。社内の先輩たちに話を聞きに行ったり、大きなプレゼンがあるときには「議事録をとるから参加させてくれ」と頼み込んだり……そんなことばかりやっていたんですよね。とはいえ目の前の仕事が完璧にできていたわけでもなく、焦って細かいミスをちょくちょくしていたので、先輩や上司に怒られることが多くなっていきました。

そんな日々が続くにつれ、精神的にも肉体的にも辛くなり、体調不良になってしまったので、入社から半年で退職することを決めました。「半年で会社を辞めて起業しました」というと、勢いがあって格好いいように聞こえますが、私は涙を流しながら逃げるように退職したというのが現実。ただ、あのまま勤めていたら心身を壊してしまいそうだったので、今は思い切って環境を変えて良かったなと思っています。

3.就職しくじり体験を活かして、起業家の道に!

退職後は転職活動もしていたのですが、同時に学生時代から知り合いだったベンチャー企業の社長に色々なお話を聞きにいっていました。

その人からある日、「就職活動に成功したのに就職後にミスマッチで辛いというのは、ある意味貴重な経験だよね。その経験を生かしてうちの新卒採用を手伝ってくれないか」というお話をいただいたのです。会社を作って業務委託で仕事を受ければ、色々な仕事ができて、自分のやりたいことがやれると教えていただき、「その手があったのか!」と気付かされました。

それまで起業に対しては大変そうというイメージがあり、起業家の手伝いをするという発想はあっても、自分が起業家になるとは思いもしていませんでした。ただ起業するといっても、具体的な仕事内容は採用ページの企画や採用イベントに登壇して学生さんたちと喋るなど、会社の新卒採用担当がやっている事と似ていました。その仕事を自分の会社として受ける方法があるんだと知り、起業に対してのイメージが大きく変わりました。

起業後、WEBサービスクリエイターとして最初に手掛けたのが、若手向けの就活・転職WEBメディア「sketch(スケッチ)」です。

▼「sketch」サイトTOP

「sketch」は私自身の経験がベースになっています。恥ずかしいお話なのですが、就職活動が終わった後の内定者時代、私はかなり調子に乗っていました。Twitterのプロフィール欄に「来年から外資系の広告会社に入ります」なんて書いてしまうくらいに(笑)。フォロワーには就活中の学生も多くいました。

だからこそ内定者時代にドヤ顔していたのに、ミスマッチですぐ辞めてしまったことに責任感を感じていまして、“しくじり先生”のように発信して謝らなければいけないとも思っていたんです。また、就活メディアでは成功した人ばかり取り上げますが、私のように失敗した人の話も世の中に出した方がいいんじゃないかと。

私の周りには就職活動で一悶着あった人が多かったので、その人たちに記事を書いてもらって掲載したら面白そうだなと思いました。それを呼び水にしながら、ユニークだけれど知名度の低いベンチャー企業の採用情報を掲載すれば、学生が集まってきていいマッチングになりそうだと考えました。

「sketch」もそうですが、私はWEBサービスクリエイターと言っても、最初から最後までサービスを作っているわけではありません。私がやっているのは企画の部分だけ。開発はエンジニアに担当してもらっています。

私のような開発スキルや経験がなくても、やれる人と組めば、サービスを作れるのだと気づいたことも、視点を変える大きなきっかけになりました。

4.誹謗中傷体験から「TOMARIGI」をリリース

今年、Rethink PROJECTの一環として、カヤック社とともにリリースした新サービス「TOMARIGI」も、私の経験から生まれました。

2年ほど前からメディアへの露出が多くなり、それに伴いSNSで執拗に攻撃してくる人が現れてしまったんです。その人は私がメディアに出演するたびにTwitterで容姿のことを中傷するようになり、それが長期間続きました。

恐怖を感じて弁護士に相談しにいったところ、すぐに「容姿への侮辱や画像の無断転載は過去の裁判例があるので開示請求が通りますよ」と回答をいただきました。裁判所から見ても悪いことなんだとわかり、ホッとした反面、裁判例をもっと早く知ることができればいいのにとも感じたんです。裁判例自体は弁護士でなくても見ることができますが、わかりやすく見られるサイトはありませんでした。

私と同じように誹謗中傷で悩んでいる人も、こういう裁判例があるとわかるだけで勇気づけられたはず。そこで、誹謗中傷を受けた人が、励まされるようなサービスを提供したいという思いから、裁判例をわかりやすく閲覧できるサイトを作ることにしました。

▼サイトTOP

▼サイト内で気軽に閲覧出来る裁判例
きっかけとそれに対する解決策が実例と共に記載されており、自身と似た内容を探せるのがありがたい。

▼みんなの体験広場。
SNSでのつらい体験を匿名で記載が出来、一人で抱えることなく共感し合える場所となっている。

ーーSNSはナイフのようなもの。ーーー


正しく使えば便利なものですが、すごく危ないから気をつけなければだめだと教えられて、初めて使いこなせるものだと思います。自分を傷つける恐れがあるし、他人も傷つけるかもしれないということを義務教育でしっかり教えていくべきだと考えています。「TOMARIGI」が広まることで、被害者はもちろん、加害者も減らすこと繋げていきたいです。

→「TOMARIGI」で過去の実例やSNS上での悩み・体験をもっと見る

5.つまずいたときこそ“Rethink”のチャンス

新しいWEBサービスのアイデアを練るときに、私が使っているのが紙とペン。何か考えるときにはスマホやパソコンを開く人が多いと思いますが、いろんな情報が入ってくると気が散ってしまうので、あえて使わないようにしているんです。意外にアナログっていいなと思うんですよね。集中力が高まりますし、外からの情報がないので自分の頭の中のアイデアが出やすくなると思います。

また、視点を変えて物事を考えるには、失敗を恐れないことも大事。

私自身、就職した会社で上手くいかなかったからこそ、起業して就職メディアを立ち上げることができましたし、SNSで誹謗中傷を受けたからこそ、「TOMARIGI」という新しいサービスを思いつくこともできました。つまずいたときこそ、それをどう未来に活かせるかという視点で考えてみてはいかがでしょう。そのとき思いついたアイデアが、誰かを救うことになるかもしれません。

失敗を必要以上に恐れずに、それも含めて自分だけの経験にできれば、必ず今後に活かしていくことができると思います。


取材・文:安藤茉耶
編集:学生の窓口編集部

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