「ワンマンバス」や「ワンマン社長」などとして使われる、「ワンマン」という言葉。これは元々「one-man」という英語表現からきた言いまわしなのですが、最近ではすっかり日本語として定着しつつあります。 今回は「ワンマン」の意味や使い方、そして類義語や対義語についてもご紹介します。
上述したように「ワンマン」は英語の“one-man”が語源となる言葉。“one-man”とは英語で「一人だけの」を意味します。そこから日本の交通や文化にあわせて「ワンマンカー」「ワンマンバス」というような使い方が広まってきたと考えられます。
ちなみに『広辞苑』では「ワンマン」を次のように説明しています。
ワン-マン【one-man】
(1)「ひとりの」「ひとりで」の意。
「――-バス」
(2)(日本での用法)他人の意見や世評を顧みず、自分の思うままに振る舞う人。
「――社長」
――-カー
(和製語 ~ car)一人の乗務員だけで運行される鉄道車両やバス。
――-コントロール【~ control】
(1)オートメーション化された設備で、1カ所に集めた制御機構を通じて設備全体を操作すること。
(2)一人の意思で全機構を動かすこと。
――-ショー【~ show】
舞台やテレビ番組などで、一人が中心になって演ずるショー。転じて、大勢の中の一人が、まるですべてを一人でしているかのように目立つこと。
(『広辞苑 第六版』P.3043より引用)
日本では「ワンマン」は「一人での」「一人でする」という意味で用いられており、「ワンマンライブ」「ワンマンショー」というような使い方をするのが一般的になっています。
また「ワンマン社長」のように、「人の言うことを聞かずに、一人で何でも決めてしまう」といった、「独裁的な」というニュアンスで使われることも多いです。ビジネスシーンでの「ワンマン」はこちらの意味合いの方が強いかもしれませんね。
ワンマンの元となった英語の“one-man”は、実際に使われている英語表現です。例えば“one-man play”は「一人芝居」という意味で、“one person show”は「一人で演じるショー」という意味になります。
ちなみに、ディズニーランドの名作となったステージショーに「ワンマンズ・ドリームII」というものがあります。これは“One Man’s Dream”という英語表現です。
(注)one-manのハイフンは入らない表記となっています。
「一人の人間がみた夢」つまりウォルト・ディズニーの夢がどんどん花開いていくさまを描いた素敵なショーです。
このように、英語としての“one-man”は「一人だけの」「一人の」というニュアンスが強く、日本のように「独裁的な」という意味はありません。その代わり、日本にはない「一人の男性だけを愛する(女性)」という意味でも使われるのがポイント。日本語と英語では意味が若干異なるということですね。
「ワンマン」の使い方を例文とともに見ていきましょう。
まずは「ワンマン社長」などビジネスシーンでよく聞かれる表現からご紹介。続いて電車やバスでのワンマン、エンターテイメント分野でのワンマンショーなどにも触れていきます。
契約をしようとする相手先の社長が「何もかもを一人で仕切る人」という意味で「ワンマン社長」という表現が使われています。
先ほどの「ワンマン社長」と同様の意味で、意見を出し合うというより、何でも一人が決めていく経営スタイルを指して「ワンマン経営」といっています。
先に挙げたワンマン社長や、ワンマン経営を行なっている人のことを「ワンマンな人」と表現します。ワンマンな人は社長に限りませんが、幹部職などについている人の方が比較的「ワンマンな人」と呼ばれがちです。
ワンマンな人の性格は、次のような特徴が見られます。
これらはあくまで傾向であって、ワンマンと呼ばれる人全てに当てはまる訳ではありません。ですが、ビジネスで「ワンマン」というとネガティブな意味合いで使われることが多いです。「ワンマンでこちらが困っている」といった具合ですね。
ですが、裏を返すとワンマンな人は強烈なリーダーシップを持っていることも。良くも悪くも周りを振り回しながら、物事を押し進めていく強烈な突破力を発揮することもあります。
ワンマンな人への対応に困っている方の気持ちはよく分かりますが、実は企業にとっては必ずしもマイナス面だけとは限らない、というのも事実です。
ワンマンコントロールは冒頭の広辞苑からの引用にあったとおり、「1カ所に集めた制御機構を通じて設備全体を操作すること」を指します。1ヶ所のコンピューターシステムによって集中管理することができれば、人員削減にもつながります。
従来、電車といえば「運転士」と「車掌」の2人が車両に乗り込む体制が一般的でした。ところが最近になって運転士一人だけが乗り込む「ワンマン運転」の導入が進められています。
ワンマンバスは、車掌さんやガイドさんが乗車しない、運転手だけで運行されているバスのことを指します。バスの乗り口付近に「ワンマン」と書かれているケースが多いので、「ワンマンバスなら昔から知っている」という人も多いのではないでしょうか。
1つ目は、演歌歌手が「単独で開催するショー」という意味。これは一人の歌手に限らず、グループで活動する歌手にも当てはまります。
2つ目も同じように「ワンマンショー」という言葉を使っています。こちらは「株主総会では常務が全てを取り仕切っていたので、まるで常務主役のショーを見ているようだった」という比喩的な表現です。
ワンマンライブも先ほどのワンマンショーとほぼ同じ意味です。「単独で開催するライブ」ということですね。
ちなみに、ライブに行き慣れたファン達や出演側のアーティスト、関係者などの間ではワンマンライブを「ワンマン」と省略して使うことがあるのでご注意を。
「ワンマン社長」など「自分の思うままに振る舞う」意味での類義語は、
などがあります。
ほかに「えらそうな態度」を意味する「横柄」も似ていますが、若干ニュアンスが異なります。「横柄」はどちらかというと、ネガティブな「態度」にフォーカスした言葉です。対して、ワンマンは態度だけでなく上位の役職についているなど「影響力」があり、何でも一人で決断を下していく「行動力」を持つ人というニュアンスです。
そして、「ワンマンバス」など「一人で」「一人の」という意味での類義語は、
が挙げられます。
対義語の方も、類義語と同じように2パターンに分かれます。
「自分の思うままに振る舞う」意味でのワンマンの対義語は、
などがあります。
そして、「一人で」「一人の」という意味でのワンマンの対義語は、やや固い表現ではありますが
が挙げられます。そのほか「ワンマンライブ」に限っては、対義語として「タイバンライブ」という言葉もありますので補足しておきます。単独ライブと違って、様々なアーティストが順番に登場するライブのことですね。
「ワンマン」は、「一人の」「一人で」をあらわす「ワンマンカー」「ワンマンショー」のような使われ方に加え、「自分勝手」「独裁的」を意図する「ワンマン社長」「ワンマン経営」という意味もあります。日本語には一つの単語で複数の意味を持つ言葉も多いので、くれぐれも使い方には十分気を付けるようにしましょう。
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