多くの企業で、入社の際に「身元保証書」という書類の提出を求められますが、これがどういった書類なのかよくわからない方もいると思います。そこで今回は、身元保証書の役割や書き方、注意点などをまとめてご紹介します。
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「身元保証書」とは、基本的に企業側が用意します。書かれている内容は「本人が会社に損害を与えた場合、保証人が連携して賠償する」といったもので、入社する本人と、保証人の指名を記入する欄が設けられています。
書類で「賠償する」と約束したとはいっても、その人物の身元が定かでなければ信用できるとはいえませんよね。そのため、「その人物の身元が確かであることを証明し、損害が発生した場合は共に保証する」という保証人を立てるのです。これにより、企業はその人物を信用し、従業員として迎え入れられるというわけです。
入社する人は、身元保証書の内容を確認して署名・押印。また保証人(2人必要とする企業が多いようです)に署名・押印してもらい、提出します。保証人については、家族と友人・知人・親戚などに保証人になってもらうのが一般的です。ただし、同じ世帯からは1人しか保証人になれないという企業もあり、この場合は、例えば父親・母親に同時に保証人になってもらうといったことはできません。しかし、世帯が別のきょうだいなどには頼むことができます。
身元保証書における保証人は、一般的な賃貸契約などの「連帯保証人」とは責任が異なります。一般的な連帯保証人の場合、責任を負うのは特定の債権についてのみです。例えば10万円の借金であれば、10万円という金額が明確です。しかし、身元保証人の場合は「発生した損害」に対しての賠償となり、金額が予測できません。場合によっては、かなりの高額になることもあるでしょう。このような場合、予測できないことで多額の賠償は発生するとなると、身元保証人の責任はあまりに重くなってしまいます。これを緩和するため、身元保証人の責任の範囲は限定的なものになっています。なお、身元保証人については『身元保証ニ関スル法律』によって規定されています。
身元保証人について最も重要だと考えられるのが「期間的な制限」です。これは身元保証人が責任を負うに当たり、有効期限が設定されるというものです。身元保証人の有効期間は原則3年(最大5年)とされるというものです。ただし、これは更新することが可能とされており、その場合でも5年が限度になります。ちなみに一般的な保証人には、こういった期限は定められておりません。
また、身元保証人は身元保証契約を解除することもできます。
・本人が企業に対して損害を与える恐れがある場合
・本人が重要な職に就き、入社当初の想定よりも大きい責任が生じる場合
・本人が遠隔地に赴任し、身元保証人が監督できなくなる場合
上記の場合、企業は身元保証人にそのことを伝えなければならず、通知を受けた場合(あるいは通知がなくても自分で知った場合)には「将来的に」身元保証契約を解除できます。これにより、契約解除移行に生じた賠償については責任を負うことがなくなります。ただし、契約を解除する以前に発生した損害については、引き続き賠償の責任があります。
とはいえ、本来は企業がその従業員を監督して業務を行わせるもので、損害が発生したからといって保証人に全て賠償させるようなことは裁判でも認められません。
身元保証書を書くとはいっても、上記のとおり自分の名前や保証人の名前以外は企業側が用意しているのが普通です。名前を書く際には次の点に注意しましょう。
・黒のボールペン、万年筆などを使用する(鉛筆は使わない)
・字は崩さず、丁寧に楷書で書く
・保証人契約の期間、更新の有無などを確認する
特に、保証人契約の期間については重要です。保証人をお願いする相手にも、正確に伝えなければなりません。
身元保証書の提出については、企業からは「○○月○○日までに提出するように」と言われますが、実際には労働基準法で提出が義務付けられているというわけではありません。ただし、こういった書類の提出については就業規則で規定されている場合が多く、「身元保証書を提出しなければ採用を認めない」という企業もあります。
通常、企業が従業員を解雇するには、労働基準法で「少なくとも30日前に予告しなければならない」と定められていますが、例外的に労働者の責任による理由で解雇する場合にはこれの予告は必要ありません。これを果たさないためにやむなく解雇する、というのは正当であるという裁判の事例もあります。
保証人がなかなか決まらないような場合、提出が遅くなってしまこともあるでしょうが、就業規則で定められているなら、身元保証書は提出しなければなりません。期日に提出できない場合には、人事担当に相談するといいでしょう。
「身元保証書」は、単に入社する人の身分を証明するというだけではなく、損害が発生した場合に賠償しなければならないという思い責任を伴うものでもあります。もし友人などに身元保証人になってほしいと頼まれても、軽い気持ちで引き受けない方がよいのではないでしょうか。
(藤野晶@dcp)
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