1914年兵庫県は宝塚市に産声を上げた「少女歌劇」が、今年2014年に100周年を迎えました。皆さんご存じの『宝塚歌劇』です。少女のみの出演者による初公演は1914年4月1日、それから連綿と現在に至り、いまだ多くのファンを獲得し続けています。その魅力のヒミツを探るべく、宝塚歌劇に造詣が深く、また宝塚歌劇に関する著作も多い、中本千晶さんにお話を伺いました。
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「いいと思う」に64.2% 一時だけ盛り上がる「にわかファン」どう思う?
■4世代にわたるファンもいる!
——宝塚歌劇が100周年を迎えます。一口に100周年といってもなかなかできることではないと思うのですが。
中本さん そうですね。芸能のジャンルでなかなかないことではないでしょうか。日本の古典芸能というわけではありませんし、また国からお金をもらっているわけでもなく、一企業が100年の長きにわたり、このような歌劇を維持し続けているというのは世界的にも珍しいと思います。
——企業活動の一環で、きちんとファンがいて、それによって支えられているのは希有(けう)な例でしょう。
中本さん これだけ長い歌劇の歴史ですから、ファンも3世代、4世代と続いています。おばあちゃんがファンだったので自分もファンになって、自分の娘にも宝塚歌劇の魅力を伝える、そんな人も珍しくありません。
——長いですね。
中本さん 熱狂的なファンでしたら、自分の娘を宝塚音楽学校に入れて、将来は宝塚歌劇のスターに! と夢見ますよ。
——息子さんの場合はどうするのでしょうか。
中本さん その場合は、演出家にならないものかと思ったりするようです。実は演出家の方が狭き門なのですが(笑)。
——演出家の方が難しいのですね。
■宝塚歌劇の歴史あれこれ!
——宝塚歌劇の歴史の中で、困難だった時代というのはあったのでしょうか?
中本さん そうですね。やはり第二次世界大戦中は苦しい時代だったのではないでしょうか。演目に注文を付けられたりと、難しい時代でしたから。
1944年にはお国の方針で宝塚大劇場と東京宝塚劇場は閉鎖されています。
——なるほど。戦時中は宝塚歌劇も苦しかったのですね。
中本さん ただ、戦後すぐ、終戦の翌年1946年には宝塚大劇場は公演を再開しています。素早いですよね。
——宝塚歌劇の黄金期というといつなのでしょうか。
中本さん それは何度もありますね。
過去を振り返りますと、まず1930年代には一つの頂点を迎えます。これは「レビュー」が宝塚歌劇で上演され始め、大ヒットした時代です。日本国内だけではなく、ドイツ、イタリア、アメリカなど海外でも公演を行っています。
——昭和初期ですね。
中本さん このころは、日本全国で「レビュー」という出し物が大変に当たった時代でした。「レビューの黄金時代」ですね。『モン・パリ』という演目が大変に有名です。初めてラインダンスが行われたのもこの公演です。
——なるほど。知らないことばかりです。
中本さん 1950年代には『虞美人』『源氏物語』、1960年代には『華麗なる千拍子』というとても素晴らしい演目が登場し、それぞれに評判を呼びました。『華麗なる千拍子』は後に再演されています。
——10年ごとに何か評判になる舞台があるのですね。
中本さん そうですね。源氏物語では、春日野八千代さんが光源氏の役を演じられました。春日野八千代さんは「白薔薇のプリンス」と呼ばれた男役で、亡くなるまで宝塚歌劇の現役生徒だった伝説の方です。
——いつ亡くなられたのですか?
中本さん 2012年に亡くなられました。どれほど100周年を楽しみにされていたかと思うと、本当に残念でなりません。宝塚歌劇の精神的支柱であり、ファンからもとても敬愛されていらっしゃいました。
——そういう方がいらっしゃったのがスゴイですね。
中本さん そして70年代には『ベルサイユのばら』が大ヒットします。これはまるで宝塚歌劇のために描かれたような作品で、全てがぴたっとハマりましたね。社会現象にもなったほどでした。
当時は、テレビにお客さんを取られるといった苦境があったように聞きますが、『ベルサイユのばら』の大ヒットは宝塚歌劇に人々を注目させる効果があったようです。
——漫画しか知らない私の母親も宝塚の劇場まで見に行きましたね(笑)。
中本さん そうですか。それぐらい影響力があったわけです(笑)。
1996年には『エリザベート』という作品が公演され、これがまた大ヒット作になります。現在の若い宝塚ファンにとっては、『ベルサイユのばら』よりもこちらの方がポピュラーかもしれませんね。
——知りませんでした。
中本さん オーストリア皇后が主人公のお話なのですが、再演を繰り返す間に大きな人気演目になりました。今では宝塚歌劇を代表する人気演目の一つです。
——中本さんはいつご覧になったのですか?
中本さん 初演を見られたのが一つの自慢です(笑)。初めて見たときのあの感激は忘れられませんね。
■男性ファンも増えている!?
——男性ファンも増加していると聞きますが。
中本さん そうですね。男性ファンはじわじわ増えているのではないでしょうか。もともと女性の理想とする男性像、女性の夢の世界を舞台にしたのが「宝塚歌劇」だと思いますが、そこに男性ファンが付くのはうれしいことですね。
——男性ファンと女性ファンでは、宝塚歌劇の見方が違っていますか?
中本さん そうですね。女性ファンのように「○○さんのファン!」といった個人に付くファンではなく、システムとでもいいますか、宝塚歌劇全体を好きになるという人が多いような気がします。
■熱い宝塚ファンは多いのです!
筆者も一度だけ宝塚の大劇場に公演を見に行ったことがあります。そこで宝塚ファンの素晴らしさを目撃しました。会場に車が次々と出入りするのですが、女性が一人二人と忙しく立ち働いているのです。
入り待ち出待ちのファンの皆さんが危なくないように、車に指示を出していたこの人たち、実は劇場関係者やスタッフではなくて、普通のファンの人だったのです! ファンが率先して動くという宝塚ならではの光景に大変驚いたのを覚えています。
ファンの熱さを象徴するエピソードをご紹介しましょう。
●公演スケジュールが発表されると自分のスケジュールも決まる。
公演スケジュールが決まってからしか自分のスケジュールを決めない。それほど宝塚歌劇を愛しているわけですね。
●スマホの単語登録がおかしい。「宙組」などがすぐ出る。
タカラジェンヌの難しい漢字の名前もすぐ打てるように登録されているそうです。
●紫の袋がたくさんある。
『キャトルレーヴ』という公式グッズ販売店の袋が「紫の袋」なのだそうです。日比谷でこの袋を持った人をよく見掛けるとか。
●並んでいるときにファン同士すぐに仲良くなれる。
こういう一体感が味わえるのが宝塚歌劇ファンのいいところなのでしょうね。
●入り待ち、出待ちでは「ガード」が最前列にいる。
「私設ファンクラブ」の方々が、スターを危険から守るために活動していらっしゃって、そのファンの人々を「ガード」と呼ぶのだそうです。このガードの人々は素晴らしくて、スターが通るときには、後ろのファンの人を気遣って一斉に身をかがめるそうです。ここまで愛情あふれるファンというのは、おそらく宝塚歌劇のファンだけではないでしょうか。
*......宝塚歌劇ファンについては、中本千晶さんの著書『ヅカファン道』が面白く、参考になります。
■宝塚歌劇の魅力とは!?
——宝塚歌劇の魅力とは何でしょうか?
中本さん 「清く正しく美しく」というのが宝塚歌劇のモットーですが、そのとおりに、まさに「夢を実現している舞台」であることではないでしょうか。乙女の心を持って楽しめるものが宝塚歌劇にあります。
もし、一度も見たことがないのであれば、ちょっと損をしていると思います。ぜひ劇場に足を運んで、この素晴らしい夢の世界を楽しんでほしいです。
——ありがとうございました。
いかがだったでしょうか。100年もの間、女性を中心に多くのファンを獲得し続けている宝塚歌劇。そこにはやはり大きな魅力があるのですね。
あなたも一度見てみませんか?
宝塚歌劇100週年に合わせて中本千晶さんの著書が刊行されます。宝塚歌劇の魅力について語られた本です。読めばあなたもヅカファンに!
『タカラヅカ100年100問100答』
http://www.tokyodoshuppan.com/...
(高橋モータース@dcp)
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