■日本中で議論が巻き起こる体罰問題
日本代表クラスの柔道女子選手がコーチから体罰を受けていたとして、連名で日本オリンピック委員会(JOC)に提訴するという問題にまで発展し、日本中で議論が交わされている体罰問題。本来であれば、日本柔道連盟が解決すべき問題と思われるが、今回はなぜJOCに問題が提訴されたのだろうか?
■JOCはオリンピックへの選手派遣が主な役割
そもそも、JOCはオリンピックを開催する国際オリンピック連盟(IOC)の日本の窓口として機能している団体で、オリンピックへの選手の派遣や管理などが主な業務だ。全日本柔道連盟をはじめとする各競技団体は、このJOCの協会員となってはいるが、あくまでもオリンピックへの選手派遣に関することのみで、それぞれは独立した組織として成り立っている。となれば、当然内部の問題は内部で解決する自浄作用が働いてしかるべきなはずだが......。そもそもJOCには、こういった問題を裁き、関係者を処分する権限を持っているのだろうか?
■権限がないJOCのジレンマ......
各報道や、スポーツ界の組織に詳しい大学教授の話などをまとめると、今回、JOCに提訴した15人の女子選手は、もともと2012年9月に全日本柔道連盟に訴えを起こしていたが、全日本柔道連盟は問題のコーチに対して、訓戒(簡単にいうと、こんな訴えがあったから注意してよ、と言う注意)のみの処分を下した。これに対して選手たちは自分の訴えがうやむやになってしまうことを恐れ、JOCに提訴すると同時に、世間へ公表するに至ったという。ところが、当のJOCは協会に所属する団体に対して処分する権限を持っていないから大変。結局、全日本柔道連盟に、選手たちにもっと詳しく事情聴取するよう伝えただけにとどまってしまった。これに対して選手たちは、自分たちの名前が表に出てしまうことで、今後の練習や試合に影響が出ることを懸念してか、聴取を拒否。解決の糸口が見えないまま、宙ぶらりんになっているのが現状だ。
柔道界だけでなく、学校の部活動の体罰も含め、世論を巻き込んでの大論争となっているこの問題。果たして着地点はどこにあるのか......。柔道界、ひいてはスポーツ界全体のため、発展的な解決を望むばかりだ。
文●高橋ダイスケ
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