親子間コミュニケーションに詳しい"塾ソムリエ"の西村則康さんから、未来の親たちへの提言。今回は、父親がどのように幼児教育に関わるかがテーマです。イクメンという言葉も浸透しつつありますが、「父親が子どもの教育に参加してくれないという相談は非常に多い」と西村さん。母親よりも家にいる時間が少ない父親にできることとは?
「一般的に、母親に比べて父親が幼児教育に関われる時間は限られています。それは個々の仕事にもよるので、ある程度仕方のない部分だと思います。そんな状況のなかで、まず男性に考えてもらいたいのがON・OFFという概念です。仕事はON、帰宅したらOFFといったように、家では完全にスイッチを切ってしまう方が多いようです。しかし、これは幼児教育、もっと言えば子育てとしては間違っています。なぜなら、帰宅した後も、"父親"という仕事があるからです。 もちろん、家庭は仕事の疲れを癒す場ではあります。ただ職業人としては、OFFでも、父親としてはOFFになってはいけません。母親がそうであるように、父親も24時間常に父親なのです。 これはマインドの問題ですが、とても重要なことです。毎日帰宅してからも父親としてのスイッチがONになっていれば、母親から『子育てに参加してくれない』なんて不満は出ないはずです」
ではその上で、父親はどのように、幼児教育に関わっていけるのでしょうか? 「どんなに幼児教育に意識が高い父親でも、仕事が忙しければ子どもに接する時間も少なくなってしまいます。そこで、私が薦めたいのは『できるだけ母親のケアをしてあげる』ということです。 週末だけでも構いません。常に子どもと一緒にいて、なかなか気分転換の時間が取れない母親を少し日常から連れ出してあげる。それだけで母親は息抜きができます。そして、お母さんのストレスが解消されれば、普段の教育や子育てにも良い影響が与えられます。 間接的ではありますが、こういったちょっとしたサポートで、家庭の雰囲気は良くなるはずですし、そういった変化に子どもたちはとても敏感なのです」
「最後に父親にぜひやってもらいたいのが、『会社で学んだことを子どもにも実践する』ということです。 会社ではコミュニケーションが上手な方でも、家庭では一転、単語でしか会話しないということはよくあります。もっと具体的に言えば、部下や後輩に指示を出す時は、『すごくがんばっているけれど、こうするともっとよくなるよ』というように話す方が、子どもには『勉強しなきゃだめだ!』の一点張り。そうではなく、『毎日10分ずつなら勉強できそうだね』とか『それをすれば、80点だったのが、簡単に95点になるね』とできるだけ論理的に説明してあげることが大切です。 当然ですが、大人と同じように、子どもだって頭ごなしに指示されては、やる気が起きるはずもありません。多くの大人が思っているよりも、子どもたちの理解力は高いので、きちんと説明してあげる意味は十分あります。会社で日々磨いているコミュニケーション術やマネジメントスキルは、そのまま家庭でも、子どもに対しても使えるのです。 この1点に関しては、家庭にいる母親よりも、外で多くの大人と接している父親のほうが有利だと思います。ぜひ、活用してみてください」
「父親という職業」とはよく言われますが、まさにその通り。いい意味で家庭での役割も仕事と捉えて、家族と真摯に向き合うこと。それが父親としてできる幼児教育なのかもしれません。
(取材・村上陽一/Discot)
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