「福島に行ったことがない人にこそ見てほしい。」大学生記者の「『福島、その先の環境へ。』対話フォーラム(新潟開催)」潜入レポート
私は生まれてこの方、福島をはじめとする東北地方に行ったことがありません。いつかは訪れてみたいと思っていましたが、普段の生活で福島のことを考えることは、ほとんどない。それほど、私と福島には縁がありませんでした。
恥ずかしながら、除去土壌の問題について、私は全くと言っていいほど知りませんでした。原発の処理水について聞いたことはありますが、土壌のことはニュースで取り上げられていただろうか?と思うほど。こんななじみのないテーマを集中して聞き続けられるのか、と思いながら視聴してみましたが、フォーラムは私の期待をはるかに上回るものとなりました。
福島県、もしくは東北地方に住んでいない人にとっては、福島を身近に感じられる機会は限られているのではないでしょうか。3月11日が近づいてきた時期にテレビで特集が組まれ、やっと思い出すというくらい。そんな人でも、福島のためにできることがある。フォーラムを見た日は、そう思える一日でした。
「福島、その先の環境へ。」対話フォーラムとは?
「『福島、その先の環境へ。』対話フォーラム」とは、環境省が行っている、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故からの今後の福島の復興・再生に向けた取組のうちの一つである、「福島県内除去土壌等の県外最終処分の実現に向けた全国での理解醸成」を目的としたフォーラムになります。今回は、7回目の新潟開催にオンラインで参加しました。
ちなみに、「福島、その先の環境へ。」自体が、国が行う福島復興に向けた取り組みの合言葉となっており、それに関連して様々な活動が行われてきました。
もっと詳しいことが知りたい方は、環境省のホームページをご覧ください。
また、以前学窓ラボのメンバーが別の活動に参加しましたので、是非そちらのレポートもチェックしてみてください!
⇒ 【学生記者】あなたは「これまでの福島」と「これからの福島」がわかりますか? 「『福島、その先の環境へ。』対話フォーラム」潜入レポート
今回のフォーラムは、東日本大震災から11年経った今、福島の復興のために、除染で発生した除去土壌等の再生利用と県外最終処分について、多くの人に知ってもらうことを開催の目的としています。
様々な肩書の登壇者と一般の参加者との対話によって、福島の除去土壌問題の現状とこれからについて理解を深めることが出来るイベントになっています。
↑ 会場の様子。朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターにて。
↑ 登壇者の方々。左から長岡技術科学大学技学研究院准教授 大場恭子氏、土居健太郎環境省環境再生・資源循環局長、西村明宏環境大臣、タレント なすび氏、一般社団法人 HAMADOORI13 代表理事 吉田学氏、北海道大学大学院工学研究院環境循環システム部門 資源循環材料学研究室 教授 佐藤努氏、長崎大学原爆後障害医療研究所 教授 東日本大震災・原子力災害伝承館 館長 高村昇氏。
↑ 会場の参加者は、対話ボードに疑問や感想を貼ることができます。登壇者と参加者の双方向性が保たれています。
フォーラムの様子
今回のフォーラムはオンライン参加も可能であったため、現在もそのアーカイブが残っており誰でも視聴可能です。
フォーラムの様子や専門的な説明など、直接体感できますので、ぜひ、以下のYouTubeリンクからアーカイブを視聴してみてください!
興味はあるけど、動画を視聴している時間がないという方や、まだちょっと興味を持ち切れていないという方は、本記事内でフォーラムの大まかな内容と動画の再生時間を紹介しますので、気になったところだけでも視聴してくださいね。
それでは、まずフォーラムの構成についてです。
今回のフォーラムは
(1)除去土壌等の県外最終処分に向けた取組等についての説明
(2)対話セッション
という2パートで構成されています。
(1)は、馬場康弘環境省環境再生・資源循環局参事官が環境再生事業と今後の課題について説明するところから始まりました。(6:35)
写真やデータが掲載されたスライドのおかげで、事前知識のない私でも、後の対話セッションの内容を理解することができました。
↑ 客観的なデータが示され、説得力があります。
説明の途中で、大熊町、双葉町の町長によるビデオメッセージが放映されました。(9:14)復興の様子や、かつて実際に住んでいた場所が中間貯蔵施設になるにあたっての住民の思いなどが伺えます。二人の町長の主張に共通していたことは、「実際に町に足を運んでほしい」ということでした。
その後、県外最終処分や除去土壌の再生利用の必要性について、再び説明がなされました。(19:55)
↑ 除去土壌の問題に関する認知度を高めることが重要だということが分かります。
除去土壌問題についての今と今後の方針について理解した後は、満を持して(2)の対話セッションに移ります。
(2)はまず、大場氏進行のもと、登壇者による対話セッションが行われます。また、対話に先駆けて、よく出る意見に対する専門家からの回答がなされました。(34:55)
↑ ファシリテーターの大場氏。
↑ 回答する佐藤氏。ゴミのリサイクルを例に出してくるところが分かりやすい。
↑ 高村氏による解説。低線量による人体への影響は証明されていないようです。
事前質問への回答が終わるとすぐに登壇者同士の対話が始まります。
↑ 西村環境大臣。なすび氏の疑問に丁寧に回答する。
↑ 関氏による前半のグラフィックレコーディング。
その後は、会場・オンラインで参加された方々の声をもとに、登壇者と参加者の対話セッションが行われました。
会場に用意されたボードに参加者の声が書かれた付箋が貼られ、その付箋に対して登壇者が回答していきます。
↑ 豪雨や地震などの災害で覆土が崩れないのかという疑問。季節を通じて実証や管理を行っていくとのこと。
↑ 若者に向けてSNSで発信するのはどうか?という提案に対して、難しい問題なので関心を持たせるのが難しいという意見が出ました。
↑ マスコミとの関係が気になる人もいたようです。
↑ 登壇者の活動内容に興味がある人も。
↑ 関氏による後半のグラフィックレコーディング。
などなど、様々な対話がなされました。ここで紹介したものは対話の一部ですので、気になる方は動画をチェックしてくださいね。
そして、最後は、今回の総括に入ります。(1:56:45)
「続けることが重要」、「自分事として考える人の数で未来が変わる」、「福島だけでなく日本全国の問題」など、どの登壇者のコメントも印象的でした。自分ができることのヒントが見えてくるかもしれないので、よかったら観てみてくださいね。
まとめ
除去土壌に関する知識がほぼ皆無だった私でも、スライドを用いた分かりやすい解説があったので、問題なく理解することができました。当初なぜわざわざ県外で処分する必要があるのだろうと思っていましたが、それは以前から協力しておられた町民の方々の負担を少しでも軽くするためなのだと知り、納得しました。町長のビデオメッセージに出てきた町の様子が印象的で、行ってみたいという気持ちが強くなりました。
東日本大震災に関する特集が放送されない日でも、震災に関連する問題は毎日続いています。ですが、それは被災地に住んでいる人たちだけの問題ではありません。福島に行ったことがない人でも、除去土壌の問題や復興のためにできることは、意外とあります。ぜひ、できることからはじめてみませんか?
文:N.F.(学窓ラボ)
編集:学生の窓口編集部
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