理系ライターXが行く!vol.2『日本のものづくりを支える縁の下の力持ち』#大人の社会見学

編集:ナベ子
2020/02/07
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理系ライターXがすべての大学生に贈る、企業見学レポート連載!持ち前の「理系知識」を駆使し、様々な企業に取材!企業の知られざる一面や、想像もしなかった"あたらしい働き方"が見つかるかもしれないぞ。


DMG森精機に取材してきたぞ!

東京グローバルソリューションセンタhttps://www.dmgmori.co.jp/showroom/detail/tokyo.html

DMG森精機の製品は、基本的にすべて工場の中に置かれている。だから、ほとんどの人が“それ”を目にすることはない。けれども“それ”がなければ『ものづくり大国・日本』は成り立たない。まさに縁の下の力持ち『マザーマシン』を製造するメーカーであり、世界トップクラスの企業がDMG森精機だ。

同社に入社以降、テスト加工から始めて2年にわたるイギリス駐在もこなした後、今では部長職に就いているのが東京SSEPカンパニーの佐々木麻倫子さん。

子育て女性のロールモデルも意識する佐々木さんに、グローバル企業での仕事のやりがいや、同社ならではの働き方についてお話を伺った。

DMG森精機株式会社 SSEPカンパニー ソリューションセンタ統括部 東京グローバルソリューションセンタ 部長 佐々木麻倫子さん

「マザーマシンって何?」からのスタート

佐々木さんがDMG森精機に入社したキッカケ、それは大学時代のインターンシップだった。金沢大学工学部で機械工学を学び、就職先として考えたのは機械関係のメーカーだ。

「その一つが、まだドイツのギルデマイスターと合併する前の森精機でした。とはいえ正直にいえば、マザーマシンがなにかもよくわかってなくて。大学にはコンピュータ制御の本格的な工作機械が1台ありましたが、高価な機械だから学生は触らせてもらえなかったのです」

インターンシップは2週間、東京ドーム12個分もある広大な敷地にある伊賀事業所で行われた。1週めは工場内で機械の組み立て実習で配線・配管などを担当し、2週めには開発センターでCADを教わる。このときの印象が入社への強力な後押しとなった。

「工場の中にずらっと並んでいる工作機械、いわゆるマザーマシンを見ると、すごいなと圧倒されると同時に、確かに大学の講義で聞いたことがあるなって思い出したりもしました。印象的だったのは、みんなとても忙しそうなんだけれど、すごくイキイキしてるんです。ここで働く楽しさが伝わってきて、私もここで仕事をしてみたいと思ったのです」

佐々木さんは2006年の入社、だから“リケジョ”などという言葉などは、まだなかった。けれども「女性だから」という意識はまったくなかったという。

この機械がなければ、何もつくれない

DMG森精機の製品は、工作機械であり“マザーマシン”と呼ばれる。母なる機械とは、一体何のことか。機械をつくりだす機械、などと説明すれば余計にややこしくなるかもしれないか……。

たとえば化粧品をつくる工場を思い浮かべてほしい。そこにはさまざまな機械が備え付けられているはずだ。では、その機械は、どのようにしてつくられたのだろうか。

機械の多くはカスタムメイド、いろいろなパーツを組み合わせてつくられる。そのパーツのほとんどが、一品ずつ設計図に基づいてオーダーメイドされている。それらのパーツは、どこで・どのようにつくられるのか。

「パーツ製作に活躍するのがマザーマシンです。必要なパーツを、金属の塊を削って、設計図通りの複雑な形状につくりだす、だから母なる機械なのです。」

およそ世の中にあるものはすべて、元をたどれば工作機械から生み出されているといっても決して大げさではない。自動車もある意味ひとつの機械だが、そのエンジン関係の部品などはほとんどすべてが工作機械によってつくられている。ペットボトルやメガネなどは、金型に樹脂などを流し込んでつくられるが、その金型も工作機械によってつくられる。

「工場の中に入るか、当社のショールームのような場所に来ないと、工作機械を目にすることはないでしょう。けれども“ものづくり世界一”といわれる日本を支えているのが工作機械なんです」

工作機械“マザーマシン”がなければ、大量生産に必要な機械をつくることはできない。

新人時代は、泣きべそをかきながら何度も失敗を繰り返したことも!? 

自動車のエンジンパーツなどは、実に複雑な形状をしている。金属の塊から、こうしたパーツを削り出すのがDMG森精機の主力製品である5軸加工機だ。5軸加工機って一体どんな機械なんだと思った方は、ぜひイメージ動画を見てほしい

同社は、日系4大工作機械メーカーうちの1社である。競合と比べた同社の強みはどこにあるのか。その秘密は、社名に表されている。

「2009年に、当時ヨーロッパ最大手の工作機械メーカーだったドイツのギルデマイスターと資本提携しました。それから時間をかけて一つの会社となりました。いわば国際結婚のようなもので、文化の違いをじっくりと乗り越えていったのです。現在は連結売上高が5000億円を超える世界最大の工作機械メーカーとなりました」

ドイツも日本と並ぶものづくり大国であり、その特徴は徹底的な合理性にある。DMG森精機のマシンは、理論を突き詰めてつくられているため使いやすさに定評があった。そこに森精機つまり日本企業ならではの品質への徹底したこだわりと細部の精緻さが加わった。

「ドイツと日本、それぞれの良いところを合わせたようなもので、これが当社の最大の強みだと思います」

ギルデマイスターと森精機の技術力の粋を極めたのが5軸機であり、佐々木さんは、このマシンのエキスパートである。

「入社2年目から担当したのが、5軸機を使ったテスト加工です。お客様から部品の加工図面をいただき、指定された材料(ワークと呼びます)を試験的に削ってみるのです。図面どおりにきちんと仕上げるのは大前提で、どのような順番で削っていけば最も効率的なのかも検討します」

5軸機の中にはかなり大きなマシンもある。とはいえ実際の操作は、ほとんどタッチパネルで行うため腕力が必要なわけではない。求められるのは筋力よりも脳力である。なかでもポイントとなるのが、図面を読みとく力だ。

「平面に描かれた図面を見て、仕上がりの形状が頭の中に浮かんでくるかどうか。図面を見て、立体物をイメージする力は男性の方が優れているなどという説もあるようですが、少なくとも私はまったく苦になりませんでした。それどころか経験を重ねるうちに、図面をじっと眺めているとベストな加工法がひらめくようになりました」

そういう佐々木さんも最初からすんなりと機械を操作して思いどおりに加工ができたわけではない。駆け出しの頃は、加工のイロハのイともいわれる『寸法精度の出し方』がわからず、泣きべそをかきながら何度も失敗を繰り返したという。それでもやる気を失わず、地道に試行錯誤を重ねてできるようになった。

テスト加工ならではの面白いところは「同じワークが2つとしてないこと」だという。要するに試作だから、図面は必ず毎回異なる。図面を持ち込んでくる顧客も、毎回違う。しかも毎回、頭を絞らなければベストな加工法は見つからない。考えるのが好きな人には、日々エキサイティングな仕事といえる。

※最近は自分で5軸機を操作することはほとんどないという佐々木さん。とはいえ、タッチパネルの使いこなしは、実に手慣れたものだ。

イギリス駐在で大きく広がった視野

入社して5年目に入ったある日、大きな転機が訪れた。キッカケは、本部長から突然かかってきた電話だ。

「ひと言めが、“まだ結婚しないよね?”だったんです(笑)。そのときには本部長の人柄をよくわかっていたので、“これはもしかして”と、ちょっとワクワクしました。思ったとおり海外駐在の候補者を探していて、私に行けるかどうかを聞いてきたのです。もちろん“はいっ”って即答しました」

一度実家を出てしまった以上は、もはやどこへ行って暮らしても同じこと。たとえ行き先が国外でもたいした違いはないし、長い人生なんだから一時期を海外で過ごすのもいいかな……。そんなノリで異動の辞令を喜んで受けた。ただ一つだけ計算外だったのは、当初は半年、長くても1年と言われていた駐在期間が、結果的に2年に伸びたことだ。

派遣先はイギリス、イングランド中部の工業都市シェフィールド。ここにイギリス政府も関わる産官学連携の研究所がある。研究内容は、主に航空機部品の加工法である。国家レベルの研究所に日本企業を代表する加工技術者として駐在し、自社の機械の有効な活用法を研究する。これが与えられた使命だ。

「気安く引き受けたものの、それからが大変でした。機械工学を専攻するような学生の多くは英語が苦手で、私も同じくです。文章はひと通り読めるけれども、ほとんどしゃべれません。とはいえ日本代表として駐在するので、常に意見を求められます。出発前に英語の特訓は受けたのですが、最初の1年間は思うように話せずフラストレーションたまりまくりでしたね」

事前特訓のおかげでリスニングは何とか聞き取れるレベルまでになっていた。ところがしゃべろうとしても言葉が出てこないのだ。専門用語が飛び交う会議で、自分の考えを即座に最適な表現にするには、日常会話とは次元の異なる能力が求められる。ミーティングは定期的に行われ、必ず「君はどう思うんだ?」と尋ねられる。

「何とももどかしい日々を送る中で、人間の能力ってすごいなと思いました。2年目に入ると、決して流暢とはいえないまでも、自分の意見を何とか相手に伝えられるようになったのです」

「私もがんばろう」、そう思う女子社員が増えてほしい

イギリスからの帰国後、私生活では結婚そして出産、社内でも順調にステップアップを重ね、今では部長職に就いている。そんな佐々木さんに今の仕事のおもしろさをたずねると意外な答えが返ってきた。

「もちろん仕事はやりがいがあるのですが、一つだけ残念なのが、自分で機械に触る機会がほとんどなくなってしまったことです。やはり巨大なマシンを扱っているときが、私はいちばんうれしいみたいです。一方でポジションが上がって、自分の裁量で判断できる範囲が広がったのはおもしろいところですね」

仕事をする際に気をつけているのは「部下の人たち、特に女性のお手本になるような仕事ぶり」だそうだ。現時点で同じ部署に女性技術者は、佐々木さんを含めて5人いる。同社では、仕事を進めていく上で男女差を感じることはまずないという。性別はもとより年齢も関係なく、能力とやる気で評価されるフェアな社風である。

ただ能力差は性別で変わらないとしても、家庭環境などで男女の役割は異なってくる。特に子どもが生まれると、その違いは明らかになる。

※森精機の保育園

「その点で当社は、女性に対するサポートが充実しています。社内に保育園があり、時短勤務など当然と受け止められます。そもそも当社では、有給休暇は完全消化するのがルールになっているんです。私が入社した頃は有給を取らない男性社員もいたので、計画有給といって2カ月に1回は半強制的に休ませる制度が導入されていました。2019年度からは新入社員にも年間20日の有給休暇が与えられ、ほぼ100%の消化率となっています」

子どもがいる場合は、さらに年間10日間の看護休暇が認められている。仮に有給休暇をすべて消化した後に、インフルエンザなどにかかった場合は特別休暇が与えられるという。

「恵まれた環境にいることを感謝しつつ、これからの自分の役割の一つは、あとに続く若い女性社員の見本になることと考えています。子育てをしながら部長職を務めているのは、当社では私が初めてのケースです。ロールモデルなどというとおこがましいのですが、若い女性社員たちは、私がどこまでいけるのかと興味を持ってみているでしょう。だとすれば、既婚者で子育てをしながらでも、がんばったら上に行けるよと教えてあげるのが私の役目かなと。そんな私を見て、自分もがんばろうとあとに続く女性が出てきてくれたら、それに勝る喜びはないですね」

※記事内容及び社員の所属は取材当時のものです。

DMG森精機株式会社 SSEPカンパニー ソリューションセンタ統括部
東京グローバルソリューションセンタ 部長
佐々木麻倫子(ささき まりこ)

金沢大学 工学部卒業、2006年4月入社。奈良事業所で開発部門の機械設計に携わった後、伊賀事業所でアプリケーション開発やテスト加工に携わる。2010年2月よりアプリケーションエンジニアとしてイギリス駐在。帰国後、東京ソリューションセンタ加工技術部でテスト加工に従事。子育てをしながら、2017年1月に部長就任。

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文:竹林篤実
イラスト:TOA
編集:ナベ子

編集:ナベ子

生まれは北海道、学生時代は主に研究と剣道に捧げてました。最近は妖怪が好きです。
好奇心で人生をもっと豊かに!をテーマに日常/非日常のアレコレを題材にした記事をメインで担当してます。

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