井戸さんの「ガクチカ（学生時代一番力を入れたこと）」は？

体育会サッカー部でマネージャーとして頑張ったことです。小中高とプレーしていたテニスを続けることも考えましたが、高校時代に少し足を痛めていたため、観戦が好きだったサッカー競技の部活を選びました。部員は総勢150名で、それに対してマネージャーは各学年に2名ずつ、8名くらいが理想です。でも私の頃はなかなか入部がなくて、一時2名になってしまったことがあり、その時がいちばん大変でした。まず、練習はほぼ毎日。加えて私は会計だったので事務処理が多く、保護者とのやりとりや遠征の手配など、毎日目が回るほど忙しかったですね。

でも、今となっては大変な思い出もすっかり美化されてしまいました（笑）。やはりいちばんうれしかったのは、チームが結果を出したとき。マネージャーもきちんとチームの一員として捉えてくれて、共に喜びをわかち合うんです。特に2人体制を乗り越えた後は、選手たちにすごく感謝されました。「たぶん井戸さんたちじゃなかったら無理だったよ」と言われたときは、それまでの苦労が全部吹き飛びましたね。入学したときにサッカー部のマネージャーを選んで、間違いなくよかったと思っています。

仕事で役立っている大学時代の経験は？

やはりサッカー部のマネージャーとして、チームで運営に取り組んだ経験ですね。たとえばユニホームやボールなどの備品を買うのはもちろん、グランドを借りる、大学の施設を使うといった場合もすべて申請手続きが必要です。私は会計を担当していたので、部費徴収の文書を出し、年度末は資料を作って保護者を集めて決算報告もしました。それも年間1千万単位の、一般学生なら決して扱わない金額です。選手はもちろん監督やOBのみなさんなど、本当に大勢の人たちとやりとりをし、協力してもらいながら取り組んできました。支援してくれるOBの中には60歳以上の方もいましたが、そうした目上の方とやりとりをしたことも、本当に勉強になりました。

現在の営業も、お客さま、商社の人、開発担当や工場の人など、ひとつの案件に関してたくさんの人とやりとりをしながら進めていく仕事です。さまざまな調整が必要になりますが、私の中にはそうした仕事のイメージがすでにあったので、割とスムーズに入って行けました。大学時代に大きな組織を動かす経験をしたことは、今の仕事にとても役立っていると思います。

就活前にやっておいたほうがいいことは？

海外へ行って、日常とは違う環境に身を置いてみるのがいいと思います。私自身は大学時代部活で忙しくて実現できませんでしたが、友達がみんな短期留学をしていてうらやましかったですね。語学の勉強も後々役に立ちますが、やはり学生時代は時間があるので、余裕を持ってその国に滞在できるほうがいいでしょう。

学校に通う以外にも、現地で学べることはとても多いと思います。4年生の11月に部活を引退し、卒論を提出した後は、それまで行けなかった旅行にすごい勢いで行きました。海外旅行は3カ国、国内旅行へは8回行って、卒業までほとんど家にいなかったくらいです。私自身が海外に行って思ったのは、日本はやはりすごく便利で暮らしやすい国だと実感できること。どの国にもそれぞれいいところがありますが、改めて自分の住む所のよさを再発見できた気がします。

今は営業職を突き詰めることが目標で、まだまだ勉強することばかりという井戸さん。「でも、他の会社で働いている友達から仕事の苦労話を聞くと"私の仕事っておもしろいんだな"と、心の中でこっそり思ったり」と笑顔で語ってくれました。大学時代のマネージャー活動で鍛えた行動力と調整力を活かして、これからも新たなテーマにトライしていくことでしょう。

文：鈴木恵美子
写真：中邨誠
協力：東洋紡株式会社