ボケとツッコミはある? 意外と知らないアメリカの漫才の形式について 2ページ目
■アボット・アンド・コステロの漫才「ベースボール」
アボット・アンド・コステロの「ベースボール」(Who's on first?)というネタを紹介してみましょう。野球チームを作ろうというアボットの提案で野球を始めるのですが、監督役のアボットがこう言います。
アボット「ファーストはフー、セカンドはワット、サードはアイドントノーだ」
するとバットを持ったコステロはこう聞き返します。
コステロ「え、誰が誰だって? 名前を教えてくれよ」
アボット「ファーストがフー、セカンドがワット、サードがアイドントノーだって」
コステロ「だから、ファーストは誰だって?」
アボット「フー」
コステロ「ファーストだよ」
アボット「フー」
コステロ「こっちが聞いてるんだよ! ファーストの名前は何だ!(What's the name of the guy on the first?)」とキレます。
アボット「いや、ワットはセカンドだ」
コステロ「じゃあセカンドは誰(Who)なんだ?」
アボット「フーはファーストだよ(who is the first)」
コステロ「知らないよ(I don't know)」
アボット「アイドントノーはサードだってば」とこれを繰り返すという漫才です。
Who(誰)、What(何)、I don't know(知らない)という名前の選手たちという設定です。日本でいえば『中田ダイマル・ラケット』や『夢路いとし・喜味こいし』のような雰囲気です。非常にお馬鹿な内容ながら、上品なお笑いといえるでしょう。
現在ではこのように二人組の漫才はほとんど見られなくなってしまいました。
■今アメリカで人気のある芸人さん!
ちなみに、今アメリカでバリバリはやっているスタンドアップ・コメディアンは、
ケビン・ハート(Kevin Hart)
アジズ・アンサリ(Aziz Ansari)
クリス・デリア(Chris D'Elia)
などです。
一人でステージをしゃべり通す、大変にパワフルなお笑いなのですが、アボット・アンド・コステロなどの時代のお笑いと違い、今の若い人たちの間で人気のこれらの芸人さんの場合は、かなり過激で、お下品なネタが多いようです。テレビなら「ピー」が入りまくる4文字単語が頻発します。
しかし、アメリカのお笑いの伝統をしっかりと守っていて、徹底的な「客いじり」によって客席と一体になります。また、お客さんのノリがいいのも、アメリカならではです。
もう一つの特徴は、こちらもアメリカならではのものですが、アフリカ系やその他のマイノリティーの芸人による、逆差別ネタや自虐ネタです。
両親がインドからの移民というアジズ・アンサリは、あるライブの冒頭にこう言いました。「写真撮影は気が散るからお断りなんだけど、今、ジョークを言ってる途中のような格好をするから、写真を撮りたいヤツは今撮ってくれ」と。
そして、客席の男性を立たせて、自分に何か文句を言っているような格好をしろと命じます。男性も即座に応じてポーズを取ります。そしてこう言うのです。「ヤツは、白人のほうが優れてるんだぞ! と叫んだんだ」と。そして会場は大爆笑となります。
彼らのショーはYouTubeなどでも見られるので、興味のある方はぜひどうぞ!
(金だらい@dcp)