大卒でJリーガーになる選択肢も?サッカー選手の「プロになる前・現役中・引退後」を整理。#Z世代pickフレッシャーズ

2024/11/28

社会人ライフ

こんにちは!リリースピッカーの杏奈です。どんな業界にも、その後のキャリアはあるもの。特にスポーツをされている・されていた方々で今後のキャリアに悩んでいる方にぜひ読んでいただきたい書籍をご紹介します。

英治出版株式会社は、現役プロサッカー選手やこれからプロを目指す選手、その指導者・親に向けて、プロになる前/現役中/引退後のために考えるべき視点や選択肢を整理して提示する総合キャリアガイド『サッカーで、生きていけるか。──プロへの道筋と現実、ネクストキャリアの考え方』(阿部博一、小野ヒデコ著)を2024年11月17日に発売。

2023年に開幕30周年を迎えたJリーグ。開幕当初は1リーグ・10チームでしたが、現在では3リーグ・60チームにまで拡大し、より多くの選手がプロという夢を叶えられる時代になったと言える。

しかし、今日まで25年続く「プロABC契約」には「基本給の下限なし」のカテゴリーもあり、一生分を稼げるほどの成功を収める選手はひと握り。2024年9月24日に、Jリーグはプロサッカー選手のステータス向上などを目的として、2026シーズンからのプロABC契約の撤廃、基本給の下限・上限の引き上げをはじめとする選手契約制度の改定を発表したが、ほとんどの選手にとって引退後の「ネクストキャリア」を考えることは必須という

同書は、そのような「プロサッカーのリアルにいる選手」たちが、それぞれにとっての本当に納得のいくサッカー人生を歩めるように、地に足のついた情報を提供することを目指して作られた。

将来の計画に自信を持っている選手は33%(FIFPRO調べ)

FIFPRO(国際プロサッカー選手会)が発表する“MIND THE GAP 2021”の統計によれば、現役プレーヤーのうち、将来の計画に自信を持っているのはわずか33%。また、引退後のキャリアの準備をしない理由として多くの選手が挙げたのは「サッカーに集中したい」「現役後のキャリアを考えるにはまだ早すぎる」だった。

プロ前〜引退後まで、豊富な事例・データ・インタビューを駆使して情報整理

同書は、「目の前のサッカーに集中するためにこそ、未来について考える」必要性を訴え、「プロを目指す各ルート(高卒or大卒など)のメリット・デメリット」や、ネット検索では正確な数字が見えづらい「Jリーガーの平均引退年齢」「外国人選手を除いたJ1リーガーの平均年俸や年俸の最頻値」、「サッカー関連/サッカー以外、それぞれのネクストキャリアの選択肢とポイント」など、キャリア設計に必要な情報をプロ前〜引退後までカバーしている。

選手のキャリアに関する情報は「ひとりの体験談」が多いなか、本書が事例で扱ったり取材をした選手・元選手・サッカー関係者は約100名にのぼり、40点以上の図表も用いて各種データや参考文献から得た情報を整理している。

「高卒」か「大卒」か、どちらでプロを目指すべきか?

プロを目指す上での大きな分岐点である「高卒プロ」or「大卒プロ」。「少しでも早く、高卒でプロになったほうがいい」と考えられがちですが、大卒でJリーガーになる選手は近年増えてきている

高卒プロには、ギリギリの実力でなんとか若くしてプロになったものの出場機会を得られずに伸び悩む「18歳問題」や、引退後に「30代」「学歴高卒」「初企業勤め」の状態で就職活動をしなければならないリスクも。一方で、大卒であれば学位を取得でき、引退後のネクストキャリアにおいては有利かもしれないが、プロになって程なくしてピークパフォーマンスの年齢を迎え、プロとしてプレーできる期間は高卒選手よりも短くなる

同書は「高卒プロ」「大卒プロ」をはじめ、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを冷静に把握して、自分が望むパスウェイを選択することの重要性を説く。

「一攫千金」のイメージがあるプロサッカー選手。その現実は?

2023年のJ1選手の平均年俸は「3,755万円」というデータがあるが、ここには高額の年俸をもらう外国人選手(平均1億289万円)も含まれている。日本人選手だけで見た場合、平均年俸は「2,562万円」にまで下がるという。

さらに、「中央値」で見れば2,200万円にまで下がり、最も頻繁に出現する数値である「最頻値」は「460万円」というかなり現実的な数字になるという。これは最も条件の良い「プロA契約」における「基本給の下限」にあたる数値。つまり、多くの選手が最低基本給でプレーしているという現実が見えてくる。

※Jリーグは2026シーズンから「プロABC契約」を撤廃し、基本給の下限や上限の引き上げをはじめとした契約制度の改定を発表している。

女子サッカー界の現状も収録。出産後に復帰した選手や、男子サッカー界に進出した事例も。

同書で紹介されるネクストキャリアのヒントなどは、男女どちらの選手にも当てはまることが多いが、女子サッカーに特化した章も収録。「競技人口」「給与」「試合入場者数」など、さまざまな面において、女子サッカーには男子サッカーよりも厳しい現実があるという

そんななか、さまざまなロールモデルも存在し、同書では「出産後に現役復帰した選手」「男子のワールドカップやJリーグで活躍する審判員」も含め、数々の事例を紹介している。

カナダ男子代表との給与・待遇格差の是正を同国女子代表が訴えた際には、各国代表が連帯の意を示す紫のリストバンドをつけて大会に出場する運動が起き、日本の選手もこの活動に賛同。また、男女間の賞金格差をFIFPROが訴えた結果、2023年の女子ワールドカップの賞金は前大会の約4倍に増加。声を挙げながら待遇を変えてきた歴史にも迫る。

国際競争力を落とす日本のビジネス界──「元アスリート」は救世主になれるか?

WIPO(世界知的所有権機関)が発表するグローバルイノベーション指数において、日本は2007年の4位から、2012年には25位にまで転落。その後緩やかに順位を上げつつも、韓国や中国に追い抜かれている。経済産業省が策定した「未来人材ビジョン」においても、国際競争力の低下、世界最低水準の従業員エンゲージメント、海外志向人材の減少などの現状が危惧されている。

しかし近年の日本サッカー界は、ワールドカップでの強豪国への勝利、世界トップリーグで活躍する選手の増加など、国際競争力を上げている。だが、「自分はサッカーしかやってこなかった」とネクストキャリアに自信を持てない選手は多いという。

同書では、競技経験で培った力と「社会人基礎力」が多くの部分で重なることや、読み書きそろばんに代表される認知能力よりも社会的・経済的成功につながるとも言われる「非認知能力」がいかに競技生活の中で育まれるかを説き、元プロサッカー選手という異分子こそが日本のビジネスにイノベーションを起こせる可能性を探っている。

6名の特別取材記事も収録──元アスリートを採用する企業の担当者も

各章末には、現役/元プロ、女子選手、フットサル転身者、さらには元アスリートを採用する企業の担当者に深く取材をした特別記事も収録。生活のために別の仕事をしながらプレーした日々や、ひとつの夢を終わらせ別の道に進む決断の瞬間、思いもよらぬ縁から次の道がひらけたエピソードなど、プロサッカーのリアルを体感できる。

▼特別取材記事1 隅田航

Jリーグプロ選手から地域リーグのアマチュア選手へ 「サッカー選手としての価値は今が一番高い」

▼特別取材記事2 星野圭佑

スタートは「0円契約」、プロサッカー選手のお金とやりがいのリアル

▼特別取材記事3 奥井諒

プロ1年目から英語学習を継続 海外の大学院進学の先に見据えるネクストキャリアとは

▼特別取材記事4 筏井りさ

アスリート、そして人間としてどうありたいかを模索 「競技では食べていけない。だけど自分のためにフットサルをする」

▼特別取材記事5 吉良知夏

今も昔も変わらない「試合に来てください」の声かけ 「応援しよう」と思ってもらえるための心がけ

▼特別取材記事6 横田匡俊

「何を期待して採用したかを原点に」 アスリートの就職ミスマッチを減らす雇用側からの視点とは

元プロサッカー選手と、アスリートのキャリアを追ってきたライターによる共著

著者のひとりである阿部博一氏は、2008年からの3シーズンにわたってV・ファーレン長崎(当時九州リーグ→JFL、現在J2)でプレーをした元プロサッカー選手で、戦力外通告を受けた実体験を持つ。その後、アメリカの大学への留学→日本のシンクタンクへの就職という多様な道を歩み、現在はAFC(アジアサッカー連盟)審判部で部長を務めている。

もうひとりの著者である小野ヒデコ氏は、週刊誌AERA記者としての経験を持つライターで、アスリートのキャリア形成に興味を持ち、朝日新聞社が運営するウェブメディア「withnews」にて同テーマの連載を執筆。自身も自動車メーカーでの生産管理→アパレル会社での店舗マネジメント→ライターという多様なキャリアを経験している。

異なる分野への転職を複数回経験しているからこその想いや経験値をもとに、幅広い取材も加えて執筆された同書が、さまざまなかたちでサッカーにチャレンジする選手たちの力強いサポーターとなることを願っている。

■書籍概要

タイトル:サッカーで、生きていけるか。──プロへの道筋と現実、ネクストキャリアの考え方

著者:阿部博一、小野ヒデコ

発売日:2024年11月17日(日)

出版者:英治出版

定価:2,420円(10%税込)

ISBN:978-4-86276-340-2

※著者の意向により、印税の一部はサッカー界に寄与する活動・団体に寄付・活用される。

■目次

第1章 広がるプロサッカーの選択肢

第2章 どのルートからプロを目指すか

第3章 プロサッカー選手の理想と現実

第4章 引退後はどんなキャリアが広がっているか

第5章 女子サッカー界の実情とロールモデル

第6章 サッカーから得た力をどう活かすか

■著者略歴

阿部博一 Hirokazu Abe

アジアサッカー連盟(AFC)審判部部長(Head of Department, Referees Department)

1985年生まれ、東京都出身。道都大学卒業後、V・ファーレン長崎にサッカー選手として加入し、3シーズンプレー。最終年はプロ契約を結ぶ。2010年のシーズン終了後に戦力外通告を受ける。その後、米カリフォルニア大学サンディエゴ校に進学し、国際関係学修士を取得。2014 年に三菱総合研究所へ入社。スポーツおよび教育分野の調査案件に従事。2016年よりFIFA傘下で、アジアの国・地域のサッカーを統括するアジアサッカー連盟(AFC)にて勤務。クアラルンプール(マレーシア)在住。趣味は筋トレ。

小野ヒデコ Hideko Ono

ノンフィクションライター。1984年東京生まれ横浜育ち。同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカーで生産管理、アパレル会社で店舗マネジメントを経験後、ライターに転身。2016年から3年間、週刊誌AERA記者として活動。スポーツが好きで、自身がキャリアチェンジをした経験からアスリートのキャリア形成に興味を持ち、追っている。

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編集/杏奈(ガクラボメンバー)

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