ドイツから日本に来て常々感じているのが、「日本は努力の社会」だということ。日本では努力がとても大事にされていると様々な場面で感じます。
たとえば日本のマスコミは、ノーベル賞を受賞した人や、スポーツで成功した人を取り上げる時に、「その裏にある長年の努力」にスポットをあてることが多いですよね。
子どもの勉強に関しても、一生懸命勉強すれば、成績が上がる! 努力すれば受かる!と励ましたりします。「どんな子でも頑張ればできる!」という信念に近いものがあるのですね。
その点、筆者の出身国であるドイツはもっと残酷です。ドイツの小学校では4年生、つまり10歳で卒業なのですが、なんと4年生が終了したその時点で、将来大学へ行くために進学するか、職人になるための学校へ進むかを選ばなければなりません。わずか10歳で進路の選択を迫られるのです。そして、どの道に進めるかは「小学校4年生の時点での成績」がモノをいうので、これも日本の感覚からしたらかなり酷な気がします。
日本の場合、10歳ぐらいの子の成績があまりよくなくても、「これから頑張ればなんとかなるかも!」とまだ夢見ていられる段階なのではないでしょうか。10歳ぐらいであれば、まだまだ「これからの努力」でなんとかなるという考え方ですよね。
また日本は「努力」が重んじられますが、ドイツの場合は努力よりも「生まれ持った才能」が重視される傾向があります。たとえば数学が苦手な子どもがいたとして、日本であれば「これからがんばれば苦手を克服できるはず!」となります。でもドイツの場合は、極論をいうと、「数学に向いていないのかもしれない、職人コースに進んだほうが良いのでは」というような考え方がされがちです。日本のほうが「苦手でも上を目指して努力をする」ことが市民権を得ているのですね。
筆者は子どものころドイツ人と日本人の両方に囲まれて育ちましたが、確かに日本人の大人は「人間は『やるか、やらないか』で差が出るだけ。だから努力が大事」というようなことを言う人が多かったです。逆にドイツ人の大人は、苦手な分野に関しては早々と諦める人が多かった印象です。
20代や30代になっても「今から英語を頑張ればアメリカで女優さんになれる!」というような夢を持ち続けるのは非現実的なことかもしれませんが、「10歳でスパッと色んなことを諦めさせてしまう」よりはいいかもしれません。
スパッと諦めるか、それとも苦手な分野でも努力して夢を持ち続けるか......そんなところにも文化の違いがあるのですね。もちろん、人によるところも大きいのですけれど。みなさんは、どちら派ですか?
文●サンドラ・ヘフェリン
プロフィール/ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴17年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフといじめ問題」「バイリンガル教育について」など、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。
著書にベストセラーとなった「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社)のほか、「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著/KKベストセラーズ)、「日本人、ここがステキで、ここがちょっとヘン。」(片桐了との共著/大和出版)などがある。
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