「クリスマスまでには彼氏を!」と意気込む季節になりましたね。実際には季節を問わず、巷では婚活がロングランのブームになっている印象を受けます。婚活パーティーの開催をはじめ、電車の中でも結婚相談所等の広告を頻繁に見かけますし、結婚情報誌「ゼクシィ」の広告もよく見かけます。
やれ晩婚化が進んでいる、結婚しない人が増えている、と言われながらも、いえ、もしかしたら、だからこそ日本では婚活が流行っているのかもしれません。
親などから「いつ結婚するの?」とプレッシャーをかけられている人も少なくないでしょう。
でも同時に、面白いのは、日本はヨーロッパと比べると実は「お一人様天国」であること! 街には、カフェで一人、まったりとお茶をしている女性や、ランチを一人で楽しむ女性も多いですし、日本の「お一人様」は上手く風景に溶け込んでいる印象です。本人たちも「お一人様の時間」を楽しんでいるのですね。最近はホテルにも「お一人様プラン」があったりと全体的に「お一人様」にフレンドリーなプランが増えた印象があります。
これは、ドイツに住んでいた筆者からすると、ちょっとビックリすることなのです。もちろん、いい意味で。
ヨーロッパは、ずばり「カップル社会」です。勤め先のクリスマス会にもカップルで出席、そして街のカフェに入ればカップルばかり。旅行先はもちろん、街のレストランもバーも、スーパーマーケットでさえカップル率は非常に高いです。「カップル社会」というと聞こえが良いようですが、逆に言うと、これは「パートナーのいない人間」または「パートナーがいるけど一人で行動しちゃう人間」が変人に見られやすい社会であることを意味しています。意外とそのあたりは窮屈なのですね。
ヨーロッパのほうが自由そうなイメージがありますが、意外とそこは不自由なのです。たしかに「結婚」に関しては、ヨーロッパの親や世間は「いつ結婚するの?」といったことを独身の人たちにあまり聞きません。でも実は、結婚という「形」にこだわってはいないものの、ヨーロッパ人は「女性にパートナーがいること」を物凄く重要視する傾向にあります。ですので、パートナーがいない女性、またはパートナーがいるにもかかわらず、カフェで、一人でお茶をしていたり読書をしていたりというような女性の「一人行動」は、周りの目には奇異にうつるようです。もちろん、筆者も経験ありますが、「ヨーロッパのお一人様」は明らかに「日本のお一人様」よりも居心地が悪いのですね。
また、ヨーロッパは、場所にもよりますが、女性が一人でいると、変なナンパの被害に遭うことが少なくありません。その点、日本は草食系男子が多いせいか(?)女性が一人でお茶をしていても、ガラの悪いナンパに悩まされることはあまりないのではないでしょうか。そういう意味でも、日本の「お一人様」は非常に居心地よく過ごせると言えます。
さて、冒頭の通り、「カップルでなければいけない」「つねにカップルで行動しなければいけない」というある意味強迫観念に近いものに取り付かれた欧州人は、日本に来るとビックリしてしまいます。人前でひとりお茶をしている美人がいたりするのですから。そしてその姿がなんとも絵になっているのですから。
会社の催しや忘年会だって、日本はみんな一人で参加しています。ヨーロッパでは、アフター5も週末も、会社のクリスマス会(日本でいう忘年会のようなもの)への参加も全て「パートナーと一緒」の人が多く、また周りの人々もそれを求めがちですので、繰り返しになりますがヨーロッパのお一人様は日本のお一人様よりも肩身が狭いです。日本だったら、会社の忘年会に彼氏や配偶者を連れてくる人のほうが奇異の目で見られそうですが。こればかりは、日本と欧州諸国の「感覚の違い」なのかもしれませんね。
日本では「結婚したい」と口グセのように言っている人もいますが、実際には一人で楽しめていたり、彼氏や旦那様がいても、一人でお出かけする人も多く、それが市民権を得ているところがあります。そのような雰囲気を見て日本は自由だなと思います。そういう意味でまさにお一人様天国ですね。
文:サンドラ・ヘフェリン
■サンドラ・ヘフェリン プロフィール
ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴17年。
日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフといじめ問題」「バイリンガル教育について」など、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書にベストセラーとなった「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社)のほか、「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著/KKベストセラーズ)などがある。12月8日に「日本人、ここがステキで、ここがちょっとヘン。」(大和出版)を発売
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