エントリーする企業、あなたの基準は本当に正しい?

松本利明

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6月1日の正式な採用選考開始を前に、「どの企業がいいか」「どんな職種や仕事に魅力を感じるか」など、企業研究やエントリーに向けた活動が活発になる時期です。同じ働くなら、「社会の役に立つ仕事がしたい」「大企業で歯車になるより、スタートアップで自分らしく活躍し、成長したい」など、就活生それぞれの価値観や思いも、日に日に具体化していくでしょう。

一方で、情報収集をすればするほど、「自分は何をしたいのか」「何に向いているのか」がわからなくなり、不安が高まるタイミングでもあります。ここに、大きな落とし穴があります。

あなたの企業選びは偏っているかもしれない

あなたが自分の意志で考えている企業選びの基準やキャリアの方向性は、実はこれまで触れてきた情報や経験の影響を大きく受けています。いわば、子どもの頃から今までインプットされ続けた情報から形づくられてきたものです。

たとえば、父親が大企業で苦労している姿を見て「自分は違う働き方をしたい」と感じた人もいるかもしれません。あるいは、ネット動画でスタートアップの社長を見て、「かっこいい」「自由そう」「稼げそう」と魅力を感じた人もいるでしょう。こうした育ってきた環境や、自分なりに取捨選択してきた情報によって、キャリア観は少しずつ形づくられていきます。

ただし、その情報をどう受け取るかによって、見え方は大きく変わります。同じ事実でも、どんなフィルターを通して見るかによって解釈は変わってくるからです。情報収集をすればするほど、自分では客観的に判断しているつもりでも、知らず知らずのうちに偏った見方になってしまうこともあります。

就活だからこそ得られる情報がある

では、どうすればいいのでしょうか。

就活には期限があり、時間も限られています。その一方で、就活中だからこそ得られる情報や経験があります。それは、新卒採用を行っている企業の説明会やイベントに参加し、多くの企業を直接体感できることです。就活中であれば、誰もが憧れる大企業でもスタートアップでも、自分で限界を作らなければ、時間が許す限り多くの企業の情報を取りにいくことができます。

「スタートアップがいい」と思っていたけれど、大企業の説明会に参加し、先輩社員との対話や現場見学を通じて印象が変わった——そんなことも珍しくありません。

就職した後は、就活中のように自由にさまざまな企業を訪問し、実情や雰囲気まで体感する機会はほとんどなくなります。だからこそ、今がチャンスです。情報を増やし、選択肢を広げたうえで絞り込むことで、偏った見方から離れ、自分に合った企業や職種、仕事、キャリアが見えてきます。

まずは、No.1企業の世界を知る

そうは言っても、新卒採用をしている企業をすべて訪問するのは現実的ではありません。だからこそ、自分なりの判断基準を持つことが大切です。その一つの考え方が、「No.1企業」を知ることです。

同じ業界であっても、No.1企業とそれ以外の企業では、見えている景色や考え方、事業の進め方が異なることがあります。そうした違いは、文章やネット上の情報だけではつかみにくいものです。まずはNo.1企業の説明会や企業訪問に参加し、その実態に触れてみるのが良いでしょう。

No.1といっても、切り口はさまざまです。売上や組織規模で業界トップの企業もあれば、特定技術でNo.1の企業、世界初・日本初のサービスや事業を生み出した企業もあります。こうした視点を持って、大企業からスタートアップまで幅広く見ていくことで、自分なりの比較軸が生まれます。No.1企業を知ったうえで他の企業を見ると、違いや特徴も見えやすくなるでしょう。

可能であれば、大企業・スタートアップを問わず、No.1企業をファーストキャリアの選択肢として考えてみるのも一つです。No.1企業での経験は、その後のキャリアの選択肢を広げることにもつながります。

大企業以外の知られざるNo.1企業にも目を向ける

No.1企業といっても、すべての企業がメディアに取り上げられているとは限りません。知られざるNo.1企業も数多く存在します。それを知る方法は、大きく3つあります。

一つは、業界専門誌を見ることです。特定技術でNo.1の企業や、業界内のランキングなどが掲載されていることがあります。メディアやネットには出ていない情報に触れられるため、他の就活生との差別化にもつながるでしょう。

もう一つは、実際にその業界を知る人に話を聞くことです。研究室やゼミのOB・OGは、その業界でしか知られていない企業を知っていることがあります。大学のキャリアカウンセラーも、大学に届く求人の中から隠れた優良企業を把握している場合があります。

新卒紹介エージェントに相談してみるのも一つの方法です。幅広い採用市場の情報を持つエージェントであれば、大学に届く求人やゼミ・研究室の枠を超えて、メディアには出てこない企業の情報に触れられることもあります。知名度のある企業だけに目を向けるのではなく、情報の集め方を少し変えることで、企業選びの選択肢は大きく広がるはずです。

いずれにしても、「就職する」ということは内定が出たら終わりではありません。そこから社会人としてのキャリアがスタートします。転職が当たり前になりつつある時代だからこそ、就活中に多くの企業を見て、就活時にしか得られない情報や経験を積んでおくことが、その後のキャリアにも活きてきます。

入社するのは1社ですが、企業説明会や訪問、イベント参加、エントリーできる数に制限はありません。もちろん、お遊び感覚で臨むのはNGですが、1社ずつ「この会社から内定をもらう」という意識で向き合うことが、結果として就活力を高め、本命企業にたどり着く確度を高めることにもつながるでしょう。


松本利明

松本利明

外資系大手のコンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパルを得て現職。世界を代表する外資系や日系の大手企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人のリストラと6,500名以上のリーダー選抜・育成に従事した「人の『目利き』」。英国BBC、TBS、日経、AERA等メディア実績多数。

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