「自分をPR」すると失敗する!? 書類選考や面接を通過する自己PRのコツ
自己PRは直球で伝えるとデッドボールになる
自己分析を通し、自分の強みやPRに繋がりそうなエピソードを可視化できたとしても、それをそのまま自己PRにしてしまうと、書類選考の段階で大半は不採用になってしまうでしょう。これは、1,000名を超える人事の方々との対話の中で掴んだ実感です。
だからと言って、強みやエピソードを捏造すればいいということではありません。捏造は一発で見抜かれます。前回の連載で解説したように、「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえることが選考を通過する要(かなめ)であり、そこには勘所や型があります。
人柄や経験語りでは、自社で働くイメージがつかめない
書類選考を通過できない自己PRにもパターンがあります。
一つは、「頑張ってきた話」しか書いていないことです。
●大学時代の部活やサークル活動を通して根性を身に着けた(根性、責任感)
●アルバイトを通してさまざまな背景の人と働いた(多様性、チームワーク)
●学業を通じ、論理的に分析、整理する力が身に付いた(論理的思考、分析力)等
もう一つは、「人柄を解説する話」しか書いていないことです。
●部活やサークルのリーダーとして慕われていた(リーダーシップ面)
●バイトリーダーとして、どんなクレームでも笑顔で乗り切っていた(対人影響・ストレス耐性面)
●ゼミの共同研究で、責任感をもって最後までやり抜いた(達成志向面)等
一見、良さそうに思えるものの、学生時代に経験できることはあまり種類が多くないため、自己PRの内容も似たり寄ったりになっているかもしれません。しかし、これでは人事の目に「それが自社や仕事にどう役立つのか」が見えにくく、入社後にどう活躍してくれるかが判断できません。
就職がいくら売り手市場とはいえ、人気企業には多くの応募が集中します。人事は、応募者一人ひとりの自己PRを解像度高く読み込み、自社との相性を丁寧に想像する余裕はありません。実情として、一緒に働くイメージが湧かない応募書類は、不採用にせざるを得ないのです。
言葉の解像度をあげ「一緒に働く」をイメージさせる
書類選考を通過するためのコツは、「強みと仕事を直接結びつけて伝える」ことです。そのためには、伝える内容の解像度を上げることが重要になります。
例を挙げます。人柄的な強みで伝えにくい「真面目さ」を効果的にPRする観点で解説します。
1 その企業の職種や仕事に求められる「真面目さ」を可視化する
企業や職種に応じて、求められる「真面目さ」の中身は意外と違うものです。
●製造:ルールや手順・手続きを順守し、ミスなく業務を遂行し続ける「真面目さ」
●営業:顧客の悩みや目的に対し、相手以上の当事者意識を持ち続け、1ミリでも良い効果を生み出すことを目指す「真面目さ」
●IT:細部までミスなく品質を追求する「真面目さ」
●経理:ミスなくきっちり作業を完遂できる「真面目さ」等
エントリーする企業の業種や職種を想定し、相手の求める「真面目さ」の文脈に沿ってPRする内容を組み立てれば、「自社で活躍するイメージ」を書類選考の段階から感じ取ってもらえるようになり、選考通過に繋がりやすくなります。
2 「真面目さ」がどのような評価や効果に繋がったのかを説明する
「真面目さ」は姿勢や人柄を表す言葉のため、主観的な表現になりがちです。「大きい」という言葉も人によって解釈が異なりますが、「東京ドーム3つ分」のように比較対象があると理解しやすくなります。
真面目さについても、どんな評価や効果に繋がったのかをエピソードとして加えることが重要です。人事は「その真面目さが仕事にどう活かせるのか」「自社でどのような成果を出せるのか」という観点で評価を行うからです。
例えば
「アルバイト先の出版社でSNS担当になり、フォロワーを増やしました」
と示すよりも、
「アルバイト先の出版社でSNS担当になった際、新刊のPRだけでなく、出版社や編集者、著者にとって最も意味のある情報発信とは何かを考え、編集者や著者にインタビューを行いました。3年間、週3回、継続して投稿を続けた結果、SNSのフォロワーは1,000人から50万人に増えました」
など、具体的な工夫や数字を盛り込むことで、仕事での活躍イメージが伝わりやすくなります。
3 強みの裏側にある「弱み」もカバーする
チャレンジ精神が強みの人は、細かい作業が苦手な場合があるように、強みは使い方によっては弱みにもなります。これは、強みの過剰使用が弱みになるためです。
●真面目(強み)⇔柔軟性がない(弱み)
●真面目(強み)⇔正論を振りかざし、周囲と衝突する(弱み)等
強みにインパクトを持たせて伝えると、ポジティブな印象を与える一方で、「逆にここが心配」と思われることもあります。
対策としては、強みを伝えた後に、
「真面目でルールを徹底する一方で、相手の立場や考えにあわせて伝え方を工夫することで、反対意見の人にも納得してもらえた」
など、弱みを補っていることが伝わるエピソードを加えると良いでしょう。
AI文章の隙間をつくことで唯一無二の自己PRに
これまで挙げてきたノウハウをプロンプトにして、AIに自己PRを書いてもらおうと考えることは自然ですが、ここに落とし穴があります。
現時点のAIで作成した自己PRは、人事に見透かされる可能性が高いと言われています。理由はシンプルで、多くの人が似たようなプロンプトを使うため、内容が似通ってしまうからです。エントリーシートの数が多い企業では、AIによるチェックを行うケースもあり、人事はAI特有の文章の傾向も感覚的に把握しています。
コツは、AIで作成した自己PR文章をそのまま使うのではなく、「隙間をつく」こと。AIの表現は、多くの人が使う前提と捉え、自分自身の経験や言葉で補うことで、他の応募者との差別化につながります。
とはいえ、これを一人で行うのは簡単ではありません。新卒紹介エージェントなど、企業側の情報と自己PR作成のノウハウの両方を持つ第三者のサポートを活用するのも一つの方法です。今後、企業や新卒者の利用増加が見込まれるサービスであり、ライバルがまだ手に入れていない観点からの具体的なアドバイスが受けられるかもしれません。
いずれにしても、企業は「すごい人」よりも「一緒に働きたいと思える人」に内定を出します。自己分析で強みを深掘りするだけでなく、「一緒に働きたい」と思ってもらうための橋渡しに関する知見を持つ組織や人を味方につけることも、自己PRを成功させる戦略の一つと言えるでしょう。



















