「現代の“食”の課題を解決したい」日清食品の『完全メシ』担当者のお仕事をのぞいてみた【お仕事図鑑】

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勉強にサークル活動に、アルバイトに就職活動……毎日忙しい学生さんが多いと思います。ついつい、偏った食事などで、栄養面が疎かになっていませんか?

そんな皆さんにおすすめしたいのが、2022年5月に発売された日清食品の「完全メシ」。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で設定された33種類の栄養素がバランスよく摂れて、しかもおいしいと大ヒットしている商品なんです。

今回はそんな「完全メシ」の開発を担当した、日清食品マーケティング部の清水文恵さんにインタビュー。商品誕生の背景や、開発時に苦労したこと、マーケティング部の仕事などについて、お話を伺いました!

プロフィール

PROFILE

清水 文恵

2005年日清食品に研究職として入社。工場での研修を経て、食品開発部にて商品開発に従事。その後、マーケティング部に異動。カップスープ、レンジ調理タイプ食品、ダイエット食品、特定保健用食品、機能性表示食品などを担当。ダイレクトマーケティング課にてオンラインストアの運営も経験。2021年からビヨンドフード事業部に異動し、「完全メシ」を担当。プライベートでは7歳、5歳、3歳の3人の子育てに奮闘中。


研究職→マーケティング部へ。「完全メシ」の開発に至るまでのキャリア

――これまでの仕事について教えてください。

私は大学院を修了後、新卒で日清食品株式会社に研究職として入社しました。一年間の工場研修を経て、開発研究所に配属され、カップ麺に入っている具材の開発や改良を担当していました。

その後、マーケティング部へ異動し、主にカップスープやレンジ調理タイプなどの商品開発を担当しました。マーケティング部に在籍中に三回、産休・育休を取得。三人目を産んで復帰後に、新規事業を担当する部門に配属され、2021年からはこの「ビヨンドフード事業部」でマーケティングを担当。2022年5月に発売した「完全メシ」の開発に携わっています。

――キャリアのスタートは研究職だったのですね。マーケティング部への異動はどのような背景があったのでしょうか?

もともと「いつかマーケティングをやりたい」という希望を持っていたんです。マーケティング部にはさまざまな人が集まっていて、研究所出身者も沢山います。研究所を経験しているメンバーは、商品がどのように作られているのか細かいところまで知っているので、マーケティング戦略を立てる上でも強みになると思っていました。

ですので、マーケティング部に異動できることは嬉しかったんですが、辞令が出たのは研究所で働いて5年目が終わった時期で、「もっとここでチャレンジしたい」と思っていた矢先のことだったので、少し戸惑いがありましたね(笑)。

マーケティング部は商品の開発から宣伝までを担う部署で、さまざまな人たちとコミュニケーションをとる必要があり、「私はこの部署で本当にやっていけるのか」と最初は不安でした。

――不安な気持ちはどのように乗り越えていきましたか?

研究所で身につけた知識はあるものの、マーケティングに関しては分からないことだらけ。恥ずかしがらずに周りの人に積極的に質問をするようにしていました。周囲には教えてくれる人が大勢いるので、一人で抱え込まずに、社内の知り合いをどんどん増やしていこうという気持ちで、自分から行動することを心がけましたね。

社内ネットワークを広げていったことで、産休でブランクがあっても周りの人たちに相談をすることができ、産後もスムーズに復帰することができました。自分から行動する意識を持っていて良かったと感じています。

「現代の“食”の課題を解決したかった」「完全メシ」が生まれたきっかけとは?

――「完全メシ」誕生までの経緯を教えてください。

きっかけは大きく二つあります。まずは、現代が「飽食」の時代になったことです。おいしいものが手軽に食べられるようになったことで、ついつい食べすぎてカロリーオーバーになってしまうことが多いと思います。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大によってリモートワークが増え、運動不足からカロリーオーバーになっている方も多いと思います。

もう一つの課題は「栄養失調」です。例えば女性の場合、体型を気にするあまり、カロリー摂取を抑えてしまう人が多く、体重は減ったけれど体の中で栄養が足りていない“隠れ栄養失調”が増えています。ほかにも、食生活の偏りが原因となって、カロリーは足りているものの、一部の栄養素が不足してしまう“新型栄養失調”も問題になっています。 このような現代ならではの食の課題を解決したいという思いから誕生したのが「完全メシ」です。

――「完全メシ」には日清食品のフードテクノロジーが凝縮されていると思いますが、「完全メシ」にはどのような技術が使われているのでしょうか?

日清食品がこれまでインスタントラーメンなどで培ってきた技術を応用しています。例えば、塩が少なくてもおいしく感じられるように、世界中から約170種類の塩を集めて、どのような素材を組み合わせれば「食塩の量を抑えつつ、しっかりとした塩味を感じられるのか」を徹底的に研究しました。

また、食べ物にビタミンやミネラルなどをそのまま入れると、どうしても苦味やえぐみが出てしまいます。そこで、さまざまな加工技術やうまみ素材を駆使することで、栄養素の苦みやえぐみを感じることなく、おいしく食べられるようにしました。

――栄養素をバランスよく摂取できることと、おいしさをキープするのはとても難しいことだと感じます。開発中、特に大変だったことを教えてください。

たくさんあるのですが、一つ目は厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で設定された栄養素のバランスです。栄養素によっては下限値だけでなく、上限値が決まっているものもあり、ただ入れればいいというわけではありません。おいしさを保ちつつ、栄養素の量が適切な範囲に収まるよう、試作しては分析、調整……と、地道な作業を200回以上も繰り返した商品もあり、本当に大変でした……!

また、健康をコンセプトにする商品は、さまざまな法律やルールに則って情報を伝えなければなりません。そのため、パッケージやCMに使うことができる言葉やPRの方法を慎重に検討していく作業にも苦労しました。

――栄養を意識した食品と聞くと、やさしい味付けのものをイメージしがちですが、「完全メシ」のカレーメシや油そばには驚かされました!あえて“ジャンクなメニュー”を選ばれたのでしょうか?

健康を気にしていても、日々の食事で栄養バランスに気を配るのは大変ですし、食べたいものを我慢していると長続きしません。普段の行動を変えることなく、食を楽しんでもらいたいという思いがあったため、あえてジャンクなメニューを選びました。

一般的に栄養バランスを意識した食品は、味付けが物足りなく感じるものが多いですが、「完全メシ」は濃厚なしっかりとした味わいで、「これで栄養素がバランスよく摂れるの!?」とギャップを感じてもらえるところがユニークですし、日清食品らしいと感じています。「完全メシ」で無理や我慢をせずに健康を目指していただきたいと思います。

自分の作りたいものを世の中に出せる。マーケティングの醍醐味

――この仕事の面白さを教えてください。

自分が企画した商品を、実際に世の中に出せることがマーケティングの醍醐味だと思います。店頭に並んだ商品を見るだけでも嬉しいですし、実際に商品を手にとったお客様から感想が聞けるなど、反響や反応を直接感じられるところも仕事へのやりがいにつながっています。

――研究所時代の経験がマーケティング部で活きていると感じることはありますか?

たくさんあります!1年間の工場研修や4年間の研究所勤務の経験があったからこそ、商品がどのように開発、生産されているのかを理解することができました。こうしたことがマーケティング部で商品の企画を立てるときに活きていますし、商品化への最短ルートを見つけやすくなったのではないかと感じています。

また、昔の仲間が今も研究所で働いているので、気軽に相談することができますし、課題解決のアドバイスをもらうこともよくあります。研究所出身ならではの強みはたくさんありますね。

――マーケティング部で求められるスキルはありますか?

どんなことも無駄にならないと思っているので、「このスキルが必要」というのは特別ありません。社内の研修制度も充実しているので、学生時代にマーケティングを学んでいなくても大丈夫ですよ。ただ、やはり食品会社なので食べることが好きな人は多いですね。おいしいものが好きで、食に興味があるといいと思います。

三人の子育てに奮闘中!「仕事が楽しい」が忙しさを乗り切れる原動力

――日清食品に入社を決めたきっかけを教えてください。

私は学生時代、生物の研究をしていました。研究自体は好きだったものの、研究で成果をあげるためには長いスパンが必要です。すぐに結果が出ないことに対して「将来はもう少し早く結果を出せて、形に残る仕事がしたい」と思うようになったんです。

食品業界に限らず、医療品会社や化粧品会社の面接も受けたのですが、素のままの自分で話ができたのが日清食品でした。そのまま内定をもらうことができたので「素の自分で勝負をして受かったのなら、相性が良いに決まってる」と思い、入社を決めました。

――プライベートでは三人のお子さんを育てている清水さん。毎日忙しい中、日々の原動力はどこからきているのでしょうか?

やはり純粋に「仕事が好きで、楽しくて、充実しているから」ですね。今後も「完全メシ」を世の中に定着させるために、さまざまなカテゴリーへと商品展開を拡大して、いろいろなシーンで利用してもらえるようにしていきたいと考えています。

――休日の過ごし方で、仕事に活かされていることはありますか?

普段の生活の中で「こんな商品があったらいいな」「これは使いにくい」などと感じる場面が多々あります。自分自身が一人の生活者として何を思い、どう感じるのか。そういった感覚はとても大切ですし、商品開発にも活かしています。

商品を開発する側にとっての“当たり前”にとらわれず、「一般のお客様はここまで細かいことを考えないよね」「この説明は専門的すぎて難しすぎるかも」といった、普通の感覚を忘れないことを常に意識しています。

――ありがとうございます!最後に学生の皆さんへメッセージをお願いします。

就職活動は思うようにいかないことがたくさんありますし、落ち込んだり悩んだりすると思いますが、その経験すべてが将来に役立つはずです。一日一日を悔いなく、何事にも全力で取り組んでみてください。


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文:田中青紗
編集:学生の窓口編集部
取材協力:日清食品株式会社

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活字中毒の中年編集者です。暇さえあれば本やウェブコンテンツを読み漁っています。 文章や言葉で読者を楽しませたり、悩みに寄り添い勇気づけられるよう、日々悪戦苦闘しながら言葉を紡いでいます。

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