時間は「早く過ぎてほしいとき」には、なぜゆっくり過ぎるの? #もやもや解決ゼミ

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人間の感じる「時間の流れる早さ」には違いがあります。退屈な授業を受けている時間は5分でも非常に長く感じたりしますが、友達とライブ会場に出掛け、楽しんでいるときは5分などあっという間に過ぎてしまいますよね。
では、なぜ時間経過は、「早く過ぎてほしいとき」にはゆっくりに感じるのでしょうか?

心理学者であり、精神科医としても活躍されている香山リカ先生に回答いただきました。

「意識すると長くなる」のが時間の法則

授業の90分は長いのに、好きな映画を見たり友達とおしゃべりをしたりしていると、90分なんてあっという間。そんな経験は誰にでもあると思います。

これには、心理学でいう「注意」という機能が大いに関係しています。

この「注意」は、道路を渡る人に「危ない! 車によく注意して」と言うときの「注意」とだいたい同じと考えてもらえればよいと思います。

つまり、「他の情報には気を取られずに、チョイスした情報(この場合は、道を行き交う自動車)にだけ意識を向ける」ということ、それが「注意」なのです。

そして、この注意が授業など目の前のことにだけ向かず、「あと何分かな?」としょっちゅう時間の方に向くと、それが意識されて時間が長く感じられるのです。

「意識すると長くなる」。これが時間の法則です。

例えば、好きな映画を見ているときなどは「始まって何分たったかな」と考えることは、まずないのではないでしょうか。

でも、友達に誘われて一緒に見に行った映画がつまらないと、「これって何分の映画だっけ。確か110分だったような。今50分はたったかな?」などと時間に注意が向き、我慢できなくなってスマホでチェックしてしまい、友達から「やめなよ」と言われるようなこともあるかもしれません。

「注意」は限られた「注意資源」の割り当てで行われる

では、注意があちこちに分割されることなく、映画なら映画、授業なら授業に集中すればそれでよいか、というとそうとも言い切れないのです。

注意は「注意資源」という決まった容量の情報処理能力を使って行われます。

その注意資源があまりにも分散すると「退屈だな」となるわけですが、逆に一カ所に集中し過ぎると、容量オーバーになってしまうことがあるのです。

そうなると、強い疲労感に襲われたり、それ以上、注意が続かなくなってミスを連発したりするようになります。

学生のみなさんの中にも「いやー、授業に集中し過ぎてしまってフラフラだよ」というご経験はないでしょうか?実は大学教員でもあるわたしも、しばしばこれにやられてしまうことがあります。

今年は新型コロナウイルスの影響でオンライン授業が多くなっているのですが、PCのカメラに向かってひたすら語り続けるというのは大変なのです。

これは、リアルな教室では「学生の様子」や「窓から見える外の風景」にも注意を分割しつつ進められるのに、オンラインでは注意資源を「カメラに向かって語る」ということだけに集中させなければならないからだと思われます。

「あまり力を入れ過ぎないようにしよう」と思ってはいても、「オンラインでもよい授業をしなければ」と身構えて、つい過剰に集中して話してしまう。

だから、1コマ終わった後はリアルな授業の何倍も疲れを感じることになるのです。

香山先生おすすめの「授業の長さを感じずに済む方法」

では、時計を意識しなければ授業は短いのかというと、それも実際にはうまくいきません。

頭の中で「今何時かな。もう半分は終わったかな」と思うだけで注意は時間に向かうので、「意識すると長くなる」という法則が発動されてしまいます。

わたしのおすすめの「授業の長さを感じずに済む方法」は、とにかく先生の話、声、板書や資料の文字などに、頑張って意識を集中させてみることです。

頑張ってノートを取るのもよいでしょう。それほど興味のない話でも、そこに集中することで早く時間が流れます。

3分に1回、時計を見ては「あーまだこれしかたってない」とため息をつくのは、完全に逆効果でしかありません。

時計を意識せず、ちょっと無理してでもとにかく授業に集中してみる。意外かもしれませんが、これが授業時間を短く感じるコツです。ぜひやってみてくださいね。

時間の進み方は「人間の注意の向け方」で長くなったり短くなったりするのですね。

友達が遅刻したのを待っているときなど、時計を何度も見てしまいますが、このように時間に注意を集中すると「待ち時間はさらに長く感じる」というわけです。

大学生読者の皆さんは、香山先生おすすめの「授業の長さを感じずに済む方法」をぜひ試してみてください。授業に集中しますから成績にもいい影響があるかもしれませんよ。

イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp

教えてくれた先生

香山リカ Profile

精神科医・立教大学現代心理学部映像身体学科教授。
1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。
豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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