【連載】『あの人の学生時代。』#14:伊藤淳史「学生時代は取り戻せない」 2ページ目
「これはヤバい!」と思った『電車男』『西遊記』の時期
――お仕事と大学の両立は大変だったんじゃないですか?
それがですね、なんか……今もう1度同じことをやれって言われたら「ちょっと無理かな」って思うんですけど、けっこういい時間でしたね。充実していたというか。僕の友達もそうでしたけど、みんな大学行きながらバイトとかするじゃないですか。それとそんなに変わらないというか……。
もちろん僕はバイトではないし、お仕事優先だったんで、空いている時間に学校の勉強とかレポートとかやってたんですけど、スイッチのオンオフというか、メリハリがきいていましたね。
――時間的には大丈夫だったんですね。
でも、出席できなかった授業のノートを友達に見せてもらったりはよくしていました。余裕で単位を取れていたわけでもなく、4年生になってもけっこう残っていたんです。第二外国語で取っていた中国語を落とし続けて……。それでいよいよ単位がヤバいってなって、事務所とも話をしていた矢先、4年の前期試験のときに入ったお仕事が(ドラマ)『電車男』だったんですよ。
――大丈夫だったんですか?
いえ、それで1個も試験を受けられなくて。1個もですよ? で、「あれ?」ってなって。もし4年で卒業できなかったら大学やめるつもりだったんです。5年6年7年とやり続けられる性格じゃないと思っていたんで。
そのあと単位を数えてみたら、1個も落とせない状況だったんですね。で、「これはヤバい」と思って、『電車男』をやってるときに、事務所に「もう1個も単位を落とせないんで、後期は学業に専念させてください」って相談していたら今度は『西遊記』の出演が決まって。しかも『電車男』がクランクアップした翌週にクランクインっていう。
――ダメじゃないですか!
このままだと大学卒業できないと思って「試験は受けさせてください。それと、出席がマストの授業にも出させてください」とお願いして、そこはなんとか出席させてもらいました。だから本当に『西遊記』をやっていたときはもう、控え室でずーっとレポートをやって、ずーっとテスト勉強していましたね。4カ月くらいずっとそんな日々でした。
――結局単位は落とさずに?
1個も落とさずに卒業できたんですよ、奇跡的に。
――よかったですね〜。では、そんな大学生活で一番夢中になっていたことはなんですか?
いつも一緒にいた3人の友達との時間は大切にしてましたね。みんなで飲みに行ったり、どこか旅行に行ったり。車で大阪まで行って、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行ったりとか(笑)。
大人になったらみんな忙しいから、そんな時間もないだろうというのはなんとなくわかっていたし、勉強はもちろん大事だけど、思い出も大事だろうっていうのもどっかにあったんですよね。だから、できるだけそういう楽しい思い出に残る時間を作ろうというのは意識していました。
――大学ではできるだけ仕事と関係のないことをしたかったそうですが、そんな中でも、大学での経験が今の仕事に生きているなって思うことはありますか?
今振り返って思うのは、大学でこれを学んだからとかではなく、時間がない中でこなすというか、やり遂げるというか……。それは今でも自信はあるんですよ。
時間がない中でセリフを覚えなきゃいけないときも、今でも「うわ、きついな」って思うこともいっぱいあります。とにかくやらなきゃいけないってときに、いっつも「ヤバいヤバいヤバい」って思うんですけど、「オレは大学を卒業できたんだ」っていう自信が常に出てくるんですよね。「あの状況で乗り越えられたんだから大丈夫」って思えるのは、大学での経験が生きているということだと思います。