就職活動時は、大学での専攻を生かせる建築業界、また他に興味のあった印刷業界を中心に活動を進めていました。しかし思うように選考が進まなかった焦りから農協を受けました。最終的には希望していた印刷業界からも1社内定をいただくことができたのですが、いざ決断するとなると躊躇してしまい農協を選んでしまいました。印刷業界の多忙な体質や、その企業のカラーが自分には合わないのではないかと感じたからです。一方農協は安定性や体質などがどちらかといえばのんびりとした自分に合っているのではないかと感じました。
しかし一度きりの人生なのに、やりたい仕事を選択しなかった自分に凄く後悔しています。その後も自分の決断に納得がいかず、就職活動を続けていたのですが、このような時期ですので終えなければと考えています。本当に行きたい業界ならば、内定をキープしたまま他を探すというのは不適切ですので自分の意思が弱いものだったのかもしれません。
自分なりに考え、この内定は次へのキャリアアップにしよう、いつか本当にやりたいと思える仕事が見つかった時に踏み出せるよう、まずは縁があったこの内定先で精一杯頑張ってみようと最近ではこう考えるようにはなりました。しかし、このような消極的な選択で入社してしまって良いのか、興味のなかった仕事にやりがいを見出すことができるのか、他の道に進みたくなった時にそう簡単に方向転換できるのだろうかと不安な気持ちが残ります。現時点で他の道を考えてしまうくらいなら、今内定を辞退してでも行きたい企業を見つけるべきではないのかとも考えてしまいます。
どうすればよいのか分からなくなり相談させていただきました。よろしくお願いいたします。
★楢木さんからのアドバイス
悩み迷っている様子が手に取るようにわかります。しかしあなたにピッタリの回答をすることはできません。なぜなら、この迷いの背景には、あなたの価値観があり、それは私のものと違うかも知れないからです。
以下は、私だったらどうするかという話です。参考になれば幸いですが、そうでなければ私の話にこだわらないでください。
悩みは、無知と極限欲求が生むものだ、と私は考えています。若い人は、自分の専門を生かせる仕事、自分に合った仕事があると考えます。確かに専門や志向性は仕事を選ぶキッカケになりますが、それにこだわるのは仕事というものを本当に知らないからです。仕事は自分を表現するメディアのようなもので、メディアの善し悪しも大事ですが、もっとも大事なのは表現内容なのです。そして表現内容が豊かになると、メディアそのものを変える力を持つようになるものです。極論すれば、働く場所なんてどこでもいいのです。働く場所が大きくて整っていればその土台を生かせますし、働く場所が小さくて未整備ならばその土台を築き上げる楽しみがあります。どのような土台を選ぶかより、どんな土台でもその土台を生かし切ることの方が仕事の醍醐味だと、私は考えています。
もうひとつ、悩みの素の極大欲求とは、いちばん良い条件をギリギリまで探し、それを渡り歩こうとする欲求です。これを始めると、いつも「もっと良いこと、良い条件があるに違いない」と考え、決断したあとも「もっと良い道があったはずだ」と悔やむことになります。またこの欲求は、与えられることに依存しがちです。
与えられる状況(就職先、職務、職場)はほどほどで良い、というのが私の考えです。与えられることに期待しすぎると、そのことに自分を支配されてしまうからです。
与えられたものがほどほどでも、その代わりに、仕事の納得をギリギリまで追求します。これは自分が支配できる領域だからです。「仕事の納得をギリギリまで追求」することが仕事の醍醐味であってそれがどんな仕事かは比較的小さな問題だ、と私は思っています。
■回答:楢木 望(ならき のぞむ)
1948年東京生まれ、千葉大学教育学部卒業。1971年リクルート入社。「月刊就職ジャーナル」編集長など歴任。1985年にライフマネジメント研究所設立。採用・教育・就職コンサルタント。ニューズレター「採用と人材の手帖」発行人。「内定者のための学習メールマガジン」開発。メールマガジン「キャリア・キッチン」発行。http://www.lmi-tokyo.com
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