「渡りに船」とは? 意味やビジネスでの使い方、類語を解説【例文つき】

2024/05/27

ビジネス用語

社会人ライフ

スキルアップ

雨が降ってきて「しまった! 傘を持ってきていない。買わなくちゃ」という時にちょうど目の前に傘が売っていた。「時間がない、タクシーを拾おう」と振り返ったらちょうどタクシーが走ってきた。そんなことはありませんか?

何かをしようという時、都合の良い物事に出会うことを「渡りに船」と言います。一体どんな由来があるのでしょうか。詳しい使い方や例文などを紹介します。

▼こちらも合わせてチェック!
【人間力診断テスト19選】仕事、恋愛、お金…… あなたの社会人力は?

「渡りに船」の意味

「渡りに船」とはどんな意味でしょうか。またどのような由来があるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

「渡りに船」とは? 意味と由来

「渡りに船」は、

あることをしようと思っているときに、ちょうど都合の良いことに出会うこと
(『明鏡国語辞典 第三版』大修館書店)


という意味。もともとは、法華経の経典に出てくる次の言葉に由来しています。

如渡得船(にょどとくせん)
読み方:渡りに船を得たるが如く
(『法華経』薬王菩薩本事品(やくおうぼさつほんじほん)第23の文)


「渡り」は「苦境」の例え、そして「船」は「法華経」の例えです。つまり、もとは苦境に立たされている衆生を救う船こそが法華経であるという意味で使われていた言葉です。

やがて、宗教の枠にとどまらず、普段の生活においても何かをしようという時にタイミングよく起こる物事を「渡りに船」と呼ぶようになりました。

「船」と「舟」の違い

「ふね」には「船」と「舟」の両方があります。大型のふねに関しては「船」、小型のふねや手動のふねに関しては「舟」を使います。例えば、同じ釣りふねでも大きなふねなら「釣り船」、手動で漕ぐ小さなふねなら「釣り舟」とするのが適切です。

「渡りにふね」の「ふね」には、どちらがふさわしいのでしょう。「渡りに舟」と書かれている辞書もあり、辞書から判断すればどちらも正しいと考えられます。

ただし、この言葉のもとになった法華経は、すべての人を救済する大乗仏教です。それを考え合わせると、少ししか乗ることができない小さな「舟」よりは、多くの人が乗ることができる大きな「船」のほうがよりふさわしいと言えそうですね。

「渡りに船」の使い方・例文

ビジネスではタイミングやチャンスが大切です。「ちょうど都合の良いこと」という意味の「渡りに船」のような場面に出会えたら幸運です。もしビジネスや就活などでこの言葉を使うとしたらどんな使い方ができるでしょうか。以下に例文を挙げます。

就活の自己PRで

スキルアップをしたい。学びを深めたい……就職・転職・面接など、ポジティブに取り組みたい状況で「渡りに船」を使うと、自己PRも兼ねることができます。チャンスを逃さない前向きな印象を与えられるでしょう。

就活を通じて自分のスキルを磨きたい私にとって、今回のインターンシップはまさに渡りに船だと考えております。

社内の報告・商談・説得などの場面で

ビジネスの取引などでは、タイミングが大切です。時宜にかなった取引や提案であると伝えたい時に使えば、説得力を増すことができます。

今回F社からの協働したいという提案は、私たちの会社にとってまさに渡りに船ではありませんか。

提案や商談を慎重に検討すべき場面で

社内外を問わず、どのような提案でももう少し検討すべきということがあります。「渡りに船と飛びついてはいけない」という表現によって、慎重さを求めることができます。

確かに魅力的な提案ではありますが、検証をおろそかにしたまま、安易に渡りに船と飛びつくようなことがあってはなりません。

仕事の感謝の気持ちを伝える場面で

ビジネスでは、他の社員の協力で物事がスピーディに進む場面があります。そんな時に「渡りに船」で感謝の気持ちを表現しましょう。

先輩、先日は〇〇についての情報、ありがとうございました。ちょうど調べていた件だったので、渡りに船でした。

「渡りに船」の類義語・言い換え表現

「渡りに船」と似たような意味を持つ言葉・表現を紹介します。言い換えたい時に使ってみましょう。

1)願ったり叶ったり

読みは「ねがったりかなったり」。希望通りで都合が良いこと。

2)地獄に仏

読みは「じごくにほとけ」。ひどく困っている時に、思いがけない助けに出会うこと。「渡りに船」のもともとの意味とほぼ同じです。

3)闇夜の提灯

読みは「やみよのちょうちん」。困って途方に暮れた時に、待ち望んでいたものに巡り合うたとえ。「暗夜の灯」とも言います。「渡りに船」のもともとの意味とほぼ同じです。

4)干天の慈雨

読みは「かんてんのじう」。困っていた時に、待ち望んでいたものが得られたことのたとえ。「日照りに雨」とも言います。「渡りに船」のもともとの意味とほぼ同じです。

ちょうどいい、そのタイミングを生かそう

私たちが日常使っていることわざのなかには、仏教の世界から生まれたものがたくさんあります。「渡りに船」もそのひとつ。人生でもビジネスでも「渡りに船」と思えることは、それほどしょっちゅう転がっているものではありません。生かすべきチャンスやタイミングを逃さないようにしたいですね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです。

【著者プロフィール】
前田めぐる(文章術講師)

コピーライターとして「言葉と文章」に関わり続けてきた経験をもとに、企業・自治体・団体向け広報講座の講師を務める。ワークを取り入れた文章術研修では‘伝える’を‘伝わる’に変換する文章の書き方を伝授。「楽しくて分かりやすく、すぐ実務に活かせる」と定評がある。

執筆・ライティングの専門領域は、【言葉・敬語・文章術・マーケティング・リスクコミュニケーション】。公益社団法人日本広報協会広報アドバイザー、文章術講師。著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』など。京都在住。

関連記事

新着記事

もっと見る

HOT TOPIC話題のコンテンツ

注目キーワード

 ビジネス用語・カタカナ語80選

 キャリアロードマップの一歩目

  • ピックアップ