「拝辞」という言葉を聞いたことがありますか? 「辞去」「辞退」をへりくだっていう2つの意味があり、その場を去る時の挨拶や、何かを断る時の言い回しとして使われます。
少々硬い印象の言葉ではありますが、知っておくとビジネスメールや文書を書く時に役立つでしょう。正しい意味や使い方、類語などをチェックしておきましょう。
▼目次
1.拝辞とは?
2.拝辞を使う際の注意点
3.拝辞のビジネスでの使い方・例文
4.拝辞の類義語・言い換え表現
5.拝辞の対義語
6.まとめ
「拝辞」には、どんな意味があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
「拝辞」の意味は、辞書によれば次のとおりです。
「拝辞」の「拝」には、相手を敬い自分をへりくだる意味があります。「辞」には、「辞去(=いとまごいをすること)」と「辞退(=退くこと。やめること。断ること)」2つの意味があります。つまり、この2つの漢字が1つになった 「拝辞」は、「辞去、あるいは辞退の謙譲語」という意味があります。
「拝辞」という言葉は、よく「拝辞する」「拝辞いたします」「拝辞させていただきます」などと使われます。
ちなみに、「拝辞」の部分は、自分の行為が及ぶ先を立てる謙譲語Iにあたり、中でも特定形と呼ばれます。(文化庁の『敬語の指針』26ページより)。自分の行為が向かう先が誰かを意識しながら、表現を使い分けましょう。
「拝辞する」は辞去や辞退をする時の相手を立てる謙譲語Iです。例えば社内の誰かに向けたメールで「専務から昇進を打診されましたが、拝辞することにしました(いたしました)」のように使えます。
「拝辞いたします」は、謙譲語I(拝辞する)+謙譲語II(いたし)+丁寧語(ます)を組み合わせた正しい敬語表現です。へりくだることで、行為の向かう先と読み手(あるいは聞き手)の両方を立てる表現です。異なる敬語を連ねているだけであり、二重敬語にはあたりません。
ようやく得られたお客様の指名や、せっかく決まった内定をやむなく辞退する時などに使えます。「させていただく」は、ビジネスシーンで瀕雑に見聞きしますが、本来は相手側や第三者の許可を得てその行為を行い、それにより恩恵を受ける場合に使うのが適切です。
つまり、「寛大なご配慮により辞去(あるいは辞退)させていただくことができるなら、大変ありがたく感謝いたします」という文脈で、「拝辞させていただきます」を使うことができます。許可や配慮が不要の場面でやたらと使わないようにしましょう。
「拝辞」を使う時、どんなことに気をつけたら良いでしょうか。いくつかポイントを掲げます。
「拝辞」は謙譲語なので、あくまで 自分(側)の行為について使います。相手の行為について「〇〇さまは拝辞されました」などと使うことはできません。
文語的でカチッとした印象であるため、話し言葉よりも メールや文書で書き言葉として使う時に適しています。会話では「おいとまいたします」「お引き受けいたしかねます」などの方が、ソフトな印象を与えるでしょう。
「拝辞」は、辞去や辞退という 自分の行為が向かう先である相手を立てる言葉です。読み手(聞き手)に対しての丁寧さや敬意を示したい時は、「します」「いたします」を加える必要があります。
「拝辞させていただきます」よりも「拝辞いたします」で恐縮した気持ちを表したい場合は、 クッション言葉を併用すると良いでしょう。「せっかくのご好意ですが」「ご配慮いただいたのに恐縮ですが」などがあります。
「拝辞」は、主にビジネスメールや文書の中で使われます。謹んでいとまごいする時、謹んで辞退する時に使える表現です。場面に合わせて使ってみましょう。
取引先の宴席途中で辞去したことをメールで触れたい時に使えます。
例えば、昇進の辞令を断る場合などに、次のように使えます。
せっかく決まった内定を辞退するのは、断りにくく、申し訳ない気持ちですね。就活や転職で、次のように「拝辞」を使えます。
お歳暮やお中元などを今年限りでやめる場合、手紙などで次のように告げることができます。
「拝辞」と似たような意味を持つ言葉を以下に掲げます。今回は「拝辞」と合わせて、「拝辞いたします」の類語・反対語も取り上げています。
「いとま」は「別れること。辞去」という意味です。「お〜いたします」をつけた「おいとまいたします」は「拝辞いたします」と同じように使え、さらに柔らかい印象です。
「失礼」は、「立ち去ること」を丁寧にいう言葉です。「(お先に)失礼いたします」は、「拝辞いたします」よりも日常的に使われ、活用範囲の広いフレーズです。
「お邪魔いたします」を過去形にした、相手先を出る時のあいさつです。日常的に使われる表現です。
「辞退」と「ご〜申し上げる」と組み合わせて、目上の人に対してへりくだった断りのフレーズとして使えます。「ご辞退いたします」も同様に使えます。
名誉な辞令に感謝しつつも、荷が重く辞退したい時に使えます。「拝辞」よりもソフトな表現です。
目上の人に対してへりくだった断りのフレーズとして使えます。「拝辞」のように辞令や昇進など断る際に使うには、やや不向きです。借金などの申し出をキッパリ辞退する時などに良いでしょう。
「〜いたしかねる」は、相手の機嫌を損ねず、依頼に応えられないことを婉曲的に伝える表現です。目上の人に対してへりくだった断りのフレーズとして使えます。
物品を辞退する時の言葉。「拝辞いたします」よりも日常的で使いやす言い方です。
次は、拝辞と反対の意味を持つ言葉です。微妙なニュアンスも含めて、使い分けてみましょう。
読みは「はいすう」。「相手のところへ出向くこと」の謙譲語。その場を去る「拝辞」と正反対の意味を持っています。
読みは「はいえつ」。正確には、「身分の高い人にお目にかかる」という意味です。「拝謁」は「行く・出向く」という行為そのものではありませんが、高位の人には自分から会いに出向くことが多いため、その場を去る「拝辞」とは反対の意味に近いといえます。
読みは「はいがん」。「拝謁」と同じ意味で、目上の人に会うことを意味しており、その場を去る「拝辞」とは反対の意味に近いでしょう。
相手先を訪問すること。「お邪魔します」「お邪魔いたします」は、会社や家に入る時のあいさつの言葉です。
読みは「はいめい」。「任務や命令を受けること」の謙譲語。辞退する時に使う「拝辞」とは正反対の意味です。
読みは「はいじゅ」。主に書類のやり取りでよく使われます。それ以外でも、命令・指令・物品などを受け取ることをへりくだっていう言葉です。物品などを辞退する時にも使う「拝辞」とは正反対の意味です。
読みは「はいりょう」。「貴人や目上の相手から物をもらうこと」の謙譲語。辞退する時に使う「拝辞」とは正反対の意味です。
▼こちらも合わせてチェック!
「拝受」「拝受いたしました」の正しい意味と使い方
日頃お世話になっている相手に対して何かを断るのは少々気が引けるもの。今回の「拝辞」はそんな時、覚えておくと役に立つ表現です。
「拝辞いたします」の他にも、「謹んでご遠慮申し上げます」「誠に恐縮ながらご期待に添いかねます」「身に余るお話ですが」など、日本語には工夫された断り方が数多くあります。相手の気持ちに配慮しながらも、自分の意思をしっかり述べたいものですね。
(前田めぐる)
※画像はイメージです
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