社会人になるとたくさんの敬語表現が登場するため、使い方に困ってしまうという人もいるのではないでしょうか。
特に会社員になるとメールや挨拶などで「よろしくお願い申し上げます」という表現や「お願いいたします」などといった表現を常に使う場面が出るでしょう。
言葉の意味や成り立ちを知っておくことで、正しい場面で正しい表現が使えるようになるので、便利ですよ!
そこで今回は「よろしくお願い申し上げます」「お願いいたします」という2つの言葉を中心に、使い方をご紹介します。
ちょっと自信が無いというあなたも、ちゃんと使えている自信があるあなたも、ぜひ最後までご覧ください!
「よろしくお願い申し上げます」という言葉は、「よろしく」と「お願い申し上げます」の2つに分割できます。
それぞれ詳しく見ていくことで、「よろしくお願い申し上げます」という言葉の意味をより深く知れるでしょう。
「よろしくお願い申し上げます」の「よろしく」は、形容詞の「よろし」の連用形です。
「よろし」には、「まあいいでしょう」または「悪くはないですよ」「許容範囲内ですね」という意味があります。
しかし、曖昧な意味合いから承諾をお願いする言葉として「よろしく」が使われるようになりました。
そして「よろしくお願い申し上げます」の「申し上げます」は、江戸時代から使われていた言葉です。
江戸時代に使われていた「申す」は、「申し」(言う)のへりくだった言葉「申し上げます」と同義語なのだとか。
「申す」は江戸時代以降、長い間途絶えていた言葉ですが、明治後期から大正時代にかけて電話の交換手が相手に失礼がないように「申し上げます」と言ったこと再使用されたきっかけだといわれています。
ちなみに、電話で使う「もしもし」は「申す申す」が変化したものです。
「よろしくお願い申し上げます」は厳密にいうと謙譲語が重複した二重敬語表現に該当します。
しかし、日本語というのは良く使われる表現ともなると、敬語表現が重複しても問題ないケースが多くあります。
「よろしくお願い申し上げます」も二重敬語ではあるものの現代のビジネスシーンや手紙・メールなど日常生活でも良く使われる表現であることから、表現としては問題ないとされているようです。
ビジネスシーンでは、メールや口頭などで「よろしくお願い申し上げます」と何かを依頼されることもあります。
また、名刺交換など初対面同士の挨拶も増え、挨拶の結びに「よろしくお願い申し上げます」と言われることもあるでしょう。
相手に「よろしくお願い申し上げます」と言われた際は、どのような場面で言われたかで返事を変えることが一般的です。
上司や取引先の人・協力会社の人などからお願い事や依頼事の際に「よろしくお願い申し上げます」と言われ場合は、「承知しました」あるいは「かしこまりました」と返事すると良いでしょう。
特に「かしこまりました」という返答は最も丁寧であるため、取引先や協力会社などお客様に対して返答することでより丁寧さをアピールできます。
挨拶の中で「よろしくお願い申し上げます」と相手から言われた場合は、「こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」と返事するのが一般的です。
ビジネスシーンでは「よろしくお願い申し上げます」と「よろしくお願いいたします」という2つの表現がよく見かけられますが、使い分けで迷ったことがあるという人も多いのではないでしょうか。
「お願い申し上げます」も「お願いいたします」も丁寧な言葉なので、両方ともビジネスシーンで使えます。
「申し上げる」は「言う」の謙譲語で、「いたします」は「する」の謙譲語です。
ただし厳密には、「何かを申し上げる(言う)」ことと「何かをしていただく(する)」というニュアンスの違いがあります。
お礼や挨拶、お詫びの際には「よろしくお願い申し上げます」を使い、相手に何かを「する」ようにお願いするときには「よろしくお願いいたします」を使用するのが一般的です。
また、目上の人や上司へメールなどを送る際にも「よろしくお願い申し上げます」の方がよいでしょう。
「よろしくお願いいたします」は事務的で、相手に指示をしているような印象がぬぐえません。
文章の意味や使い方を知ったところで、具体的な文例からさらに理解を深めましょう。
「ご多忙の中、ご面倒をおかけして誠に申し訳ございません。何卒、よろしくお願い申し上げます」
「何卒、ご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」
「先日は、美味しいディナーをご馳走になりまして誠にありがとうございました。今後ともご指導のほど、よろしくお願い申し上げます」
「この度のプロジェクトでは丁寧な対応をしていただきまして、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます」
「先日は、ゴルフコンペで大変お世話になりました。今後ともご指導のほど、よろしくお願い申し上げます」
「先日はご多忙の中、創業10周年記念パーティーにご出席くださいまして、誠にありがとうございました。今後ともご愛顧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」
「どうかご検討くださいますよう、よろしくお願いいたします」
「どうぞご理解くださいますよう、よろしくお願いいたします」
「ご検討のうえ、ご返答いただけますよう、よろしくお願いいたします」
「ご確認のほど、よろしくお願いいたします」
「ご対応のほど、よろしくお願いいたします」
「ご配慮のほど、よろしくお願いいたします」
さらに、似たような言葉で「何卒(なにとぞ)」がついた表現が見られますよね。
「何卒」とは「どうぞ」をより堅く表現した言葉で、相手に「期待する」ニュアンスが含まれているところが異なる点だと言えます。
話し言葉というよりは文面で良く使われる表現です。
口頭で「何卒~」と言ってしまうことで、かえって仰々しくなる「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」にあたりかねませんので注意しましょう。
前述の通り、「何卒」は話し言葉というよりもビジネスシーンでの書き言葉で使われることが多くあります。
主に、以下の場面で使います。
「何卒」は、ビジネスメールやビジネスレターを締めくくる表現として使われることが一般的です。
また、仕事上で相手に対して何かをお願いしたい場合も、「何卒よろしくお願いいたします」と使うことでより丁寧な印象を与えます。
「何卒よろしくお願い申し上げます」という表現は、あなたのお願いを聞いてくれる人がいるという前提があるため、現代のビジネスシーンにおける表現としては問題ないと言えます。
しかし、日本語は時代とともにルールや使われ方が変わっていくため、ルールが今後変わるかもしれません。
丁寧に相手に連絡をしたいものの表現に迷った場合は「何卒よろしくお願いいたします」を使うほうが無難だと言えます。
「よろしくお願い申し上げます」という日本語本来の意味を保ったまま英語で表現することは難しいのが結論です。
「よろしくお願い申し上げます」と似たような表現方法はありますが、日常で使うのかビジネスシーンなのかでフレーズが大きく異なります。
日常の場合、よほどのことが無い限りは以下のようなカジュアルなフレーズが一般的です。
海外の取引先などの人に対しては、何に対して「よろしくお願い申し上げます」なのかを明確に伝える必要があります。
また、「Thank you very for your help」という表現も感謝やお礼・謝罪の気持ちを相手に伝えることから「よろしくお願い申し上げます」としても使用可能です。
結論として「よろしくお願い申し上げます」「お願いいたします」という2つの言葉は、どちらを使っても差し支えありません。
しかし頭の隅に「何かを申し上げる(よろしくお願い申し上げます)」と「何かをしていただく(よろしくお願いいたします)」の微妙な違いを入れておくことで、違和感のない対応ができるようになるのではないでしょうか。
この記事を参考に、丁寧で相手を思いやるビジネス表現をマスターしてみてください!
執筆:ヤマダ ユキマル
広告代理店を経て、求人サイトのコンテンツライター、ビジネス関連サイトのライターとして活動中。
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