源泉徴収とは? 意味と仕組みについて確認

更新:2022/09/28

税金・年金

源泉徴収とは、給与や報酬などの支払いを行う者が、税金を差し引いて納税する制度のこと。今回は、この源泉徴収のしくみや計算方法、源泉徴収票のことまで分かりやすく解説します。

アルバイトやパートでも条件によっては源泉徴収されますし、源泉徴収票を目にすることもあるはず。是非この機会にマスターしておきましょう。

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源泉徴収とは?わかりやすく解説

源泉徴収(げんせんちょうしゅう)とは、会社が従業員の給料から所得税を天引きして会社が一旦預かり、従業員に代わってまとめて支払う仕組みのことです。

そもそも所得税とは、その名前から分かるとおり「所得」に対してかかるもの。本来ならば所得税は「所得」を自分で集計して自主的に申告・納税すべきものです。つまり「確定申告」で納税するというのが基本原則です。

ですが、所得のあった人全員が確定申告をやっていると、税務署は相当な混乱が予想されます。納税する方も「仕事で忙しいのに…何とかならない?」となるかもしれません。

そこで採用されているのが「源泉徴収制度」。会社員やアルバイトなど「雇用」されて働く人の場合、会社が給与の支払いの際に所得税を徴収(=源泉徴収)します。それを会社が後でまとめて納税することで、効率化を図っているのです。

ちなみに、ここでの所得に該当するのは「給与」だけではありません。たとえば企業が顧問税理士と契約している場合、顧問税理士に支払うのは「給与」ではなく「報酬(顧問料)」です。企業がこうした報酬を支払う時にも、源泉徴収することになっています。

今回は新社会人向けに、「給与」における源泉徴収を中心に解説。個人事業主やフリーランスなどのケースもポイントを絞って補足していきます。

源泉徴収→年末調整でお金が戻ってくるかも?

毎月の源泉徴収で税金を天引きされてきたお給料ですが、年に一度行われる「年末調整」で、その税金が戻ってくることが多々あります。

年末調整とは、1月から12月の1年間に支払われた給与に対する源泉所得税の過不足の調整をすること。年末になると、会社ではそれぞれの従業員の給与と、差し引いてきた税金・社会保険を集計し、その他の控除(生命保険料など)も含めて正確な所得税額をはじき出します。

ここでのポイントは、正確な所得税額は年に1回、年末に確定するということ。
実は、毎月差し引かれてきた源泉徴収の額というのは「概算の金額」なのです。

というのも、毎月の給与というのは必ずしも一定とは限りませんね。残業で急に増える時もあれば、昇給することもあるでしょう。一方、所得税の計算は年単位で行われます。だからといって年に1回だけ集計して徴収しようとすると、高額になってしまい支払いが困難になることも考えられます。

そこで、源泉徴収のしくみを利用して、毎月の給与から「仮に計算して」預かっておくのです。毎月少しずつなら、引かれる方も負担が少なくて助かります。

そして、年に1回の年末調整で全ての再計算が行われます。フタを開けて見たら「引かれ過ぎていた」というパターンは多く、還付金として戻ってきます。反対に足りない場合は、12月の給与で多めに引かれることになります。

「今月はアルバイトのし過ぎで、税金が多く引かれてしまった…!」

税金がいつもより多いと焦ってしまうかもしれません。ですが、後ほど年末調整で再計算され、多すぎた分はちゃんと戻ってきますのでご安心くださいね。

源泉徴収の対象になる報酬など

今回は給与所得を中心に解説していますが、実は源泉徴収の対象になるものは、他にも以下のとおりさまざまあります。

・原稿料および講演料など

・広告宣伝のための賞金や馬主への競馬の賞金

・弁護士、税理士、公認会計士などの特定の資格を持つ人へ支払う報酬、料金

・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

・プロのスポーツ選手、モデルや外交員などに支払う報酬、料金

・芸能プロダクションや芸能人に支払う出演の報酬、料金

・宴会などで接待をするコンパニオンに支払われる報酬 など


例えばあなたが弁護士で、法律事務所を開業しているとしましょう。弁護士としての仕事をこなし、成功報酬をもらうときに源泉徴収が関係します。このとき、成功報酬の全額がもらえるのではなく、税金が差し引かれた残りが振り込まれる、ということになります。

このように、給与ではなく「報酬」として収入を得ている人は「個人事業主」であるケースが多いです。つまり個人事業主やフリーランスでも、場合によっては源泉徴収が関係してくるということなのです。

ここで挙げたもの以外にも源泉徴収の対象になるものはあるのか、わからない場合には問い合わせをしてみましょう。

源泉徴収の対象とならない給与はある?

では給与の話に戻ります。
給与明細を見ると、「〇〇手当」などいろいろな項目があるでしょう。実は、その中で源泉徴収の対象とならない(所得税がかからない)項目もあります。
代表的なものとして「通勤手当」と「旅費」をご紹介します。

●通勤手当

通勤手当は1ヶ月あたり、次の金額までは課税されません。「最高限度150,000円まで」というのがポイントとなりそうです。

区分 課税されない金額
1.交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当 1ヶ月あたりの合理的な運賃等の額(最高限度150,000円)
2.自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当 31,600円までの間で、通勤距離により段階的に定められている
3.交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券 1ヶ月あたりの合理的な運賃等の額(最高限度150,000円)
4.交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券 1ヶ月あたりの合理的な運賃等の額と2.の金額との合計額(最高限度150,000円)


●旅費

非課税となる旅費とは、次のとおりです。

1.勤務する場所を離れて、職務を遂行するための旅行(出張旅費)
2.転任にともなう転居のための旅行
3.就職や退職した人の転居または、死亡により退職した人の遺族が転居のために行う旅行


もちろん、その旅行に通常必要とされる費用と認められる範囲内のものに限られます。
ただし出張旅費のための手当であっても、年額または月額により支給されるものは、給与所得として課税の対象とされます。

このように、「課税の対象かどうか」は非常に細かく条件が設けられていますので、ケースバイケースで税理士などの専門家に確認されるといいでしょう。

●給与の金額によっては源泉徴収されない

給与の金額面でみると、1ヵ月の給与が8万8000円未満の場合は源泉徴収されません。つまり所得税がかからないということです。

ただし、給与を得る場合には年末調整でも使われる「扶養控除等(異動)申告書」という書類を提出しなければなりません。提出していないと、正社員・アルバイト関係なく給与が8万8,000円未満であっても源泉徴収の義務がありますので注意しましょう。

源泉徴収額の計算方法

源泉徴収額の計算方法

あなたの月々の給与において、源泉徴収額がどのように計算されるのか気になりませんか。実は月々の源泉徴収税額を求めるために、便利な早見表があります。正確には「給与所得の源泉徴収税額表」といいます。

給与が月ごとに支払われており、先ほどの「扶養控除等(異動)申告書」を提出している方なら、税額表の「月額・甲欄」にて税額を確認できます。実際にやってみましょう。

●源泉徴収税額の計算シミュレーション

・月給 250,000円(通勤手当除く)
・天引きされた社会保険料 37,333円
・単身者(扶養親族なし)
※社会保険料の金額はあくまで想定です。


税額表では「社会保険料等控除後の給与等の金額」がまず必要です。

社会保険料等控除後の給与

そこで給与総額(額面)から社会保険料を引くと、
月給250,000円ー37,333円=212,667円

この金額を税額表に当てはめていきます。
今回のケースは単身者で扶養親族は0人なので、

扶養親族

よって、記載されている5,200円がその月の源泉徴収税額です。

ちなみに、賞与や退職金の場合はまた計算方法が異なります。それから実際の給与明細を確認すると、この税額表と若干金額が違う、といったこともあります。それは給与ソフトにより計算方法が多少異なるためです。最終的には年末調整で正確に計算されることになります。

●「報酬」の源泉徴収額はどうなる?

源泉徴収の対象になるものは、前述のとおり給与だけでなく「報酬」もあります。ここでは弁護士報酬を例にとって、報酬の場合の源泉徴収額にも触れておきます。

◎100万円以下の場合の計算方法
・計算式
源泉徴収税額=支払金額×10.21%

・例:支払金額が10万円の場合
10万円×10.21%=10,210円←源泉徴収税額


◎100万円を超える場合の計算方法
・計算式
源泉徴収税額=(支払金額ー100万円)×20.42%+102,100円

・例:支払金額が200万円の場合
(200万ー100万円)×20.42%+102,100円=306,300円←源泉徴収税額


「報酬」についての源泉徴収額は、報酬の種類によって計算方法が異なります。一般的には上記と同じ計算方法となるものが多いです。

源泉徴収をしなかったらどうなる?

企業は、従業員に給与を支払っている以上、源泉徴収を行って所得税を納付する義務があります。企業は「源泉徴収義務者」に位置付けられているのです。

さらに、この所得税の納付には納付期限もあります(翌月10日まで)。従業員から源泉徴収をできていない場合、当然ながら期限までに納付することはできません。その場合には、企業の方が「延滞税」や「不納付加算税」などを負担しなければならなくなります。

そうした事態にならないよう、企業としては給与ソフトなどで必ず所得税の計算ができるように体制を整えているのです。

源泉徴収票とは? 

源泉徴収票とは

源泉徴収票とは、給与などの1年間の収入と、源泉所得税や社会保険料その他の控除項目まで記載された書類のことです。給与のほか退職金の源泉徴収票もあります。

源泉徴収票は税務署へ提出するほか、従業員一人ひとりにも配布されます。そこで「私の年収はいくらだった」と確認することができるわけです。

この源泉徴収票は、一般的に年末調整の時につくられます。年末調整の時に1年間の給与の集計が行われ、正確な所得税額が確定するためです。

年末調整をしてもらうには、企業に「扶養控除等(異動)申告書」を提出しなければなりません。入社の時や、それ以降も毎年1回書類が配布されるはずですので、正しく記載して提出しておくようにしましょう。

注意したいのは、複数の企業で給与所得がある場合、「扶養控除等(異動)申告書」は1つの企業にしか提出できないということ。2箇所以上から給与を受け取っている場合には、年末調整の他に確定申告をすることになります。

また、自営業や個人事業主・フリーランスの場合は、こうした年末調整や源泉徴収票といったしくみはありません。その場合は、冒頭でお伝えした「自主申告」の原則に立ち戻り、「確定申告」にて税務署に届け出る必要があります。

▼フリーランスの方必見! 確定申告や保険などの注意点はこちら! https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/51173

確定申告で使う?源泉徴収票の必要性

源泉徴収票は、企業で従業員として働く人の収入や支払った税金・社会保険料などを証明してくれる書類です。そのため、以下のような場面で源泉徴収票が役に立ちます。

・自分で確定申告をして医療費控除を受けたいとき

・住宅ローンを組むとき

・住宅ローン控除を受けたいとき

・失業給付を受けたいとき(ハローワークに提出する書類のひとつ)


また、転職先の会社で源泉徴収票の提出を求められることもあります。これは、1年のうちに勤務した会社が複数になると、転職先の会社の分だけでは年末調整ができないためです。

従業員が退職した場合、会社は1カ月以内に退職日までの源泉徴収票を作成し、元従業員に渡す義務があります。退職した会社から源泉徴収票をもらっていない場合には、必ず発行をしてもらってください。

源泉徴収票についての注意点

源泉徴収票は給与所得や税金等の支払いを証明できる大事な書類です。受け取ったら記載内容は必ず確認するようにしましょう。

まず確認したいのが、住所や名前などの基本事項。ケアレスミスもあり得ますし、ここが違っていると証明書類として機能しません。

「支払金額」という欄には、給与や賞与など1年間に会社から支払われたお金の合計金額が記載されています。これはほぼ年収と同じはずなので、源泉徴収票の金額が毎月の給与や賞与などの支払いと概ね合っているかどうか確認しましょう。

また、転職した場合は前の勤務先から源泉徴収票を受け取っているかがとても重要です。失業給付を受ける際や転職の際に必要となる大切な書類ですので、前の勤務先から必ず受け取るようにしてください。

まとめ

源泉徴収の意味やしくみ、計算方法、そして源泉徴収票についても解説してきました。源泉徴収というと「何を徴収するの?」と思われがちですが、実は所得税を徴収するしくみのことでした。

月々の給与から所得税を源泉徴収しておき、会社がまとめて納付しています。そして年末調整にて正確な所得税額が確定するので、還付金として戻ってくることもあるというわけです。

源泉徴収票とは、給与所得や払った税金などが集計されたもの。源泉徴収票は年収の証明として様々なシーンで使われるので、受け取ったらざっと内容を確認しておくと安心。くれぐれもなくさないように注意しましょう。

文:マイナビ学生の窓口編集部

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