『あまちゃん』大ヒットの意外なヒミツ!? 朝ドラ52年の歴史――。朝ドラウォッチャーに聞く、視聴率がふるわなかった作品の敗因

2013/09/25

新生活・準備

『あまちゃん』大ヒットの意外なヒミツ!? 朝ドラ52年の歴史――。朝ドラウォッチャーに聞く、視聴率がふるわなかった作品の敗因

1961年に日本放送協会(NHK)から放送が開始された「連続テレビ小説」こと、『朝ドラ』——。52年もの間、私たちと一緒に朝を迎えています。長い歴史の中には、大ヒットしたものもあれば、残念ながら視聴率的にコケちゃった作品もあるはず。そこで、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』の著者、田幸和歌子さんにコケてしまった朝ドラの敗因について伺いました!



さっそく、ワースト3の朝ドラを発表! ......と、いきたいところですが、朝ドラを評価するときに留意しておきたい点がある、と田幸さん。



「朝ドラの『視聴率のいい作品』と『評価が高い作品』は、必ずしも一致しないんです。近年で言えば『梅ちゃん先生』に当てはまるんですけど、数字は平均18%を獲得していたにも関わらず、ネットでの評判はあまりよくない。これは、長年朝ドラを観ている中高年・高齢の方には受けがよく、インターネット世代の若者には、あまり受けがよくなかったという傾向によるものです。逆に、視聴率はいまひとつ振るわなかったものの、放送終了後もずっと語り続けるような熱狂的ファンを獲得した『ちりとてちん』のような例もあります。他の民放ドラマにも共通するとは思うのですが、とくに朝ドラは数字と評価の差が激しいので、視聴率=高評価というわけではないんです」



たしかに、視聴率は悪くても、観てみるとおもしろいドラマってたくさんありますよね。視聴者の層が広い朝ドラならではの留意点といったところでしょうか。以上のことに注意しながら、全88作品中、視聴率の低かった3作品を見てみましょう! (※なお、データは全てビデオリサーチ調べ・関東地区・世帯視聴率で、NHK総合テレビにて2010年までの8:00開始、8:15開始の放送分のみの平均です。衛星波での先行放送や再放送は含まれません。)





第3位 『瞳』(2008年)期間平均15.2%

東京の月島を舞台に、榮倉奈々さん演じる瞳が、ヒップホップダンサーを目指して奮闘する姿、さらに、祖父が引き取った3人の里子との生活を描く。



「このドラマは、話がまとまらなかったところが大きな敗因。"里親問題"と"ヒップホップダンス"という、二本柱の相性が猛烈に悪かったんですよね(笑)。また、ヒロインの瞳のキャラにも問題があって、気に入らないことがあると暴れたり、『○○っすよ』などという乱暴な口調になったりするところが、長年朝ドラを観ている視聴者に受け入れられなかったのかな、と思います」



田幸さんいわく、「若者を描くのに無理があったように感じますね」とのこと。ちょうどヒップホップダンスが注目されていた頃なので、ドラマに取り入れてみたはいいものの......という感じだったのかもしれませんね。



第2位 『つばさ』(2009年)期間平均13.8%

老舗和菓子屋「甘玉堂」の長女・玉木つばさが、出奔した母の代わりに「おかん」を務めるなか、少しずつ家族が再生していく姿を描く。ちなみに『つばさ』で採用された埼玉県川越市をもって、朝ドラの舞台は全都道府県を制覇することとなった。



「制作のみなさんは『寺内貫太郎一家』をイメージして、ちゃぶ台を配置するなど、昔ながらの家族を描こうとしていたようなんですが、ちょっとドタバタがすぎましたね(笑)。唐突にサンバがはじまって大騒ぎしたり、ぶっ飛んだキャラクターが出てきて大騒ぎしたり......視聴者からしたら、何が起きているのかよくわからなかったところがありましたね」



視聴者を置いてきぼりにしてしまったのが、一番の敗因のようです。「ただ、現在コメディエンヌとして大活躍している多部未華子を発掘したことの意味は大きい」と、田幸さん。たしかに、多部さんの独特な雰囲気は印象的です!



第1位 『ウェルかめ』(2009年〜2010年)期間平均13.5%

倉科カナさん演じるヒロイン・浜本波美が、あたたかい家族、個性豊かな仲間に励まされつつ、「編集者になる」という自分の夢に向かって成長していく姿を描く。



"成長を描く"という、朝ドラの王道とも思えるこの作品が、なぜワースト1になってしまったんでしょうか?



「一応、ストーリー上は『編集者になりたい』という夢があるんですけど、出版業界の『仕事』がきちんと描かれていないこと、また、主人公が『ドジでのろまな亀』というキャラクター設定もちょっと厳しかったです......。ストーリー展開やキャラクターにも一貫性があるのかないのかわからない、という部分もありましたね。それほどヒドいストーリーではないんですが、かと言って何も残らない感じ。ただ、ヒロインの倉科カナちゃんが巨乳だったことで、おじさんたちからの人気は高かったですよ(笑)」



ヒロイン、倉科さんの巨乳が揺れるも視聴率が振るわなかったんですね......。また、田幸さんによれば、放送された時期も低視聴率に大きく関係しているんだとか。



「実は『ウェルかめ』や『つばさ』の時期というのは朝ドラ自体に『オワコン感』が漂っていた頃なんです。とくに、全都道府県を制覇した『つばさ』のときは、区切りのよさもあり、本格的に朝ドラの終了が考えられたりもしていたようです」



ええ! そんな時期があったんですか!?



「昔の朝ドラは戦争を生き抜く女の一代記を描くのが主流だったのですが、ヒロインが現代の女性になるにつれて『自分探しちゃん』のストーリーばかりになっていきました。忙しい朝の時間帯に、現代女性の心のモヤモヤを見せられても退屈......というのが、朝ドラの視聴率低迷の原因のひとつだと思います」



現代の等身大の女性を描くのは、意外に難しいんですね。......ん? でも、現在放送中の『あまちゃん』も、現代の女の子が主役だけど、大人気ですよね?





「『あまちゃん』はヒロインだけじゃなく、主要な登場人物が歴代朝ドラでも最多じゃないかと思うほど多いのに、一人一人が愛着と『一貫性』を持って、丁寧に描かれていますからね。さらに、現在は、朝ドラそのものが人気を取り戻しているということもあると思います。実は、2010年に朝ドラは大変革を遂げているんです。最も大きいのは放送時間の変更。これまでは朝8時15分からだったところを、2010年に放送されていた『ゲゲゲの女房』から朝8時ちょうどからの放送に切り替わりましたよね。また、オープニング前にドラマ本編を2分ほど導入として流す『アバンタイトル』が初めて採用されたのも、『ゲゲゲの女房』なんです」



私も「ゲゲゲ」観てました! すごくほんわかしてて朝から和やかな気持ちになった記憶があります。



「朝ドラのヒロインといえば、前向きで明るくて周りを幸せにしていく女の子が多いのですが、『ゲゲゲ』の主人公は、自分自身は何もしないのに周りを輝かせていく珍しいヒロインでしたよね」



時間帯やアバンタイトルの採用、そして新しいヒロイン像という、大きな変化が巻き返しのヒミツだったとは......。



「そういう意味では、現在放送中の『あまちゃん』は、アイドルを目指して頑張る明るいアキちゃんを主人公に、王道のストーリーをたどっていますよね。宮藤官九郎さんの作品といえば『クドカンワールド』と呼ばれるくらい、言葉遊びが多かったり、テンポが早かったりするため、従来の視聴者に受け入れられるか......という心配が一部ではあったんです。でも、フタを開けてみればクドカンワールドは残しつつも、ストーリーは実に真っ当でオーソドックスな朝ドラになっていて、従来の視聴者層にもちゃんと受け入れられた。クドカン好きの若者だけでなく、従来の視聴者も取り込んで大ヒットにつながったと言えます」



王道を描きつつ、クドカンの良さを残しているところが幅広く受け入れられた理由なんですね! さらに、「『あまちゃん』人気の立役者は、クドカンや主演の能年玲奈さん、充実の脇役陣だけじゃないんですよ」と、田幸さん。



「『あまちゃん』人気の功労者として外せないのが、直前まで放送されていた『純と愛』だと思います。この作品は最後まで暗くて辛い内容でしたよね。永遠に終わらない悪夢を観せられているような深い爪あとを視聴者に残したんです。その流れから底抜けに明るい世界観の『あまちゃん』を観ると、『純と愛』の相乗効果もあって、よりスカッとした爽やかさを感じた人が多かったんだと思います。同じ枠で放送されていたドラマが、次のドラマに大きく影響するのも、朝ドラならではのおもしろさなんですよね」



じぇじぇ! 前作が立役者になっていたなんて気が付きませんでした!



「朝ドラには、半年の放送期間と、15分の放送時間、そして中には暗いドラマもありますが、基本的にはあまり嫌な気分になるものは作らない......という暗黙のルールがありますよね。明るいヒロインが成長していく『朝ドラ像』を守る作品がある一方で、『純と愛』のようにドロドロの作品もあったりと、実は振り幅がとても大きい。制作のみなさんが日々冒険しているところが朝ドラの魅力のひとつなんです」



何気なく観ていた朝ドラには、たくさんの『ドラマ』があったんですね......。『あまちゃん』が終わったら寂しいな、なんて思っていましたが、なんだか次回作も楽しみになってきた筆者なのでした!



(※朝ドラや大河ドラマの視聴率は、舞台になる地区の視聴率が高い傾向があり、今回のデータはあくまで関東地区のみの視聴率です。今回取り上げた3作品は、地上波・衛星放送含めて何度も再放送も果たしていますので、低視聴率=低評価という判断をされないようお願いいたします)



文●大貫未来(清談社)



☆取材協力

田幸和歌子

書籍出版会社、広告製作会社を経てフリーに。月刊誌や週刊誌などで幅広く執筆。著作に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)がある。

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