就活での「強み」で勝てない時は「エピソード」で内定を勝ち取る

松本利明

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「強み」で真っ向勝負に臨むのは得策ではない

就活もクライマックスを迎えたことでしょう。本命企業の内定を無事に獲得できた人もいれば、逆に本命に落ちてしまい、よりよい就活先を探している人もいるなど、置かれた状況は異なるでしょう。ですが、今、面接をしているということは、「絶対負けられない戦い」に臨んでいる局面であることは間違いありません。

ここまでの就活を振り返り、本連載で解説したコツを駆使してきたことで、就活で手応えをつかみ、結果につながってきている人もいるでしょう。

今の局面で欲しい内定が勝ち取れていないとしたら、前回の連載で解説した「強みは組み合わせで差をつける」ことを駆使しても、ライバルの強みや実績が圧倒的すぎて、気後れや焦りが生まれ、実力を出し切れないことも多いでしょう。

あなたが「英語が得意でTOEIC 660点」を強みとしてPRしても、周りが帰国子女だらけで、英語経験の圧倒的な差を感じてしまうケースなどがいい例です。しかし、あきらめる必要はありません。本連載では一貫して「この人と一緒に仕事をしたい。入社後に活躍する姿が目に浮かぶ」と面接官に感じてもらうことが内定の一番の近道だと解説してきました。その文脈を踏まえて、「強み」でどうしても勝てないときでも逆転を狙うコツを解説します。

「強み」で勝てないときは「エピソード」で逆転する

英語力の例で引き続き解説します。

周りが帰国子女だらけのように、スキルや経験で圧倒的な差をつけられてしまったときはどうするか。勝負する土俵を変えてしまいましょう。強みそのものでは勝てなくても、それを伝える「エピソード」で評価を逆転させることは可能なのです。

例を示しましょう。

・ライバルA:「英語は得意でTOEIC 990点、満点です。英会話部で常に英語をしゃべっています」

・ライバルB:「帰国子女で、アメリカとシンガポールに10年住んでいました。英語はTOEIC 900点です」

・ライバルC:「中国とアメリカに留学し、中国語・英語がネイティブレベルで話せます。MBAも持っています」

・あなた:「TOEICは660点ですが、海外の友人が多いです。御社のメイン工場があるベトナムにも友人が多く、現地の友人は御社の製品を……と高く評価していました。実際、私も御社の製品を使ってみて……」

いかがでしょうか。

ライバルA、B、Cの強みや、それを裏付けるエピソードはどれも素晴らしいものです。ただ、採用する側からすると、いずれも「高い語学力」という同じ評価軸に並ぶため、それだけでは入社後にどう働くのかの違いまでは見えにくい。本人たちは差別化できていると思っても、その意味では、いわばどんぐりの背比べになりかねません。

一方、「御社のメイン工場があるベトナムの友人の生の声」などのエピソードはいかがでしょうか。「ベトナムの現地になじみ、本音でコミュニケーションができ、ネットワークも築けそう」「自分から現地の声を取りにいける」という印象につながります。そうした行動から、将来的に周囲を巻き込むリーダーシップも期待できそうだと感じてもらえるかもしれません。これを得意げではなく、フラットに楽しそうに面接の場で伝えることができたら、いかがでしょうか。「ベトナム現地に配属しても、現場でうまくやっていけそう」「ベトナムと本社の間でうまく立ち回ってくれそう」など、ポジティブに一緒に働くイメージが湧いてきますよね。

忘れがちですが、強みや実績が高いほど、自分を大きく見せようという気持ちが強くなりがちです。しかし、就活では、強みの高さそのもの以上に、それを新入社員としてどう生かすかが伝わることが大切です。どれだけ高い実績があっても、それだけを前面に出しすぎると、「入社後にどう活躍する人なのか」がかえって見えにくくなることもあります。また、強みはライバルと被ると本連載では解説してきた通りですが、エピソードは十人十色。人によって違いを出せるものなので、ここで差別化を図れば、強みで負けても逆転して内定を取ることは十分可能なのです。

エピソードは直球ではなく、数字・名詞・具体論を伝えることで「強い」と思わせる

エピソードを語る要諦は、直球を投げないことです。先ほどの例も「海外に友人がたくさんいて、海外や英語に抵抗がありません」と、いきなり思いを直球で伝えても、面接官はそれが本当なのか判断する材料を持ち合わせていません。初対面でいきなり「愛しています」と告白されても、ドン引きされて告白が失敗に終わるのと一緒です。

だからといって、長々と海外の友人のエピソードを語られても、面接官は困惑します。なぜなら、面接では通過・合否が判断されますが、面接官とのやり取りはあくまで会話だからです。一方的に強みやエピソードを伝えるだけでは、独り言になってしまいます。逆の立場で考えるとわかりますが、会話が成り立たない人と一緒に働きたいとは思わないのは当たり前のことですよね。

ではどうすればいいかというと、コツは2つ。エピソードの材料集めと、エピソードの組み立て方です。大事なのは、エピソードの材料集め。ここで9割決まるといっても過言ではありませんので、今回はここを解説します。

コツは、

【1】面接する企業が、どんな新入社員と一緒に働きたいと思っているのかを、その企業のHPやOB/OG、会社説明会などで徹底的にリサーチする

【2】上記【1】で調べた「一緒に働きたいと思われる新入社員像/人材要件」を言語化してまとめる(ただし、このレベルはライバルも同様に調べ、新入社員像/人材要件に沿った強みやエピソードを集めているため、ここで勝負するとどんぐりの背比べになる)

【3】上記【2】の新入社員像/人材要件をもとに、「どんな活動を自然にできていればOKなのか」を洗い出す。今回の例では、「英語でビジネスをバリバリできる」のではなく、「ベトナムの現地の方々になじんでフラットにやり取りできる。そのやり取りを通してフラットなリーダーシップを発揮できる」と仮説を立てる

【4】上記【3】の仮説に沿って、自分のエピソードを洗い出す。もし適切なエピソードがなかったら、無理に話をつくるのではなく、今できる範囲で行動し、実際の経験を積み重ねる。

【5】エピソードの内容を名詞・数字・具体論で可視化する

以上になります。今回の例で適切なエピソードがなかった場合も、面接のために話をつくるのではなく、実際に行動して事実を増やしていくことが大切です。

例えば、SNSなどを活用し、ベトナムの友人をつくって現地の声を聞いてみることも可能でしょう。その友人にメッセンジャーなどを通して質問し、本音を聞けば、自分自身のエピソードにつながる材料が集まります。キーは、嘘をついたり話を盛ったりしないことです。面接官は面接のプロです。SNSでやり取りしただけなのに「ベトナム現地にはよく行くので」などと話を盛ってしまうと、嘘を見抜かれるだけでなく、「嘘をつく人だ」とNG判定されかねません。

素直に「御社にベトナムの工場があることがわかり、御社の製品が現地でどんな評判なのかなと思い、SNSを通して現地の友人をつくり、本音を聞きました」と事実を述べるだけでも、積極性や行動力を評価してもらえるでしょう。エピソードは、過去については事実を語ることが必要ですが、未来については意志や予定として伝えるなら大丈夫です。例えば、実際に「今回、仲よくなったベトナムの友人と今もやり取りを続けていて、卒業旅行ではベトナムに行き、その友人と実際に会ってくる予定です」と結べば、面接だけのためでなく、本音で現地の方々と付き合おうとしていることをPRできます。

エピソードにリアリティと納得感を持たせるためには、名詞・数字・具体論が必要です。「海外の方々」より「ベトナムで御社の商品ターゲットである20代の女性」、「たくさん」より「20名」など、名詞・数字で表現するほうが具体的で、わかりやすく伝わります。「現地の友達みんながすごいと言っていました」より、例えば「御社の乳液について10人に聞いたところ、『しっとりする』『さっぱり使える』などの声があり、実際にリピートしている人もいました」と、事実として確認できた対象や内容を具体的に並べて話すほうが説得力が生まれます。

仮にエピソードが期待したほど面接官の共感を得られなかったとしても、コピペではなく、本音できちんと考えたエピソードであれば、「新入社員をベトナムに配属することはないけれど、動き方がグローバル人材なので、ぜひ一緒に働きたい」など、相手の琴線に響く可能性はあります。いずれにしても、就活はクライマックスを迎えるタイミングです。今から受ける企業は、本命かそれに準ずるレベルの企業も多いでしょう。一社ずつ、きちんとエピソードを用意して臨みましょう。

松本利明

松本利明

外資系大手のコンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパルを得て現職。世界を代表する外資系や日系の大手企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人のリストラと6,500名以上のリーダー選抜・育成に従事した「人の『目利き』」。英国BBC、TBS、日経、AERA等メディア実績多数。

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