視点を変えて物事を見つめ直すことで、地域活性化につなげる「Rethinkフォーラム」。
6月4日(土)には、今年第一回目となるRethinkフォーラムが福島県郡山市で開催。福島県にゆかりのある作家・室井佑月さんがゲストとして登壇し、講演とパネルディスカッションを行いました。コロナ禍での観光事業やSDGsを考えるためにも参考となる内容だったので、その様子をレポートしたいと思います。
→その行動、実はSDGsに繋がってるかも!「IDEAS FOR GOOD」内の事例から、Rethinkの考え方を知ろう! #Rethinkとは?
第一部の講演テーマは「新たな視点との出会い」。女優や作家、代議士の妻、そして母という顔を持つ室井佑月さんが、自身の視点を変えたきっかけを語りました。
幼い頃、父親の仕事の都合で福島県いわき市に住んでいた室井さん。福島について聞かれると「自分の地元に帰ってきたようで懐かしい」と答えました。
「両親がいわき市に住んでいたので、大人になってからも母が亡くなるまでは週に一度くらいの頻度で訪れていました。子供の頃は、毎年おじいちゃん・おばあちゃんがやっている海の家に行っていたんですけど、東日本大震災の後は見かけなくなってしまった。私も歳をとっていくのでお互い様なんですけど、ずっと変わらない夏だったので、やっぱり寂しい気持ちになりますね。」
室井さんにとって、変わらない場所の存在はとても重要だといいます。
「昔訪れてハッとするほど美しかった郡山の三春滝桜は、ずっと変わらないでほしい。例えば学生時代に感動した本は、今読むとまた感じることが違う。好きな気持ちは変わらなくても、ちょっと感想が違うんです。変わらないものに触れることによって、自分の気持ちの変化を感じることができる」と話しました。
また、思春期の頃は悩みやすいタイプだったと振り返りながら、「私は歳をとってから生まれた一人っ子で両親に仕送りをしなければいけなかったし、シングルマザーで子供を育てていたので本当に忙しかった。ずっと同じことで悩み続けて答えが出ないなら、もう考えてもしょうがないなと。悩みごとがあっても一回寝てまた明日考えようというマインドに変わりましたね」と続けました。
さまざまな職業や立場を経験してきた室井さん。その中で自身の転機となった出会いを聞かれると「子供との出会い」と回答。
「息子を産んだことは大きな転機になりました。それまで私はあまり責任感がない方だったのですが、子供を持ってから朝はきちんと起きて夜は寝る生活に変わったし、定期的にお金が入る仕事を受けようという意識に変わりました。」
子供のおかげで考え方を180度変えることができたといい、「自分のためだけだとそんなに頑張れないと思うんですよね。でも好きな人や誰かのためだと、もうちょっと頑張ろうと思える。私は子供を産んでから人間らしくなったと思います。」と話しました。
また、自分の考えを伝える際、大切にしていることを聞かれた室井さんは「いい子ぶらずに取り繕わない」と答えつつ、人に意見を言うときには誰かを巻き込まない方がいいと続けます。
「話をややこしくしないコツは、主語を自分にすること。私はこう思っているという伝え方をすれば、もしも間違えていても謝ればどうにかなりますし、そもそも自分の考えなので謝りやすい」と、室井さん流のアドバイスで講演を締めくくりました。
続く第二部では、室井さんに加え、地元ゲストとして郡山市長の品川萬里さん、栄楽館社長の菅野豊臣さんが登壇。福島民報社編集局長の安斎康史さんが進行する中、「サステナブルな視点から見つけるこれからの観光」をテーマにパネルディスカッションが行われました。
令和元年、県内初のSDGs未来都市に選定された郡山市。SDGs未来都市を目指すことになった経緯を品川市長は、次のように説明します。
「グローバルスタンダードで『郡山はこうだ』と誇れるブランドを目指すために、SDGs未来都市に立候補いたしました。今、郡山市のある実業家がアフリカの水不足問題に貢献しようと、海外で安積疏水の話をしています。郡山市が誇る安積疏水は、“オラが里の素晴らしいシステム”ではなく、グローバルな視点からも模範的なシステムであるということを我々が自覚してSDGsに取り組んでいきたい。」
磐梯熱海温泉で旅館・栄楽館を営む菅野さんは「満身創痍」と厳しい宿泊業の実情を訴えつつ、「これからどう旅館を経営していくか、まさにRethinkが必要。団体客向けの大部屋を少人数向けのベッドルームにしたり、お客様との接触をなるべく減らすようにしたりと今の時代のニーズに沿ったサービスに変えるよう工夫をしています。」と、コロナ禍での取り組みを説明しました。
これを受けて室井さんは「みなさん、郡山に人を呼ぶために色々な努力をしていると感じました」とコメント。「ただ、変化はしても、福島のいいところはなくさないでほしい。地元の人たちはとても親切。いい印象しかない」と福島への思いを語りました。
また、郡山市が注力する体験型の観光として、品川市長は、猪苗代湖の湖畔を利用したサイクルツーリズムについて言及。『ツール・ド・猪苗代湖』というサイクリングイベントを紹介しつつ、「沿道で地元の人たちから手を振ってもらったり声をかけられたりするのが、すごく嬉しいという参加者からの感想をいただくことが多い。地元の人との触れ合いから、またここに来ようという気持ちになる。積極的に『いらっしゃい』と声をかけて、郡山ファンを増やしたい」と話しました。
菅野さんは、磐梯熱海温泉が実施するSDGsを意識したワーケーションのモニターツアーについて、「郡山ブランド野菜の収穫体験、野菜ソムリエによる郡山野菜の楽しみ方講座、朝活エコウォーク、ふれあい牧場で動物との触れ合いとバター作りを通して、単なる体験に止まらないSDGsを学ぶことができるツアーにしたい」と説明。モニターツアーの手応えを感じつつも、実際に開催してみると、自分たちのSDGsへの知識不足という課題も出てきたと述べました。
これからの観光に求められることを聞かれた品川市長は、「薄利多売ではなく、“多利薄売”のビジネス」と答え、「量産はしていない知る人ぞ知る本当にいいものを、観光で訪れた人に知ってもらい、それを拡散してくれるお客さんを大切にしていきたい」と郡山の観光事業の未来に期待を込めました。
菅野さんは旅館の経営者の立場から、「日本文化を大切にしつつ、お客さんに癒しをもたらす旅館を作ること」と回答。「旅館というのは日本文化が体験できる場所。今後は修学旅行を積極的に受け入れて、学生たちが旅館に来て日本文化を学べるようにしたい。コロナ禍でストレスを抱えている人たちを癒すことが旅館の使命だと思っています。」と決意を述べました。
二人の意見を聞き、室井さんは「あそこに行ってよかった、またいきたいという人が増えることは、迎える側にとってすごい喜びだと思います。『ようこそ、よくきたね』という明るい気持ちで心を尽くすことが、これからの観光事業にとって一番大切なことかもしれない」と話しました。
取材・文:安藤茉耶
編集:学生の窓口編集部
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