新社会人からリアルな悩みを募集し、独自の視点からアドバイスをもらうこの「新社会人のお悩み相談室」。今回は、「会議で緊張してうまく話せない」というお悩みに、漫画家の瀧波ユカリさんが回答します。
はじめまして! このたび、社会人のお悩み相談室を担当することになりました、漫画家の瀧波ユカリと申します。
大学を卒業してから16年、今の仕事を初めてから14年。年数だけ見れば立派な社会人……ですが、余裕しゃくしゃくとはいかず、毎月のように新しい問題に直面しております。時代も変わるし、自分の立場も変わる。そんな中で、できるだけ笑顔で元気に仕事ができるよう日々工夫をしております。この相談室では、そういった私の経験を生かして少しでも社会人のみなさまのお役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願いします!
それでは、寄せられたお悩みを見ていきましょう。
このお悩み、すごくわかります。私には小学生の子供がいるのですが、親が集まる懇談会で順番に自己紹介をするときとか、すごく緊張するんですよ。みんな普通のママかと思いきや「えっ、司会のお仕事してますかっ!?」って驚くくらい、全員ソツなく感じよくスラスラと話すんですよね。例えばこんな感じ。
「A子の母です。A子は長女なのに甘えん坊なところがありますが、協調性はあるほうだと思います。下にあとふたりいるので、私はPTA活動の参加は難しいのですが、懇談会はできるだけ出席したいと思います。よろしくお願いいたします」
1分以内の自己紹介に、必要な情報を最小限に詰めてよどみなく話すわけです。このレベルのママさんが5人続いて自分の番になったときは震え上がりましたし、結局私は緊張しすぎてこんな感じになってしまいました。
「えーと……うちの子、わりとしっかりしてるんですよね〜私よりしっかりしてます。ウフフ。私、聞いたこととかすぐ忘れちゃうんで、懇談会の日にちとか、忘れないように気をつけます、エヘヘ。すみません、よろしくお願いします……」
もう、ダメダメですよ。ちょっと場の空気がなごむくらいのノリがいいかなと思ってがんばって冗談交じりで言ってみたのですが、だれも笑わないし。ドキドキして声がうわずってたし。椅子に座り直したあと、椅子がどこまでも地面にめり込んでいくような感覚に襲われました。
私は人と話すのはどちらかというと得意なほうですが、そんな私でもこうなってしまうんです。
どうして私はうまくできなかったのか。それは多分、「みんなちゃんとしてるから、私もちゃんとしなきゃ」って気持ちが強すぎたんだと思います。「うまくやらなきゃ」「いい人だと思われたい」「笑ってもらえるほうがいいかも」という気持ちだけでいっぱいいっぱいで、話し始めるまで「何を話すか」のほうに全然集中できていませんでした。手元にあった紙に言うことを簡単に書いておいてもよかったのに、それもできていませんでした。
他のママさんたちはそこまで気負っていないし、恐らくあらかじめ言うことを決めて紙の端っこに書いておいたりして「こんな感じでいいでしょう」くらいの軽い気持ちで話しているのです。もちろん、ウケも狙っていないので「スベったらどうしよう」みたいな不安とも無縁です。自分が気負わないから、他の人が何を話すかもそんなに気にしていない。私がやってしまったあのダメダメなスピーチも、多分みんななんとも思っていないんです。評価を気にして話す私は緊張して話し、評価を気にしない人たちはリラックスして話していた、というわけなのです。
ということは、評価を気にしないで話せばいいってこと? いやいや、「評価を気にしないで話そう!」と言われても、そうはいかないのが我々人間の性(さが)。ある日突然評価を気にしない性格にはなれないし、評価を気にする真面目な性格がいいほうに作用することも社会人生活では多々あるし。だから、私は私、あなたはあなたのままでいいんです。
どうせ評価を気にしてしまう性分なら、それを生かしてみませんか?「シンプルなトークだ」と感心されることを目標にしましょう。会議などで話すときは、あらかじめ要点を整理して、なるべく短いトークで伝わるようにまとめる。短くてわかりやすいトークができる人は好まれます(結婚披露宴などでグダグダとしゃべり続けるオッサンよりも「おめでとうございます、末永くお幸せに、乾杯!」と短く伝えられる人のほうが素敵ですよね)。
上司の方との会話のときは、シンプルに加えて「返事」と「あいさつ」をはっきり言うように意識してみてください。いい返事とあいさつができる社会人って、それだけで上の人たちからすごく評価されるんですよ。そのふたつができていれば、あとはそんなにうまく話せなくても大丈夫なくらいです。
あとは要点を整理する能力を養うために、「伝え方」について書かれた本をたくさん読んでください。「伝え方」の本はここ数年ブームなので、どれを買うか迷うくらいいろいろありますよ。そうやって得た知識はきっと自信にもつながりますし、これからの長い社会人生活を支えてくれることでしょう。
応援しています! そして私もこれから「伝え方」の本を買って次の懇談会に備えます!
文・瀧波ユカリ
漫画家、エッセイスト。北海道生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。主な著書に『臨死!! 江古田ちゃん』『ありがとうって言えたなら』等。雑誌Kissにて『モトカレマニア』連載中。
Twitter:@ takinamiyukari
公式サイト:Takinami Yukari Official Site
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