「扶養」とはどういう意味? 扶養控除内の金額は?

更新:2022/05/24

ビジネス用語

「扶養(ふよう)」という言葉は見聞きしたことがあるものの、どういう意味か分かりにくいという意見を見かけます。

社会人は年末になると年末調整のための書類を書きますが、このときに「扶養家族」という言葉をよく目にしますよね。

そこで今回は、「扶養」について簡単に解説します。

扶養控除の金額や申告の方法についても解説しますので、この記事を参考に年末調整の書類についても把握して、納税の仕組みについて学んでみましょう!

意味がわからない!「扶養」を簡単に解説


「扶養(ふよう)」とは一般的に、親族から経済的援助を受けながら生活する「養わなければならない家族」のことです。

主に経済的な原因により所得が一定水準以下の「生活能力がない人」が「扶養」に該当するとみなされます。

日本の税金の制度をわかりやすく解説

「扶養」についてより詳しく知るためには、まず日本の税金制度を把握するとより簡単です。

日本の法律では、「税金上の扶養」「健康保険上の扶養」という2つの制度があります。

じつは、この2つは全く別のものです。

どちらの場合でも、「扶養」の対象になるためには条件が定められています。

詳しく見てみましょう。

税務上の扶養

「税金上の扶養」はお金を稼いだ人全員が国に収める所得税や、都道府県または市町村に住む人に課せられる住民税にまつわる内容です。

税金上の扶養では、「扶養家族」のことを「扶養親族」と呼びます。

健康保険上の扶養

物心ついたときに、親と同じ仕様の自分用の健康保険証を渡され、医者に通った経験ありませんか?

つまり「健康保険上の扶養」は、親や配偶者(妻または夫)が会社で加入している社会保険に、追加料金なしで加入できるという意味です。

「健康保険上の扶養」では「被扶養者」と呼び、被扶養者についても保険給付が行われます。

後述しますが、ただ一緒に住んでいるだけでは「扶養」とは認められませんので気を付けましょう。

「税務上の扶養」を簡単に解説

日本における扶養が2種類あることがわかったところで、ひとつずつより細かく見てみましょう。

まずは、税務上の扶養についてです。

税務上の控除される金額は、2022年5月現在、扶養親族の区分によって以下のように変わります。

・一般の控除対象扶養親族※1……38万円

・特定扶養親族※2……63万円

・老人扶養親族※3(同居老親等以外の者)……48万円

・老人扶養親族(同居老親等※4)……58万円

※1……扶養親族のうち、その年の12月31日での年齢が16歳以上の人のことを指します。 

※2……控除対象の扶養親族のうち、その年の12月31日での年齢が19歳以上23歳未満の人のことを指します。 

※3……控除対象の扶養親族のうち、その年の12月31日での年齢が70歳以上の人のことを指します。 

※4……老人扶養親族のうち、納税者またはその配偶者の直系の尊属(父母、祖父母等)で、納税者またはその配偶者と常に同居している人のことを指します。

参考:No.1180 扶養控除 - 国税庁

税務上の扶養におけるメリット・デメリットについて

税務上のメリットとデメリットを以下にまとめています。

メリット

・親や配偶者の納める所得税や住民税等の税金の支払金額が減る
・親の扶養の場合、あなたの税金の支払いが免除される

デメリット

実は、税務上においては扶養に入ることによるデメリットがないんです!

「健康保険上の扶養」を簡単に解説

税金の控除のような直接的なものではありませんが、健康保険上では健康保険に加入して病気やけがの際に必要な給付を受けられます。

このような人を「被保険者」と呼びます。

『日本年金機構』による被扶養者の範囲は以下のとおりです。

参考:被扶養者になれる人の範囲 | 日本年金機構健康保険組合

さらに被扶養者に該当する条件として、被保険者によって生計が維持されていることのほかに以下のいずれにも該当しなければなりません。

収入要件

年間の収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合、年間収入180万円未満※5)で、さらに以下の条件を満たさなければなりません。

・被保険者と同居している……収入が被保険者の収入の半分未満※6

・被保険者と別居している……収入が被保険者からの仕送り額未満

※5……年間収入とは過去1年間の収入ではなく「被扶養者に該当する時点」および「認定された日」以降の年間の見込み収入額です。例えば、給与所得等の収入がある場合にはその月の給与所得が10万8,333円以下となります。

※6……被扶養者の収入が被保険者の収入の半分以上になる場合でも、日本年金機構の判断によって被保険者がその世帯の生計維持において中心的役割を果たすと認めた場合には、被扶養者となることがあります。

同一世帯の条件

配偶者や直系尊属・子・孫・兄弟姉妹以外の3親等内の親族の場合、被保険者と同一世帯でなければなりません。

被保険者に被扶養者がいる場合や被扶養者の追加、扶養から外れる等の変更があった場合、事業主に対して「健康保険被扶養者(異動)届」を提出します。

参考:被扶養者になれる人の範囲 | 日本年金機構健康保険組合

健康保険上の扶養におけるメリット・デメリットについて

健康保険上の扶養については、前述の税務上と異なり、デメリットがしっかり存在します。

メリット

・健康保険に負担なしで加入できる
・厚生年金に負担なしで加入できる
・配偶者の社会保険料の増額がない
・出産一時金を受け取れる(子ども1人につき42万円)
・手取り金額が増える

デメリット

・あなたが将来に受け取れる年金が減る
・出産前後の収入を保障する「出産手当金」が受け取れない
・親や配偶者の加入する社会保険によっては、扶養制度の条件が異なる
・親や配偶者の加入する社会保険によっては、扶養制度が受けられない場合がある

特に会社員かつ独身の場合は気になりにくいかもしれませんが、結婚して配偶者が入っている制度に切り替える可能性がある場合は、デメリットが発生する可能性があると言えます。

年末調整などで見かける「扶養家族」とは?

扶養について大枠を学んだところで、よく年末調整の書類上で見かける「扶養家族(ふようかぞく)」について確認しましょう。

「扶養家族」とは、その対象となっている配偶者以外の家族のことを指します。

例えば、家族のうち父親だけが働いて収入を得ているとすると、子どもや祖父母・孫は「扶養家族」に当たります。

妻は扶養家族には入らず、後述する配偶者控除の対象です。

「扶養家族」の定義

日本の「所得税法」では、扶養の対象(扶養親族)になる人を次のように定義しています。

出典:所得税法(昭和四十年法律第三十三号)

文中の「居住者」というのは税金を納める人のことです。

上の例でいえば「父親」に当たります。

また、19歳以上23歳未満の者を「特定扶養親族」、70歳以上の者を「老人扶養親族」と定めています。

同じ家に住んでいなくても対象

所得税法の中に「生計を一にする」という文言があります。

「生計を一にする」としていますが、必ずしも同じ家に住んでいなくても扶養家族控除を受けられる状態です。

また、仕送りに頼って一人暮らしをしている大学生の子ども、病気などで入院している高齢の親なども扶養親族と認められる場合があります。

「扶養家族」の定義をまとめると?

「扶養家族」をまとめると、以下の条件を全て満たしていることが条件となります。

上記の条件を満たしている者は控除対象の「扶養親族」となり、居住者は「扶養控除」として一定額の所得控除を受けられます。

つまり、扶養親族がいる人は、税金が安くなるということです。

次のページ扶養家族の申告方法とは?

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