【給与明細のトリセツ】よく聞く控除って何? 給与明細の正しい見方を知ろう

更新:2022/12/27

給料・年収


「給与明細の控除って一体何?」
「控除額が多すぎる気がするんだけど…」

給与明細の控除で気がかりなことがあっても、お金が関わるだけに同僚に聞きづらかったり、ましてや会社にも相談しづらいーーこんなことありますよね。学生時代のアルバイトならさほど気にならなかったものの、社会人になると急に存在感を増してくるのが、給与明細の「控除」項目です。

そこで今回のトピックスはこちら。

・社会人になったら知っておきたい給与明細の見方
・特に気になる「控除」項目は深掘り解説!

控除の意味が分からない、控除が多すぎる、控除がマイナス表示されているなどのお悩みも解決していきますので、是非参考にしてください。

給与明細の「控除」とは?

給与明細には、大きく分けて「支給」「控除」「勤怠」の3つの大項目があります。このうちの「控除(こうじょ)」とは、一言でいうと「差し引かれるもの」の明細が書かれたグループです。昔ながらの言い方では「給与天引き」とも呼ばれます。控除と聞くとなんだか難しそうですが、「給与から引かれる」項目だと覚えておきましょう。

支給

支給とは「もらえる」明細が書かれたグループ。支給の基本となる「基本給」に加えて「残業手当」など、当月発生した各種手当が記載されます。

控除

健康保険・厚生年金といった社会保険料や各種税金など、法令にもとづき必ず支払わなければならない項目が記載されます。

そのほか、給与天引きで貯金をしたい人が「財形貯蓄」に申し込めばここに追加されます。「旅行積立」「〇〇会費」など、会社との約束(協定)によって差し引かれる項目があることも多いです。本記事ではこの控除項目について詳しく掘り下げていきます。

勤怠

勤怠(きんたい)とは当月の出勤状況が書かれたグループ。「出勤日」「有給」「時間外労働時間」などが記載されています。

労働基準法によって、「時間外労働時間」には通常の時給よりも高い金額を支払わなければなりません。「時間外労働時間」の記載がある場合には、「支給」項目の「残業手当」も加算されているはずです。

※時間外労働について詳しく知りたい方は、こちらの厚生労働省のページを参考にして下さい。
厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準」

給与明細の控除項目を徹底解説!

ここからは給与明細の「控除」について、詳しく解説していきます。先ほどお伝えしたとおり、控除項目とは「差し引かれる項目」のことです。具体的にどんな項目があるのか挙げてみましょう。

健康保険料・厚生年金保険料

●健康保険料
病気やケガで病院にかかった時に出す「健康保険証」でおなじみ、公的な医療保険制度にかかる保険料。

●厚生年金保険料
サラリーマンが加入する公的年金にかかる保険料。

健康保健料と厚生年金保険料の金額は全国均一ではなく、加入する健保によって多少異なります。参考として「協会けんぽ:東京都」の場合は、

・健康保険料:4.905%
・厚生年金保険料:9.15%

※令和4年3月分〜適用分・個人負担分のみ

となり、合計すると給与額のおよそ14%ということになります。

ちなみに、保険料は個人負担分だけではなく、会社も同額を負担することになっています。半分は会社が持ってくれていると考えると、ちょっとおトクですね。

雇用保険料

雇用保険料とは、会社を退職した時の「失業給付」や「育児休業給付」などを受けられる公的な労働保険制度にかかる保険料のこと。

・雇用保険料率:0.5%

※一般の事業・労働者負担分のみ。
※令和4年10月〜適用分


ここまでの「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」を3点セットにして「社会保険合計」として合算するのが通例となっています。この社会保険合計額は税金がかかりませんので、総支給額から差し引いて、「課税対象額」を算出します。(他にも非課税項目があれば一緒に差し引きます。)

所得税

給与をもらうということは私たちにとって「所得」となるため、所得税がかかってきます。給与の支給と同時に所得税を天引きするシステム(=源泉徴収)になっていて、意識せずとも税金を納めたことになっているというわけです。

所得税は、先ほどの「課税対象額」に対してかかってきます。計算方法は複雑ですが、国税庁から便利な早見表が出ています。例えば令和4年分の源泉徴収税額表によれば、

<例>
課税対象額が200,000円だった場合
⇒所得税4,770円

※扶養親族0人として

このくらいが目安となります。

住民税

住民税とは「道府県民税」と「市町村民税」をまとめた総称のこと。あなたが住んでいる地域の教育や救急、ゴミ処理といった行政サービスのための税金です。

なお、住民税は「前年の所得」をもとにして計算されるものです。ですから社会人1年目は住民税がかからないケースがほとんどでしょう。今後の目安として、例えば給与収入の年間総額が300万円とすると、住民税は月々およそ1万円程度となってきます。

その他控除

ここまでの控除項目は、法令にもとづき必ず支払わなければならない「法定控除」と呼ばれるもの。このほかに会社との約束(協定)によって差し引かれる項目もあります。

・旅行積立金
・各種生命保険料
・財形貯蓄
・立替金
・互助会・親睦会 など

これらは「その他控除」のところに記載されます。

控除計

「控除計」「総控除額」「控除額総計」などと書かれている部分は、ここまでの控除項目を全部足した額のこと。社会保険・税金・その他控除を全て合算した額ということになります。総支給額から、この控除計を差し引いたものが、手元に残る「手取り」となります。

給与明細の控除項目にマイナスがある場合

ここでは、給与明細の控除項目にマイナス表示の金額があった場合について解説します。

控除項目とは本来「差し引かれる項目」=「マイナスされる項目」が書かれている場所です。ここにマイナス表示があるということは、「マイナスのマイナス」つまりプラスとなり、その分支給額は増えることを意味しています。

通常、控除項目の中にマイナス表示が出てくることはあまりありませんが、次のようなケースでマイナスが出現することがあります。

12月の年末調整

代表的なケースが、12月の年末調整です。毎月控除されていた所得税は、実は決まった計算式にもとづく「概算金額」であり、年1回の年末調整で正式な納税額が確定するしくみになっています。

この年末調整では「保険料控除」「住宅ローン控除」などさまざまな計算が行われ、結果的に何万円も戻ってくるというケースが多いのです。
(反対に、追加徴収されるケースもありますのでご注意を)

年末調整で戻ってくる金額は、控除項目の一番下あたりにマイナス表示で記載されます。年末にもらえるプチボーナスのようで、ちょっと嬉しいですよね。

給与計算の間違い

給与計算は細心の注意を払って行われているはずですが、まれに計算ミスによってマイナス表示となることもあります。例えば「先月の社会保険料を多く引きすぎてしまった、2,000円返金したい」といったケースで「ー2,000円」などと記載されます。

マイナス表示がどの項目の修正なのか分かりづらいこともありますが、よく見ると給与明細の「備考」欄に書かれていたりします。よく確認した上で、それでも分からない場合は給与担当窓口に確認してみるといいでしょう。

立替金の精算

「立替金は給与明細の中で精算できる」と取り決めている会社もあるでしょう。その場合、控除項目の中に「立替金」という項目があります。

●会社が3,000円立て替えた場合
⇒控除項目「立替金:3,000円」

●あなたが3,000円立て替えた場合
⇒控除項目「立替金:ー3,000円」

このように記載されます。本来会社が購入すべきものを、緊急のためあなたが立て替えて購入した、といった場合に「立替金:ー3,000円」として返金してもらうことができるのです。

控除額が多すぎる?給与計算のカラクリ

「私は最近残業が減った。収入が減ったのに控除額が多すぎる!」

給与の支給額が減ったのに、控除額はあまり減らないといったケースがあります。手取りがぐんと減ってしまうため困りますよね。

ここでは変動の激しい「残業代」がほとんどなくなったと想定して、先ほどの控除項目への影響について考えてみましょう。

●健康保険料と厚生年金保険料

この2点の定期的な改定は年1回、9月です。4月から部署異動により残業がなくなったとしても、8月までは現行の保険料を支払うことに…。ここが最も辛いポイントです。

「定時改定」のほか「随時改定」という制度もあるのですが、残業代はそもそも変動しやすい項目とされており、残業代の変動では改定されないのです(辛いですが)。


●住民税

住民税は「前年の所得」をもとにして計算されるというのが大きな特徴。前年度にたくさん残業をしていた場合は、次の年の住民税はどうしても高くなり、途中で下げることはできません。

ちなみに住民税の改定は6月です。前年1月〜12月の所得をもとに計算されます。

このように、給与の「支給」と「控除」は常に連動しているとはいえず、タイムラグのある項目が手取りを圧迫してしまうことも。ではどうしたら良いかということですが、「控除」の改定が済むまで何とか持ちこたえるしかありません。9月には社会保険が改定されますので、そこを乗り越えればだいぶ楽になるはずです。

また、事前に対策できる余裕があるならば、あまり残業代を最大限に使わなくても済むような生活スタイルに変えておくことがベスト。残業代(時間外手当)とは流動的なものだと認識しておくことで、今後の給与の変化にも対応しやすくなるでしょう。

給与明細の「支給」項目も忘れずチェック!

ここまで、給与明細の「控除」項目について詳しく解説してきました。一方で「支給」項目も給与の主役となる部分ですので、正しい見方をおさえておきましょう。

支給項目の柱となる「基本給」

「支給」の中の「基本給」は、給与の基礎部分ともいえるもの。基本給は定期的な昇給だったり、「一般職→管理職」への昇進などで上昇していくのが一般的。毎月の給与の柱として必ずもらえる金額ですから、ここをしっかり確保できれば収入の安定に繋がりやすくなります。

例えば、

A:基本給20万円で、これに諸手当(後述)が付いて支給合計25万円
B:基本給10万円で、これに諸手当が付いて支給合計25万円

では、労働条件が全然違うと考えなければなりません。諸手当の中に、例えば「時間外手当」すなわち「残業代」が含まれていた場合には、残業が少ない月は給与の支給額が大幅に減ってしまうでしょう。

とはいえ「資格手当」「役職手当」といった安定的な手当なら、基本給と合算的に考えることもアリです。ただし賞与の支給額を「○カ月分」と表現するときには「基本給」を計算の基礎とすることが多いです。ここは大切なポイントなので押さえておきましょう。

基本給の他にも「支給」項目には各種手当が記載されます。その内容は会社によって異なりますが、ここでは一般的な諸手当についてご紹介しておきます。

残業手当

決められた時間を超えて働いたときに支給されるのが残業手当。法定労働時間を超えた部分に対しては、割増賃金が適用されます。法定休日にやむを得ず出勤した場合にももちろん支払われます。

役職手当

何らかの役職に就いている場合には、その役職に対する手当が支給されることがあります。役職に就くと基本給が上がることもありますが、基本給に役職手当を付加していくパターンもあります。

住宅手当

家賃補助や持ち家への補助など、住宅に関する会社からの支援金です。会社があらかじめ定めた規定に基づき支払われます。

資格手当

業務に役立つ、会社にとっても有益な資格を持っている場合には「資格手当」が支給されることも。また、会社が推奨する資格を取得するためのセミナー費用などを「資格手当」として支給することもあります。

通勤手当

通勤にかかる費用は特別に高額でない限り、非課税(限度額があります)の通勤費として支給されます。

他にも、寒冷地などで支給される「地域手当」(灯油など、防寒のための費用がかさむため)、配偶者や子供の人数に応じて支給される「扶養手当」(家族手当)などもみられます。

まとめ

今回は、給与明細でも特に気になる「控除」項目を中心に解説してきました。大きく分けると健康保険料などの社会保険、そして税金、その他控除と3グループに大別されます。項目が多くて面食らってしまうかもしれませんが、公的かつ必須の控除であることが多いです。

給与明細を正しく読み取ることは、社会人としての第一歩。手取り額だけ見て終わりではなく、是非「支給」や「控除」の項目にも目を通してみてください!

文:マイナビ学生の窓口編集部

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