新聞や雑誌の広告、あるいはテレビのCMなどで、誰もが一度は目にしたことのある「養命酒」。体調を崩した時などに親に飲まされて「カ〜〜〜ッ」となった経験を持つ方も多いのではないでしょうか。疲れた時の滋養強壮にはもちろん、冷え込む季節にはポカポカと体を温める薬用酒として広く愛飲されています。
しかし商品の認知度とは裏腹に、意外と知られていないのがその発祥について。いつから販売されているのか? どんな理由で作られたのか? さっそく養命酒製造株式会社の、マーケティング担当の方にお話を伺いました!
「養命酒が生まれたのは安土桃山時代の末期、元号でいうと慶長(1596〜1615年)の頃です。信州は伊那の谷(現在の長野県南部)で誕生しました」
なんと、養命酒の歴史は400年以上! 日本史でいうと関ヶ原の合戦の頃ですかね。かの徳川家康も飲んでいたらしいです。知名度があって、これほど歴史の長い商品も珍しいのではないでしょうか。さて、これで「いつ?」は分かりました。そして次は「なぜ?」に迫ってみますが、折角なのでココからは「おとぎ話」調でいきましょう!
むかしむかし、雪が降りしきる晩のこと。その地方の庄屋であった塩沢宗閑(しおざわそうかん)は、偶然、行き倒れている旅人を見つけました。宗閑は、雪に半分埋もれた旅人を掘り起こし、急いで家に運んで暖をとらせました。
宗閑の手あつい看護の甲斐あって、旅人は生死の境からみごとに生還。さらに予後を案じた宗閑のはからいで、旅人はそのあとも塩沢家の屋敷に3年ほど、客人として留まることになりました。宗閑の懐の広さに、旅人はとても心を打たれたそうです。こうして旅人は、宗閑や村人たちの温かい情に触れ、心身ともにユッタリとした時を過ごしました。しかし、いつまでも甘えているワケにはいきません。ある日、ついに屋敷を去る決心をした旅人は、宗閑にこんな言葉を伝えました。
『私はあなたから受けた恩や情けに、どうしても報いたい。しかし、流浪の身である私は情けないことに、お渡しできるような金品をまったく持っていないのです。ですからせめて、万病に効く薬酒の製法を、あなたにお教えします』
旅人は薬酒の作り方を宗閑に伝えると、すぐに屋敷を去って行きました。旅人がいなくなったあと、宗閑はすぐに薬酒を作りはじめ、時には、彼が示した数々の薬草を集めるため、自ら赤石山脈の奥深くまで入ったそうです。
月日は流れ、苦心の末にようやく薬酒を完成させたのが1602年のこと。『世の人々の健康長寿に尽くす』という願いから、宗閑はこの薬酒を『養命酒』と名づけたそうです。こうして養命酒は、塩沢家に代々伝わる一子相伝の秘薬として製造され続け、近隣の村々の貧しい人や、体の弱い人々に分け与えられたといいます。めでたしめでたし。
400年の時を越え、現在も広く親しまれている養命酒の発祥が、こんなおとぎ話のような不思議なものだったとはホントにビックリですね! これからは養命酒を見るたびに、宗閑と旅人の心温まるエピソードを思い出して、カラダもココロもポッカポカになるかもしれませんね。
文●西山大樹(清談社)
取材協力/養命酒製造株式会社
http://www.yomeishu.co.jp/
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