「就活を今年はやめて来年にしたいんだけど?」のワナ

更新:2016/01/28

社会人ライフ

「就活を今年はやめて来年にしたいんだけど?」のワナ

正直言うと「まだ就活をする気になれない」「自分が何に向いているのかわからない」という就活生も多いだろう。いや、それが多数派? かもしれない。もしくは何社か受けたあと「人に評価されるのは苦痛」「自己PRなんてそんな恥知らずなことができるか!」などと感じ、就活をやめたくなる瞬間もあるだろう。それはそうだ。目の前の人に評価され続けるのが楽しいわけはない。



しかし、就活をしないまま卒業する「既卒者」になると、一般的に就活は不利になってしまうようだ。マンガ『ANGEL VOICE』の名セリフで「今日逃げたら明日はもっと大きな勇気が必要になるぞ」というものがある。就活もこれと同じなのかもしれない。(既卒者向けに、既卒を活かす術についても書くので、既卒者には恐縮ですが、最後まで読んでください)



そもそも、既卒の就活生は、どんな理由があって大学卒業後も就活を続けるのだろう? 



■学生時代に内定をもらった学生が就活を続ける理由は以下の通り。

・一度就職したが、退職若しくは在職しながら再度就活を行っている 27.0%

・内定先の労働条件(勤務地・就業形態)や福利厚生に不満があったので辞退した 18.9%

・志望度の高い業界・企業への夢を捨てられなかった 14.4%

・内定先の評判が悪かったので辞退した 9.7%

・単位が足りず卒業できなかった 6.5%

・内定先の仕事内容が自分の希望する仕事とは異なっていたので辞退した 5.0%

・内定取り消しにあった 3.5%



■内定をもらえなかった学生の回答。

・活動し続けたが内定を貰えなかった 48.8%

・就職活動に対する自信を無くし、途中で活動を終えてしまった 13.4%

・どうしても入社したい企業(業界)があり、次年度に再挑戦するから 6.4%

・行きたい企業が見当たらなくなり、途中で活動を終えてしまった 8.8%

・公務員志望に変更したが受からなかった 8.7%



多くの学生が「自分が納得する企業から内定をもらえなかった」もしくは単純に「内定をもらえなかった」という理由で既卒になったことがわかる。

しかし、既卒になると、こんな不便を感じることになる。



卒業後の就活において「既卒者を採用対象としている企業を探すのに苦労した事はありますか」という問いに対し、「はい」は78.8%、「いいえ」は21.2%しかいない。

さらに、企業探しに苦労した結果、こんな行動をとっている。下記は「卒業後の就活で、エントリー先、応募先の選び方にどのような変化がありましたか?」(複数回答)という問いへの回答だ。



・在学中より業界の幅を広げた45.8%

・在学中より業界の幅を絞り込んだ9.6%

・在学中より職種の幅を広げた29.7%

・在学中より職種の幅を絞り込んだ9.8%

・在学中より大手企業中心に活動するようになった3.6%

・在学中より中堅中小企業中心に活動するようになった21.5%

・在学中より勤務地の幅を広げた14.2%

・在学中より勤務地の幅を絞り込んだ12.8%

・企業情報を収集する手段を増やすようになった18.6%

・身の丈にあったような企業を選択するようになった21.8%

・既卒者を受付けている企業を選ぶようになった68.4%

・その他4.8%



日本は、経歴のスキマを許さない社会。転職時も、働いていない期間があると「この間は何をしていたんですか?」などと聞かれ「本当は仕事が嫌いなんじゃないだろうか?」などと邪推されてしまう。



もちろん合理的ではない。政府は企業へ「卒業後3年以内は新卒扱いとすること」と要請している。しかし、まだ浸透はしていない。経団連の調査によれば、約8割の企業が「既卒者も新卒採用の扱い」と回答している。それでも残りの2割は要請に応じていない。しかも、これはあくまで「指針」だ。表向き応じればよく、実際に既卒者を採用しなくてもよい。各採用担当者が、日本社会に根付いた「経歴にスキマがある=人材として1ランク落ちる」という価値観を捨てているかと言えば、その証拠はどこにもない。



ただし!

経験則に過ぎないが、「既卒になった=不利」、とばかりも言えないのだ。実際に、私が知っている学生の中には、既卒で志望の企業に入った例が数多くある。

じつは、既卒者の方が有利な点がひとつだけあるのだ。

それは「面接で1問だけ、聞かれることが決まっている」こと。

既卒者はほぼ必ず「なぜ既卒なのか」と質問される。これをフックに、自分をPRできればよいのだ。



私は職業柄、今まで多くの面接官にインタビューしてきた。その結果「なぜ既卒に?」という質問に対しては、反省の弁を述べるのでなく、堂々「攻めの既卒」であることを伝えると好印象だということがわかった。



例えば「じっくり本を読む機会がほしかった」「海外でいろんなことを学んできた」「様々なアルバイトをし、自分と向き合い、自分が何に向いているかを考える時間がほしかった。そこでつかんだものは〜」などと、あえて既卒になった理由を、前向きに語るのだ。

既卒者はぜひ、このように「既卒を活かす就活」をしてほしい。



文●夏目幸明(経済ジャーナリスト)



夏目幸明/プロフィール

「マネジメント、経営、技術の3つが見えれば企業が見える」を旗印に様々な企業を取材する経済ジャーナリスト。大学・専門学校で就活支援、マーケティングなどの講師をつとめる。講義は「資格の学校TAC」などで聞けるほか、ネット放送で「就活SHOW」を行う。著書は「社長あるある」(朝日新聞出版社)など



【調査名】2013年度マイナビ既卒者の就職活動に関する調査

【調査方法】9月3日時点のマイナビ2014会員の内、既卒の登録者にWEB DMを配信

【調査期間】2013年9月3日(火)〜9月16日(月)

【有効回答数】 384名

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