夏目漱石、芥川龍之介、太宰治、川端康成、ヘッセにヘミングウェイ。誰もが知っている文豪の、それぞれの代表作は言えるが、実際に読んだことがある作品って、意外に少なくない? 一般教養として知っておきたいこれらの作者やその作品だが、いざ読み始めようと思っても、実は結構な長編で、なかなか時間が取れないものだ。
【現代にも残る「文壇バー」の名残】
その昔は、文人墨客が集い、夜な夜な文学談義を繰り広げる「文壇バー」なるものがあった。今ではすっかり無くなってしまったが、その精神や文化はまだ残っており、酒の席では、ちょっとした文学話が始まることもしばしば。どこの会社にも、かつての「文学青年」だった上司の一人や二人はいるもの。そんな場面に出くわしたときに、「読んでないっス」で、会話が弾むチャンスを逃してしまうのはもったいない。それに、文学の話になったときに、さらっと感想やあらましを答えられれば「なんとなく教養があるっぽい」雰囲気を出すこともできる(はず)。
【詳細は文学好きに解説させるのが、文学談義のコツ】
そこで、これだけは知っておきたい文学の名作のストーリーを、140字にまとめてみることに。今回選んだのは、夏目漱石『吾輩は猫である』、太宰治『人間失格』、ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』の3作品。細かい描写や登場人物までは追えないが、そこは文学好きに解説させてしまえばOK。自分の文学論を述べたい(特に酒の席で)文学青年にとって「読んだことはあって、ストーリーは知ってるけど、文学的な描写や表現はあまり詳しくないっス」というのは、恰好の話し相手なのだ。ということで、この3作品を未読の方は、下記を参考にされたし。
【「吾輩は猫である」/夏目漱石】
「吾輩」は、中学校の英語教師・珍野苦沙弥(くしゃみ)の家で暮らす猫。猫だてらに文芸や哲学に精通していて、珍野家に集まる寒月や金田ら俗物紳士の芸談や奇談に耳を傾けては、皮肉交じりの感想を語る。最期は、持ち前の好奇心から客の残したビールを飲んで酔い、水瓶に落ちて溺れて死んでしまう。
【「人間失格」/太宰治】
青森に生まれ、東京へ進学した大庭葉蔵は、酒と煙草、淫売婦におぼれる生活を送る。心中未遂や婚約者の不貞などの経験から、さらに荒んだ生活を続け、やがて喀血をし、モルヒネ中毒に陥った大庭は、家族により「脳病院」へと入院させられる。そこで自分が「人間、失格」であることを自覚するのであった。
【「車輪の下」/ヘルマン・ヘッセ】
成績優秀なハンスは、首都の神学校へと進学する。しかし、そこでの詰め込み式の教育と、規則ずくめの寄宿生活に嫌気がさし、学校をやめてしまう。地元へ帰って機械工として働き始めたハンスだったが、期待を裏切ったことに対する罪悪感や劣等感から、酒に酔い、その帰り道に川へ転落し、溺死してしまう。
文●高橋ダイスケ
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