ニュースの教室:13限目「トヨタが東北で世界一目指す」 ―再生のスタイル―

2012/04/18

対人マナー

ニュースの教室:13限目「トヨタが東北で世界一目指す」 ―再生のスタイル―

トヨタが7月に宮城県で新会社を作る。

東北の車体組み立て会社、部品製造会社を統合し、

世界一の小型車生産拠点にするためだ。

トヨタが東北と再生への二人三脚を組む意味は何だろうか。







「今後も東北でのモノづくりに力を入れていく」

トヨタの豊田章男社長は震災直後、そう表明していた。

そして震災1ヶ月後には「トヨタ系の部品工場が東北へ集積」

との記事が早くも報じられた。(11年4/23日経)



「東日本大震災の影響ではからずも中断していた、

自動車部品会社の東北新工場の建設計画が再び前進を始めた。

アイシン精機グループや内装部品の大手が、

相次いで新増設工事を再開した。

地域経済復興に向け地元自治体も期待を強めている。

ただ、工事再開のメドが立たない企業もあり、

生産水準の本格的な回復にはまだ時間がかかりそうだ」



しかし年末には「トヨタが東北に新会社を設立」と報じられた。

新会社を、小型車の開発から生産までを一貫して手がける、

総合車両メーカーにまで発展させる構想だという。

その拠点に宮城県を選んだ模様だと伝えられ、

震災にあえぐ地元は一気に沸き立った。(11年12/14日経)



翌日、新会社社長に就任予定の白根武史専務が記者会見をし、

「新会社で世界一の小型車づくりを目指したい」と抱負を語った。

小型車は世界の自動車メーカーが今後の主戦場とする分野だ。

そこで世界一を目指し、それを東北発にするというのだ。



関東自動車、セントラル自動車、トヨタ自動車東北を統合し、

新会社の社名は「トヨタ自動車東日本」と決まった。

本社は宮城県大衡村(おおひらむら)に置く。







関東自動車にあった産学官の技術開発機関の人員の増強。

13年4月には、技術者訓練校「トヨタ東日本学園」の設立。

「東北現調化センター」を新設して地元企業の発掘。



トヨタは矢継ぎ早にこうした構想を打ち出していった。

この動きに呼応して、宮城県の村井嘉浩知事は、

自動車産業振興室の増員など組織改編も検討する、と表明した。

「トヨタが現地調達率を高めるためには、

東北全体でお手伝いすることが重要だ」(11年12/15日経)



そして先週には東北大との、次世代車の共同研究が発表された。

トヨタが持つ自動車の設計や制御のノウハウに、

東北大の電気、情報通信、材料などの先端技術を組み合わせ、

研究成果の試作に地元企業が参画する、というものだ。



電気自動車関連では車輪内蔵型モーターの性能向上や、

プラグなしで充電できる非接触給電スタンドの開発に取り組む。

電気バスを試作し、被災地の公共交通機関に活用する。

走行中の自動車が天候や渋滞の情報を自動的に発信し、

他の車両に伝えるシステムの開発にも着手する。



工場の生産効率化では東北大のロボット技術を応用する。

画像認識技術と高精度センサーを駆使して、

部品を搬送する機械が自律走行するシステムを開発する。



新車販売台数世界一になって、トヨタは組織の脆弱性を見せた。

そのトヨタが東北の再生に並々ならぬ力を貸すことで、

同時に、自らの再生を図ろうとしているようにも見える。



「世の中の多くの人の為に、又お国の為にと言う考えで、

一生懸命に働いてゆけば、食う物も着る物も自然と随いて来る」

トヨタの源流を作った豊田佐吉の言葉だ。



佐吉が「意味のある働き」を求めたように、

トヨタは「意味のある再生」を求めて、

東北との二人三脚の道を選んだのではないだろうか。





文●楢木望

ビジネスエッセイスト/ライフマネジメント研究所所長

『月刊就職ジャーナル』編集長、『月刊海外旅行情報』編集長を歴任。その後、ライフマネジメント研究所を設立、所長に就任。採用・教育コンサルタント、就職コンサルタント、経営コンサルタント。著書に『内定したら読む本』など。

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