最近、メディアの取材で「リストラされないためのマル秘テクニック!!」みたいなものを聞かれることが多い。時勢柄そういうネタの需要があるのはわかるが、結論から言うと、そんなテクニックなんて存在しない。
誰をリストラ(厳密には配置転換や子会社出向など)するかという選択は、日頃の査定成績や勤務態度によって、すでに白黒付けられているもの。だから、もしテクニックがあるとすれば、それは「日頃から一生懸命マジメに働け」というなんとも味気ないものになる。
ただし、「どのように一生懸命に働くべきか」という部分ではテクニックがあるので、それについて説明してみたい。
コア業務のノウハウを学べ
企業が人員を削減しようとしたとしよう。育成に長期間かかるような業務に携わっている人材はなるべく残しておき、そうでない単純業務の担当者の肩を叩こうとするはずだ。コア業務のノウハウは企業にとってかけがえのない財産なのであるから、そうなるのは当然だろう。つまり、その貴重な財産を自分の中に詰められるだけ詰めておけ、ということだ。
まず、入社したらざっと職場を見回してみるといい。どんな職種であっても、2、3の引継ぎだけで誰にでも出来る作業と、数年間の経験が必要な仕事が混在していることに気づくはずだ。間違いなく新人は前者から割り振られるだろう。それは楽だし、残業も徹夜も少ないに違いない。
ただし、それだけをこなすようでは、「いつでも置き換え可能な人材」になってしまう可能性がある。多少無理をしてでも「頭を使う面倒くさい仕事」に顔を突っ込んでいくべきだ。
僕自身が目にしたケースを紹介しよう。ある工場の総務部での話だ。工場集約に伴い、複数の総務部が統合され、余剰人員のリストラが実施されることになった。給与や社会保険料の計算といった通常の事務作業だけを担当してきた人間は、真っ先に肩を叩かれた。そういう業務は少し教えれば誰にでもできるし、経験者はいくらでも中途採用できる。
一方で、人員計画や予算管理といった面倒くさい業務をこなしていた人間は残されることになった。そういう業務を短期間で引き継ぐことは不可能だし、過去の経緯はお金では買えない貴重な財産だからだ。フレッシャーズ諸君がどう生きるかは個人の価値観ではあるが、これからの時代、どちらがリスクが高いかは明らかではないだろうか。
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。一九七三年山口県生まれ。
東大法学部卒業後、富士通入社。以後、人事部門にて、新人事制度導入直後からその運営に携わる。二〇〇四年独立。『人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見をメディアにて発信し続けている。『若者はなぜ3年で辞めるのか』(光文社新書)は2、30代ビジネスマンの強い支持を受け、40万部を超える大ベストセラーに。08年出版の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。他に日本型「成果主義」の可能性』(東洋経済新報社)等。
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