「辣腕を振るう」の「辣腕」って? 「敏腕」との違いや正しい意味、使い方を解説【例文つき】

2024/05/28

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「辣腕を振るう」「彼は辣腕家だ」など、ビジネスシーンで非常によく聞かれる「辣腕」。能力がある人を意味する言葉は、「敏腕」をはじめ他にもいろいろありますが、どのような違いがあるのでしょうか。また、どんな場面で使うとよいのでしょうか。意味を詳しく掘り下げながら、適切な使い方を考えてみましょう。

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「辣腕」とは?

「辣腕」にはどのような意味があるのでしょうか。

「辣腕」の意味

「辣腕」は「らつわん」と読み、次のような意味があります。

【辣腕】らつわん
物事をてきぱきと処理する能力のあること。敏腕。すごうで。うできき。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)


このように「辣腕」はやるべきことを迅速に処理する能力を表す言葉です。またその能力がある人のことを「辣腕家」、経営者であれば「辣腕の経営者」と言ったりしますね。いかにも切れ者という印象を与える言葉です。

「辣腕を振るう」の意味

「振るう」は「能力を十分に発揮する」という意味。「辣腕」を生かして物事を処理することを「辣腕を振るう」と言います。「彼は着任するやいなや辣腕を振るった」のように使います。

「敏腕」との違い

「辣腕」の類語に「敏腕」があります。

【敏腕】びんわん
物事をてきぱきと処理する能力があること。うできき。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)


先に挙げた「辣腕」の意味にも「敏腕」とあり、辞書によれば、ほぼ同じ意味です。どちらも「物事をてきぱき処理する能力」という意味で使えますが、細かいニュアンスの違いはあるのでしょうか。「辣」と「敏」の漢字を見比べてみましょう。

【辣】ラツ
1)味がぴりっとからい。
2)てきびしい。ひどい。また、すごい
(『例解新漢和辞典』三省堂)
【敏】ビン・ミン・さと-い・と-し
1)すばやい。すばしっこい。とし。
2)頭の回転がはやい。感覚がするどい。さとい。
(『例解新漢和辞典』三省堂)


「辣腕」と「敏腕」は基本的には同じ意味ではあり、どちらかが片方より優れているということはありません。しかし、もしもニュアンスで使い分けたい時には、この漢字の意味合いで判断しましょう。

ピリリと辛い「辣油」や「辛辣(しんらつ)」の「辣」。この字を使った「辣腕」からは、辛口で手厳しい印象を受けます。甘えや妥協のなさ、才覚、すごみ、迫力を感じさせることもできそうです。

いっぽう「敏」は、行動や頭の回転が速く、感覚が鋭い印象を受けます。周囲の空気を察知したり、時代の波に乗りスムーズに着々と事を成し遂げたりする印象を与えることができそうです。

あくまで漢字の違いによるニュアンスの差ではありますが、躊躇なくリストラを行うような場面では、「敏腕」よりも「辣腕」の方がよりふさわしいと言えそうですね。それぞれをふさわしい文脈で使えば、伝えたいことをより豊かに表現できるでしょう。

「辣腕」の使い方・例文

「辣腕」のニュアンスも踏まえて、ビジネスシーンで実際に使ってみましょう。次のような場面が考えられます。

転属してきた社員を紹介する時

辣腕を発揮することを「辣腕を振るう」と表します。頼りになるリーダーや社員を紹介する時に使えます。

本社から転任してきた〇〇さんは昨年のプロジェクトで辣腕を振るったことで知られています。

人物評価を行う時

てきぱきと処理する能力を表すことから、ゴールが決まっている業務や、潤沢な時間がない業務などでスピーディに対応する様子を表す時に使えます。

これ以上赤字が続くと後がない崖っぷちの状態でしたが、彼が皆を鼓舞しつつ辣腕を振るったおかげで、なんとか黒字化にこぎつけました。

企業の取材記事などで

辣腕を振るう人のことを「辣腕家」といいます。事業再生など厳しい局面で頼りにされる人物であることを表すのにぴったりです。

絶不調だったM社は事業再生の辣腕家〇〇氏の就任後、3年間でV字回復を成し遂げた。

就活の面接を受ける時

辣腕プロデューサー、辣腕経営者、辣腕起業家などのように、職名を組み合わせて辣腕〇〇と使うことができます。

辣腕コンサルタントとして知られる〇〇氏の講演を聞き、私もいつか悩める企業のお役に立てるようになりたいと考えるようになりました。

「辣腕」の言い換え表現

「辣腕」と似たような意味の類語として次のような表現があります。ニュアンスの違いを踏まえて、使ってみましょう。

1)凄腕

読みは「すごうで」。普通の人にはない、並外れた技量を持っていること。また、その人。

2)敏腕

読みは「びんわん」。物事をてきぱきと処理する能力があること。「腕利き」ともいいます。

3)やり手

読みは「やりて」。物事を巧みに処理する人のこと。敏腕家・辣腕家とほぼ同じ意味です。

才能や人そのものを表す「腕」

人の才能を表す言葉には、今回の「辣腕」「敏腕」のように「腕」という感じがよく使われます。また、「社長の右腕」の「右腕」は、「最も頼りにしている部下」のことで、人そのものを表します。「腕」に能力という意味があることに加え、企業を人の体に例えた場合、頭に一番近い部位であることも大きいかもしれませんね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

【著者プロフィール】
前田めぐる(文章術講師)

コピーライターとして「言葉と文章」に関わり続けてきた経験をもとに、企業・自治体・団体向け広報講座の講師を務める。ワークを取り入れた文章術研修では‘伝える’を‘伝わる’に変換する文章の書き方を伝授。「楽しくて分かりやすく、すぐ実務に活かせる」と定評がある。

執筆・ライティングの専門領域は、【言葉・敬語・文章術・マーケティング・リスクコミュニケーション】。公益社団法人日本広報協会広報アドバイザー、文章術講師。著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』など。京都在住。

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