「分かりません」は敬語? ビジネスでの正しい使い方や言い換え表現を解説【例文つき】

2024/03/26

ビジネス用語

ビジネスにおいて「分かりません」という意思表明は重要です。自分には分からない、理解できない、答えられない、知らない……そんな場面であいまいな答え方をしてしまうと、相手は分かっているものとして、どんどんことを進めてしまうでしょう。

しかしいっぽうで、「分りません」とストレートに言うこともまた適切ではありません。失礼にならずに、しっかり伝えるにはどうすれば良いのでしょうか。場面に応じた答え方や例文を紹介しつつ、詳しく説明しましょう。

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「分かりません」の意味

「分かりません」は、「分かる」の否定形である「分からない」の丁寧語です。

・何かを尋ねられて知らない
・正解が見つからない
・物事の筋道や道理に納得がいかない
・理由があって答えられない

そんな時に使われるフレーズです。

「理解できない」「了解できない」「納得できない」「正解が見つからない」などの意味があります。

「分かりません」はそのまま使うと失礼?

さて、この「分りません」は、いささかストレートな表現です。例えば、授業で学生が先生からの質問に答えられない時に「分かりません」と言っても、大きな問題はありません。また、道を尋ねられて分からない時にも、失礼にはあたらない答え方です。

しかし、社会人がビジネスの場面で目上の相手に対して使うには、 直接的すぎて、やや失礼な印象を与えます。敬語表現ではありますが、信頼を損ねる可能性が大いにあります。

また、学生であっても社会人としての素養が試される就職活動の場面では、やはり「分かりません」を使わないほうが良いでしょう。

というのも、「分かりません」とストレートに言い切ることは、時に 投げやりな態度とも誤解されることがよくあるからです。

日頃から慣れ親しんだ同僚や先輩には使えるでしょうが、それ以外で目上の相手には積極的に使わないほうが良い言い方です。

「分かりません」の言い換え表現【例文つき】

ビジネスの場面で「分かりません」を使わないほうが良いとはいえ、実際に分からない、判断がつかない場面はあるものです。中には、自分の理解が及ばないのではなく、相手が無理を言っているケースもあるでしょう。さまざまな状況下で、「分かりません」を使わずに、同じような意味を伝えられる言い換え表現を紹介します。

分かりかねます

「……しようとしてできない」「……しようとしても難しい」ということを丁寧に伝える言い方「……かねる」。これを使った「分かりかねます」は、 「分かろうとしてもできない」という意味の「分かりかねる」を丁寧にした表現です。何かを尋ねられて分からない場面で、幅広く使えます。「申し訳ございません」を加えると、相手の期待に応えられずに申し訳ない気持ちも伝えられます。もし他の社員が分かる場合には、そのサポートを仰ぎましょう。

申し訳ございません。私では分かりかねますので、他の者を呼んでまいります。

存じ上げません

上司から「OBの〇〇さんと同じ出身大学ですよね。ご連絡先などは分かりませんか」と聞かれました。〇〇さんは独立起業して成功した著名なOBです。この場合、上司も尊敬する〇〇さんへの敬意を込めて「存じ上げません」を使えば、敬語表現としても適切です。「存じ上げる」は、聞き手でなく、 動作の及ぶ対象を高める働きがあります。主に、 人や人の名前など、高めるにふさわしい対象について使います。

お名前はもちろん聞いたことがありますが、直接は存じ上げません

存じません

目上の相手から「今朝……についてニュースで取り上げていましたね。詳しいことって、分かりますか」と聞かれました。その件について、知識や情報がない場合は、「存じません」と敬語で答えましょう。「存じる」は、「存じ上げる」と違い、単に 聞き手に丁重さを示すだけの働きです。 物や事など何についての知識についても使うことができます。

恐れ入りますが、その件についてはよく存じません

お答えいたしかねます

顧客とのトラブルがあり「担当者の携帯を教えろ」と怒りの電話が入りました。しかし、個人の携帯番号のため、答えることはできません。そんな時は、まず丁重に謝り、しかし個人情報については答えられないことをきっぱりと伝えましょう。

ご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ございません。あいにく携帯番号は お答えいたしかねますが、戻り次第ご連絡を差し上げます。今しばらくお待ちいただけないでしょうか。

まとめ

何かを聞きたくて尋ねられたけれど分からない時、「分りません」という他に今回のような言い換えが考えられます。

ただし、相手によってはそれで完結しないこともあるかもしれません。なぜなら、どうしても解決したい場合「分からないなら調べてほしい」「分かる人に聞いていてほしい」と考えている可能性もあるからです。

そうした期待にもしも応えられそうなら「少々時間がかかりますが、お調べしましょうか」「他の者が知っているかもしれませんので、確認いたしましょうか」など、相手の意思を確認してみましょう。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

【著者プロフィール】
前田めぐる(文章術講師)

コピーライターとして「言葉と文章」に関わり続けてきた経験をもとに、企業・自治体・団体向け広報講座の講師を務める。ワークを取り入れた文章術研修では‘伝える’を‘伝わる’に変換する文章の書き方を伝授。「楽しくて分かりやすく、すぐ実務に活かせる」と定評がある。

執筆・ライティングの専門領域は、【言葉・敬語・文章術・マーケティング・リスクコミュニケーション】。公益社団法人日本広報協会広報アドバイザー、文章術講師。著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』など。京都在住。

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