社外の相手に 「お休みをいただいております」は間違い!ビジネスでの正しい表現を解説【例文つき】

2024/03/26

ビジネス用語

不在の担当者あてに取引先からの電話。「〇〇さん、いらっしゃいますか」と聞かれて「〇〇は本日お休みをいただいております」と答えてしまった……。こんなことはありませんか?

社内の担当者に敬称をつけないところまでは合っていますが、その後の表現に間違いがあります。一見丁寧に感じられるこのフレーズ、どこがどのように間違っているのでしょうか。

順を追って解説しつつ、正しい言い換えや使い方、例文を紹介します。

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「お休みをいただいております」の意味

「お休みをいただいております」は、「お休み+を+いただい+て+おります」に分解することができます。それぞれの言葉には次のような意味や働きがあります。

・お休み=名詞「休み」の尊敬語。
・を=助詞
・いただい=動詞「いただく」の連用形。「もらう」の謙譲表現(謙譲語I)
・て=助詞。「いる」と組み合わせた「……ている」は動作の継続を表す
・おり=「おる」の連用形。「いる」の丁重語(謙譲語II)
・ます=丁寧語

以上の言葉から敬語表現を取り去ると、元々は「休みをもらっている」という意味だと分かります。つまり、「お休みをいただいております」は「休みをもらっている」を敬語にした表現です。このフレーズ自体に、文法的な間違いを認めることはできません。言葉だけを見ると「手紙をもらっている」を敬語にした「お手紙をいただいております」と、非常によく似ていますね。

とはいえ、社外からの問い合わせに対して「お休みをいただいております」と言う答え方が社会人の敬語として正しいかどうかは、また別の問題です。敬語が適切に使われているかどうかは、話す相手や話題に出てくる人物との関係性や場面に左右されるためです。次の段では、その点を掘り下げます。

社外に対して「お休みをいただいております」は間違い!

結論から言うと、社外の相手に対する電話の応答などで「〇〇は本日、お休みをいただいております」という表現は、正しくありません。SNSなどでも時々「本日、中の人はお休みをいただいております」というフレーズを見かけますが、用法としては同様に間違いです。

なぜなら、社員に休みを与えるのは、社外の人ではなく、自社側であり社内の上司だからです。敬語には「ウチとソト」という考え方があり、ソト(社外の聞き手)に対してはウチ(社内の人)を低める表現を使うようにします。このルールに照らせば、「お休みをいただいております」では、「いただく」という謙譲語を使って身内側である自社を立ててしまっていることになり、不適切な表現です。

では、どんな場面なら使えるのでしょうか。例えば、休暇中の本人が社外でたまたま自社の社長に会い「今日はお休みですか」と聞かれた場合には、「はい。お休みをいただいております」と答えることはできるでしょう。極めて限定的な状況ですね。

社外から問い合わせがあったのに申し訳ないという気持ちから、つい「いただいている」と答えてしまう心情は理解できないでもありません。しかし、相手にしてみれば「私が休みをあげたわけじゃないのに」と違和感を感じることがあるため、使わないほうが無難です。

「お休みをいただいております」の正しい表現と例文

休んでいる担当者にかかってきた電話に代わりに出る場合、
・〇〇は休んでおります
・〇〇は休みを取っております
・〇〇は休暇を取っております
・〇〇は終日不在にしております

などが正しい言い方です。

昨今では「休みはもらうものではなく、取るもの」という考え方も一般的になってきました。休んでいる社員への問合せは、取引先など社外からの電話以外にも、さまざまなツールや場面が考えられます。場面ごとの適切な表現や工夫できるポイントを以下に解説します。

休んでいる担当者宛に取引先から電話がかかってきた時

担当者の休みがその日限りの場合、社外の相手に伝える正しい表現は「本日は休んでおります」「本日は休みを取っております」です。「今日は」を「本日は」にすると、より改まった印象になります。また、社外の相手とのやり取りでは、自社の人間に役職や「さん」を付けません。初めに謝罪の言葉を述べ、代わりに用件を聞いておくと、相手に安心感を与えることができるでしょう。

申し訳ございません。部長の〇〇は、本日休みを取っております。差し支えなければ代わりにご用件を承りますが、いかがでしょうか。

休暇中の担当者宛に取引先から電話がかかってきた時

担当者の休みが1日だけではない場合、いつまで休みかも伝えます。急ぎの用件かどうかも確認し、もし緊急の内容なら電話・メール・チャットツールなどで担当者に伝えて対応しましょう。また、伝言をことづかったら「私〇〇が承りました」と自分を名乗るようにすると、さらに丁寧です。

恐れ入ります。〇〇は◯日まで休暇を取っております。◯日には出社予定ですが、お急ぎのご用件でいらっしゃいますか。

担当者が休みであることを伏せて社外からの電話に対応する時

担当者の休みを何らかの事情でオープンにしたくない場合もあるかもしれません。その際は、「終日不在にしております」という表現を使うと良いでしょう。用件を尋ねるか、あるいは次のように相手の意向を尋ねることもできます。

申し訳ございません。〇〇は終日不在にしておりますが、いかがいたしましょうか。

別の部署からの電話または対面で「〇〇部長はいらっしゃいますか」と尋ねられて対応する時

社内の相手には、担当者の敬称をつけたまま対応します。「〇〇は」「部長の〇〇は」ではなく、次のように答えます。

〇〇部長は本日お休みです。私は〇〇ですが、差し支えなければ代わりにお聞きしましょうか。

担当者自身が事前のメールで直接休みを伝える時

日頃から頻繁に連絡を取り合っている社外の相手に対しては、事前に担当者からメールなどで休みの旨を伝えておくことも多いですね。他のスタッフにかけるであろう手間や負担を減らすことができます。

◯月◯日は休みを取っております。もし、当日何かお急ぎの件などがございましたら、同じ部署の〇〇にお申し付けくださいますようお願いいたします。

担当者の家族から電話を受けた時

家族であれば通常は本人の携帯電話に連絡が行くことが多いでしょうが、緊急など何らかの理由で会社に直接かかってくることもあります。社内の人間の家族に対する敬語では、身内側とはなりません。社内の人間であっても尊敬語にします。「〇〇部長は本日お休みです」「〇〇さんは本日お休みでいらっしゃいます」などの言い方もあります。

〇〇部長は本日お休みを取っていらっしゃいます

店主が常連客に告知や対面であらかじめ直接休みを伝える時

飲食店などでは電話予約をしないで直接来店するお客さまも多いものです。「店に行ったら閉まっていた。知っていたら行かなかったのに」となれば心象を悪くしてしまいます。そのため、定休日以外に休まざるをえない場合は、あらかじめSNSや店内外ポスターなどで休業を知らせましょう。常連客に対する申し訳なさから「休業させていただきます」と書きたい気持ちもあるかもしれません。完全否定はできませんが、ウチとソトのルールに照らすなら次のようにシンプルに伝えれば十分です。

明日◯月◯日は休業いたします

まとめ

社外から社内の人間に対してかかってきた電話に応えるケースは、社会人として最初にマスターすべき敬語における「ウチとソト」の使い分けです。「目上であっても身内を高めてはいけない」という「相対敬語」のルールによるものですが、実は意外に間違いやすいもの。

例えば、TVのインタビューなどで芸能人が、「この〇〇はお母さんからいただきました」と答える場面も時々見受けられます。この場合は、インタビュアーが「ソト」で母が「ウチ」。「母からもらいました」「母がくれました」が正しい表現です。

文章では理解していても、口頭だとつい間違ってしまうのでしょう。言葉にする前にほんの1、2秒でも考えてみると良いかもしれませんね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

【著者プロフィール】
前田めぐる(文章術講師)

コピーライターとして「言葉と文章」に関わり続けてきた経験をもとに、企業・自治体・団体向け広報講座の講師を務める。ワークを取り入れた文章術研修では‘伝える’を‘伝わる’に変換する文章の書き方を伝授。「楽しくて分かりやすく、すぐ実務に活かせる」と定評がある。

執筆・ライティングの専門領域は、【言葉・敬語・文章術・マーケティング・リスクコミュニケーション】。公益社団法人日本広報協会広報アドバイザー、文章術講師。著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』など。京都在住。

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