学生から社会人になるときには、誰もが多かれ少なかれ不安を抱えるものです。
社会人になると、学生とは違った責任が求められるようになるため、自分はうまくやっていけるだろうかと不安を覚えるのも無理はありません。
今回は、内定学生から寄せられたお悩みをもとに、責任への不安を乗り越えて、自立した社会人としてスタートを切るにはどうすればいいか、大事なポイントをお伝えしていきたいと思います。
▼目次
1.入社後の社会人生活への【お悩み】
2.学生と社会人における「責任」の違いとは?
3.「責任を持つ」とはどういうこと?
4.「責任を持つこと」への不安の正体とは?
5.「責任を持つこと」への不安の乗り越え方
6.【回答】自分の言動すべてに責任が伴うことが不安です
7.自分の責任を正しく理解して、自己成長と信頼獲得につなげよう
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責任とは、その人が置かれた立場に付随して生じる任務や義務のことです。
学生は、お金を払って知識や技術を教わる立場にありますので、その責任は「しっかり学ぶこと」だと言えます。しっかり学ぶためには、規則正しい生活を送ることや自分自身の体調管理に気をつけることだけでなく、授業を休まず出席すること、積極的に課題に取り組んで知識や技術の修得に励むことが求められます。
一方、社会人は、お金をもらって自分の知識や技術を提供する立場にあり、その責任は「会社や上司、顧客などの指示、要求、要望にしっかり応えること」になります。具体的には、所属する企業の業績に貢献するため、任された仕事を「しっかりやり遂げること」が必要となります。そのために、規則正しい生活や体調管理に気を配るのはもちろん、業務に関する知識やスキルを高めることが求められます。
加えて、会社組織に所属する立場としての責任も生じます。会社の規則に従うのは当然ながら、社会のルールやモラルに反しない良識ある態度が求められます。さらに、組織の構成メンバーとしての協調性や周囲への配慮なども、社会人として大事な責任のひとつと言えるでしょう。
また、学生は、生活費を保護者に負担してもらう立場にありますので、その責任として「保護者に迷惑をかけないようにすること」「保護者に協力すること」などが求められます。
一方、社会人になると、自分の生活費を自分で負担する立場になります。その責任として、食費、住居費、公共料金、税金などを自分の収入から支払うことになり、計画的に支出を管理することが求められるようになります。
以上のように、学生から社会人になると、自立した大人として、周囲や自分自身への責任がより大きくなります。
「責任を持つ」とは、自分の立場上どのような任務や義務を負っているのかを正しく理解し、その任務や義務をしっかり果たそうという意識を持ち、そのための努力をする態度のことです。
ですので、手を抜いたり、いい加減にやったり、ズルをする人は、責任を持っているとは言えません。そういう人は、自分が果たすべき任務や義務に対する理解が不足していると言わざるを得ないでしょう。
協調性がなく自分さえ良ければいいという態度の人、周囲のことは考えずに我を通す人なども、社会人としての責任を持っているとは言えません。
さらに言えば、責任を持つということは、自分の任務や義務を果たせなかったときに、相応の罰を潔く引き受ける覚悟を持つことでもあります。
ミスや失敗をしたときに、言い訳をしたり、誰かのせいにしたりするのは、責任を持った人の態度とは言えません。叱責やペナルティを引き受ける覚悟があるからこそ、ミスや失敗をしないように準備をして、できる限りの努力をして仕事に取り組む。これが責任を持った人の態度です。
このように、責任を持つことには、大きなプレッシャーやストレスがかかりますが、その分だけ良い点もあります。
そのひとつは、自分自身が成長できる点です。自分の任務や義務を果たす過程において、知識やスキルが高まりますし、その努力と苦労の経験がキャリアアップしていく上での糧となります。
また、任務や義務を確実に果たしていくことによって、周囲からの信頼や信用を勝ち取ることができます。この人になら仕事を任せて安心だと思われるようになると、より重要なポストに登用されたり、やりがいのある仕事の話が舞い込むチャンスも拡大していきます。
責任を持つのは大変なことではありますが、社会人として成功していくために、とても重要なことなのです。
責任には大きなプレッシャーやストレスが生じます。そう考えると、責任を持つことに不安を感じたり、責任を持ちたくない気持ちになるかもしれません。
学生時代は、責任の範囲が自分自身や自分の身の回りに限定されていて、責任を果たせなくても大目に見られたり、仮に叱責やペナルティを受けたとしても、自業自得だと思えば割り切ることができました。
アルバイトでも、言われたことをきちんとやっていればよくて、ミスをしたりクレームを受けたりしたら社員が代わって対応してくれるので、大きな責任を持つこともなかったはずです。
ですが、社会人になったとたん、今まで経験したことがない重い責任を持つことになるのです。誰だって不安になって当然です。
とはいえ、責任を持つことからいつまでも逃げ続けるわけにはいきません。
責任を持つことに向き合うためには、いったいなぜ責任を持ちたくない気持ちになるのか、その心理を理解しておくことが役に立ちます。
責任を持ちたくないときの心理は、次の2つに集約できると考えられます。
ひとつめは、失敗することへの恐れです。
責任がないときは気楽な気持ちでいられますが、いざ責任を持つとなると、失敗してはいけないという意識が強くなります。もし失敗してしまったら、怒られてしまう。自分の評価が下がってしまう。周りに迷惑をかけてしまう。それは怖い。私には無理。やったことがないし、能力もない。自信がない。このように失敗を恐れることによって、責任を持ちたくないと思ってしまうのです。
ふたつめは、責任を持つことで窮屈な感じになることです。
責任を持つなんて、面倒くさい。気が重いし、疲れる。それよりも、気楽に生きていたい。ずっと自由でいたい。このように思うのは、学生時代の感覚に未練があるのかもしれません。学生時代のように気楽で自由な気持ちのままでいたい。そう思うからこそ、責任を持つことに窮屈さを感じてしまうのです。
これから社会人になるにあたって、責任を持つ覚悟が必要となります。そのためは、責任を持つことへの不安を乗り越えていかなければなりません。そこで、責任への不安に向き合うために役立つ3つの考え方をご紹介したいと思います。
未知の世界に足を踏み入れるのは、誰だって怖いものです。何が起きるかわからないときには、不安が生じて当たり前です。つまり、不安になるのはまったく問題ではなく、極めて自然なことだと言えます。ですから、「不安になっちゃダメだ」とか「不安になる私は情けない」などと思う必要は決してありません。むしろ、不安な気持ちを素直に受け入れるようにしてみてください。自分の心の中は不安な気持ちでいっぱいになっている。それに気づくことで、不安におぼれた状態から抜け出して、不安に向き合っていくことができるようになります。
「周りに迷惑をかけたらどうしよう」
「怒られたらどうしよう」
このように不安になるのは、悲惨な状態になりたくないと思っているからですが、裏を返せば、理想の状態になることを強く求めているとも言えます。たとえば、「周りに迷惑をかけたらどうしよう」という不安の背後には、「周りに迷惑をかけないように、自分の仕事をしっかりやりたい」という思いがあります。「怒られたらどうしよう」と不安になるのは、「怒られないように、仕事ができるようになりたい」と思っているからなのです。なんと前向きな人なのでしょうか! 不安は前向きさの裏返しです。不安を覚えたときには、自分は前向きな人なんだということにぜひ気づいてください。
頭の中が不安でいっぱいになっていると、つい悲観的になって悪い結果ばかり考えてしまい、より不安が増していく悪循環にはまります。その悪循環から抜け出すためには、「なんとかなる」と考えてみてください。何の根拠もなくていいので、「なんとかなる」と何度もつぶやいてみるのです。すると、不安が少しやわらいでいくように感じられるはずです。不安のほとんどが、無益な想像の産物です。意味のないことを考え続けるのをやめるためにも、意識して頭を切り替えることをぜひやってみてください。
不安を完全に解消するには、結局のところ、自分にできることをコツコツやっていくしかありません。ところが、不安な気持ちにどっぷり浸かっていると、自分がすべきことを冷静に考えられなくなりますし、自分にできることをやろうという意識が持てなくなります。だからこそ、まずは不安な気持ちから抜け出すことが重要になります。そのためにも、この3つが役に立ちますので、ぜひ試してみてください。
まずお伝えしたいこととして、あなたは「全ての自分の言動には責任がともなう」という社会人としてとても重要なことに気づいています。その意識は、これからあなたが成長して活躍していくために役に立つことなので、今後もぜひ持ち続けてほしいと思います。
その上で、少しだけ気になるのが、もしかすると真面目に考えすぎてしまうクセがあるのかもしれないという点です。
もちろん、真面目に考えることは大切です。そういう態度を持っているからこそ、これまで様々な成果を達成して来られたと思うからです。だからこそ、真面目に考えることに加えて、柔軟に考えることもできるようになると、ストレスやプレッシャーに苦しまずに、より素晴らしい成果が出やすくなるのではないかと思います。
柔軟に考えるというのは、「必ずこうでなければならない」という考え方の他にも、別の考え方がないかどううか探してみる、ということです。ときには肩の力を抜いて「なんとかなる」と自分に言い聞かせてみることも、きっと役に立つでしょう。
完璧な人は誰もいませんので、ミスや失敗をすることがあるかもしれませんが、肝心なのは、そこから何を学びとって自分自身の成長につなげられるかです。
社会人になると、仕事や私生活の場面において、周囲や自分自身への責任が強く求められるようになります。
責任の重さに不安を感じるかもしれませんが、責任を持って行動することは、自分自身が成長できるチャンスになるだけでなく、周囲からの信頼や信用を勝ち取ることで、やりがいのある仕事を任せられるチャンスにもなります。
社会人として活躍して成功するためにも、自分の責任を正しく理解した上で、その責任をしっかり果たすための努力を継続していってほしいと思います。
(笹氣健治)
※画像はイメージです。
【著者プロフィール】笹氣健治
メンタルトレーナー・心理カウンセラー
1967年生まれ。国際基督教大学を卒業後、NTT(東京支社)に入社。その後、地元の仙台に戻り、スポーツクラブ「グラン・スポール」の経営に携わる。企業を経営する上で人間心理を理解する必要性を痛感して心理カウンセリングを学び、現在は、ストレスやコミュニケーション問題の解消をテーマにした講演やカウンセリング、目標達成のためのメンタルトレーニングを行っている。『「やる気」のある自分に出会える本』(スリーエーネットワーク)、『仕事の悩みを引きずらない技術』(PHP研究所)など、著書19冊。
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