自己開示とは? 苦手を克服しコミュニケーション力を上げる方法

2023/12/04

社会人ライフ

自己開示は、他人との信頼関係を深めるために役に立ちます。

仕事をする上では、一緒に働く人たちとの良好な関係づくりは不可欠であり、特に、新社会人にとっては、スムーズな職場適応や業務遂行のために、自己開示をすることはとても重要になってきます。

とはいえ、自己開示は自分のことを他人にさらけ出す行為でもありますので、苦手意識を持つ人も少なくないかもしれません。

そこで、自己開示の本質や効果、実践方法について詳しく説明していきたいと思います。

自己開示とは?

自己開示とは、自分を他人に開示することです。

もう少し詳しく言うと、他人が知らない自分自身に関する情報を、言葉で相手に伝える行為が自己開示になります。

実際、私たちは他人とのコミュニケーションにおいて、頻繁に自己開示をしています。たとえば学生時代、同じクラスになった人に自分の出身校やどんな部活をやっていたかを話したことがあると思いますが、それも自己開示です。

初めて会った人に、自分はどこから来たのか、自分がどんな仕事をしている人物なのか、といった個人的なことを話すのも自己開示です。このように、私たちは普段から様々な場面で、ごく自然に自己開示をしています。

お互いに自己開示をすることは、相手との心理的距離を縮めたり、緊張を解きほぐしたり、その場の雰囲気を和やかにするなど、心地よい関係をつくるためにとても役に立ちます。

なぜ自己開示することが関係をよくする上で役に立つのかと言うと、相手の警戒心を取り除く効果があるからです。

私たちは、自分がよく知らない相手に対して警戒心を抱きます。

自己開示は、「私はあなたにとって危険な存在ではない」というメッセージになります。そのメッセージを受け取った人は、警戒心を解き、安心して近づいてもいいんだと思えるようになります。

自己開示をすることで、互いに安全感や安心感が得られ、それが心地よい関係をつくることにつながるというわけです。

自己開示の重要性とは?

自己開示は、仕事の場面においても、とても重要です。

仕事をしていく上では、一緒に働く上司や先輩、同僚との間の信頼関係が必要であり、自己開示はそのために不可欠だからです。

想像してみてください。

一緒に働く人の中に、自分のことをまったく話さない人がいたら、どう思うでしょうか?

あなたは、その人との間に見えない壁を感じるかもしれません。打ち解けようと思って話しかけても、自分のことをすべて秘密にされると、この人と仲良くなることは難しいだろうとあきらめの気持ちを持つかもしれません。

いくら仕事ができる人だったとしても、人間的にどんな人なのかわからないことで、信頼して一緒に仕事ができるとは思えないかもしれません。

これは極端な例ですが、自己開示をしないことは、多かれ少なかれ、相手にこのような印象を与えてしまう恐れがあることは確かです。

自己開示をすることは、相手との親密さを深め、信頼関係を築くことにつながります信頼関係ができると、コミュニケーションがスムーズになります

率直な意見交換が行われやすくなり、チーム内の風通しが良くなります。互いを気遣うようになり、仕事でストレスを感じることも少なくなって、パフォーマンスが高まります。仕事の分担や助け合いがうまく進み、チームの目標達成や問題解決に向けて、一丸となって活動しやすくなります。

信頼関係があるチームでは、一人がミスや失敗をしても必ずフォローが入るので、ミスを恐れずにチャレンジする雰囲気が生まれます。一人一人が自分の意見やアイデアを積極的に提案しやすくなり、チーム全体の成果が上がりやすくなります。

このように、仕事がうまくいくかどうかには一緒に働く人同士の信頼関係が大きく影響していて、だからこそ、相互に自己開示ができていることが、とても重要になってくるのです。

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自己開示の効果・メリットとは?

自己開示することによって相手との信頼関係が高まり、仕事がスムーズに進むようになりますが、自己開示する本人にとっても心理的に様々な効果があります。

その効果が、自己開示することのメリットにもなるわけですが、では、いったいどのような効果が得られるのでしょうか?主なものを3つご説明します。

1)自分に自信が持てるようになる

社会人として経験や実績が少ない時ほど、自分に自信を持てません。自信は成功体験によって高まっていくものです。しかし、最初から大きく成功するのは難しいので、小さな成功を積み重ねていく必要があります。

その一歩として最適なのが、自己開示です。

自分のことを話して、それが周りから否定されずに受け入れられる。この体験が、小さな成功体験として心に刻まれ、次はもう少しチャレンジしてみようと思えるようになります。

そうやって挑戦と成功を繰り返していくことで自信がついていき、もっと大きなことにチャレンジしてみようと思えるようになっていきます。

つまり、自己開示こそが、新社会人にとって最初の小さな成功体験の絶好の機会となるわけです。

2)コミュニケーションがうまくなる

コミュニケーションは技術です。

こちらの考えを伝え、それに対する相手の考えを聞き、そしてまたこちらの考えを伝える。この繰り返しがコミュニケーションですが、ここで肝心なのは、相手の考えを受けたら、それに対して適切な反応を返すことです。これをうまくできる人がコミュニケーションスキルの高い人です。

自己開示は一方通行で終わることはなく、たいていは、互いに自分自身のことを伝え合います。

たとえば、一方が自分の経験を話したら、もう一方はその感想を話すか、自分自身の類似の経験を話すという会話の流れになります。つまり、自己開示をすることは、相手の話を受けて適切な反応を返すための実践的トレーニングになるということです。

技術を磨くためには、実践を繰り返すことが必要です。

自己開示を積極的に行うことは、コミュニケーションの技術を磨く上で、とても役に立つのです。

3)性格が明るく前向きになる

自己開示は、性格にもプラスに影響します。

自己開示をしないのは、自分の殻に閉じこもって、外の世界との交流を断絶しているようなものです。自分しかいない世界の中で、自分のことだけしか考えていない状態です。

それに対し、自己開示をするのは、自分の殻を破って広い世界に飛び出すことであり、多くの人がいる世界の中では、他人のことも意識しなければならなくなります。

最初は不安や抵抗があるかもしれませんが、勇気を出して積極的に自己開示をしていくと、相手の自己開示も聞くことができて、世の中にはいろいろな人がいておもしろいなと思えるようになります。

すると、他人への興味が生まれます。そうやって自分の内側にだけ向いていた意識が外に向くようになると、自然に気持ちも開放的になり、性格も自然に明るく前向きになっていきます。

自己開示することで、自分の性格もオープンに変わっていくというわけです。

自己開示のやり方

自己開示の必要性やメリットは理解できたけど、やっぱり自己開示をするのは苦手。そんな人のために、自己開示をする際のコツや考え方をご紹介したいと思います。

自己開示が難しいと感じるシーンごとに説明していきますが、状況に応じてアレンジしながら試してみてください。

何を話していいか思いつかない時

例えば、社内研修のグループメンバー同士で自己紹介する時などは、他のメンバーが話した項目(配属先、趣味、特技など)をそのまま踏襲して話しましょう。

もし自分が最初の発表者で何を話していいか思いつかない時は、他のメンバーに「どんなことを話せばいいですか?」と正直に聞いてみるといいでしょう。親切な誰かが、こういうことを話せばいいんじゃない?と教えてくれたりします。

ランチや飲み会などの場合は、自分から話し始めるのではなく、相手から質問されるのを待つのもひとつの方法です。聞かれたことに答えるだけなので、何を話そうかと考える必要はなくて気が楽です。

どれくらい話していいかわからない時

しゃべりすぎると話が長いと思われるかもしれませんし、内容が少なすぎると社交的でない人だと思われるかもしれませんので、適度な量を話すように心がけることは大切です。どれくらいが適量なのかに迷った時は、相手に合わせて同じくらいの分量を話すようにするといいでしょう。

あとは、相手を観察することも役に立ちます。

自分が話をしている時に、相手の表情や態度から「話が長いなぁ」とか「その話は興味ないな」といった雰囲気が読み取れたら、自分の話は切り上げて、相手に話を振るといいでしょう。

自分の意見や感想を話す時

会議やミーティングで意見や感想を求められた時、何も発言しないでいると、やる気がないと思われたり、仕事ができない人だと思われたりするかもしれないので、しっかり発言できるように準備しておく必要があります。

そのためには、発言を求められるかどうかに関わらず、常に自分はどう考えたり感じたりしているかを意識しながら話を聞くクセをつけておくことをおすすめします。

「なぜそうなんだろうか?」「本当にそうなんだろうか?」と常に疑問を持ちながら聞くようにしたり、「それは良いと思う」「違うと思う」「私だったらこうする」といった自分だったらどう思うかを考えながら聞くようにすると、いざ質問された時に、すぐ意見や感想を言えるようになります。

相手の反応が気になる時

「こんなことを言ったらダメなやつだと思われるかもしれない」「こんな話をしたら自慢してると思われるかもしれない」といったように、自分の発言に対して相手がどう反応するかが気になって、ためらってしまうこともあるかもしれません。

こういう時は、自分の直感を信じるしかありません。

問題になる可能性が高いと思うか低いと思うか次第で、話すべきかどうかを判断するということです。ただし、忘れてはいけないのは、相手がどう反応するかどうかは、同じ話をしたとしても、一人ひとり異なるということです。その人の性格や、その時の気分や受け止め方によっても変わってきますし、自分との関係性によっても変わります。

とはいえ、リスクを避けるなら、少しでも危ないと思った内容は話さない方がいいかもしれません。「大丈夫だろう」と高を括った時に限って炎上してしまうのはよくあることだからです。

まとめ

自己開示の苦手意識を克服するために最も有効なのは、自己開示に慣れていくことです。
だから、最初は勇気を出して一歩を踏み出す必要があります。

小さい頃、初めて自転車に乗った時や、水泳を習い始めた時のことを思い出すと、最初は怖くても、やがて普通にできるようになったはずです。自己開示も同じで、慣れれば、なんてことはなくなります。

慣れないことをするのは、誰だって最初は怖いものですが、自己開示が普通にできるようになることは生涯に渡って役に立ちますので、ぜひチャレンジしてみてください。

(笹氣健治)


※画像はイメージです

【著者】笹氣健治

メンタルトレーナー・心理カウンセラー
1967年生まれ。国際基督教大学を卒業後、NTT(東京支社)に入社。その後、地元の仙台に戻り、スポーツクラブ「グラン・スポール」の経営に携わる。企業を経営する上で人間心理を理解する必要性を痛感して心理カウンセリングを学び、現在は、ストレスやコミュニケーション問題の解消をテーマにした講演やカウンセリング、目標達成のためのメンタルトレーニングを行っている。『「やる気」のある自分に出会える本』(スリーエーネットワーク)、『仕事の悩みを引きずらない技術』(PHP研究所)など、著書19冊。

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