臥薪嘗胆ってどういう意味? 由来や使い方、類語を例文つきで解説

更新:2023/12/11

ビジネス用語

「臥薪嘗胆」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。しかし、何かにじっと耐え、頑張っている様子だと何となく想像できても、その意味を正確に答えられる方は、もしかしたら少ないかもしれません。

詳しく知れば、ニュアンスや意図をしっかり把握することができるので、意思疎通がよりスムーズにいくはずです。由来や使い方なども含めて、掘り下げてみましょう。

臥薪嘗胆とは?

「臥薪嘗胆」という四字熟語にはどのような意味や由来があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

「臥薪嘗胆」の意味は?

「臥薪嘗胆」の読みは、「がしんしょうたん」。辞書によれば、次のような意味があります。

【臥薪嘗胆】がしんしょうたん
仇を討ち、恥をすすぐために、長い間苦心や苦労を重ねること。転じて、目的を達成するために苦労を耐え忍ぶこと。
(『用例でわかる四字熟語辞典 改訂第2版』学研教育出版)


「臥薪」は薪に寝ること、「嘗胆」は肝を嘗(な)めること。 悔しさを忘れないよう、あえて自らに苦行を強いて耐え忍ぶという意味です。

「臥薪嘗胆」の由来・語源とは?

「臥薪嘗胆」という言葉は、中国の呉と越が戦った故事に由来しています。越の王・勾践(こうせん)に敗れた呉の王闔呂(こうりょ)の息子・夫差(ふさ)は、父の仇討ちのため薪の中に寝て(「臥薪」)、復讐心を持ち続けながら軍の訓練を重ね、やがて越を降伏させました。

しかし、和議により、九死に一生を得た越王・勾践は、その恥を忘れまいと飲食のたびに苦い肝をなめて(「嘗胆」)、長年の間辛苦を重ねます。そしてとうとう、呉王・夫差を滅ぼすに至りました。

この様子は、『十八史略(春秋戦略) 』に記されています。夫差の「臥薪」と勾践の「嘗胆」。どちらも敗戦の恥や敵対心を忘れまいと、自らを辛苦の中に置いたことが分かります。

このように「臥薪嘗胆」の四字熟語は、もともとは雪辱のために自ら敵愾心や復讐心を煽り立てるように自分を追い込み、耐え忍ぶという意味でした。そこから転じて、 将来の成功を期して辛苦に耐え抜くという意味を持つようになった言葉です。

「臥薪嘗胆」が持つ印象、使う上での注意点

並々ならぬ努力と苦労に身を置く意味を持つ「臥薪嘗胆」という言葉は、非常にストイックな印象があると同時に、自己への厳しさと成功への意欲の両方を感じさせます。

そのため、自分のみならず部下、チームなど 身内の奮起を促したい時に使うと結束力が強まるでしょう。また、自分達を励ましてくれる上司や目上の人に対して、「臥薪嘗胆、がんばります」と 決意表明する時にも使えます。

しかし、もともとの故事には敗戦や仇討ち、復讐というエピソードもあるため、得意先や上司など目上の人を励ますような場面で使うと誤解を生むことがあります。あくまで、 自身や身内、目下の人について使うにとどめる方が良いでしょう。

臥薪嘗胆のビジネスでの使い方・例文

現代では、故事にあった復讐のような辛辣な場面は想像しにくいかもしれませんが、何かに失敗してリベンジしたい時や試合での雪辱を果たしたい時、あるいは成功のために並々ならぬ決意をする場面で「臥薪嘗胆」を使うと良いでしょう。

また、その結果、何らかの目標を成し遂げた、雪辱を果たしたなどの回想エピソードを語ったり、記したりする場面でもこの言葉を使えます。

ビジネスシーンでの使い方・例文

プレゼンがうまくいかなかった。コンペに負けた……など思うような成果をあげられず、自身やチームを鼓舞したい場面で「臥薪嘗胆の思いで〜」「臥薪嘗胆の精神で〜」「臥薪嘗胆の言葉を胸に」などと使えます。

<例文>
次回に向けて、臥薪嘗胆の精神でがんばりましょう!

スピーチやインタビューでの使い方・例文

記念式典のスピーチや成功者インタビューなどで回想エピソードを語る(記す)場合に、「臥薪嘗胆の末〜した」などと使えます。

<例文>
一度起業に失敗しましたが、再度起業して臥薪嘗胆の末、今のビジネスを成功させました。

面接での使い方・例文

勉強や訓練の辛さに耐えて努力したことをアピールしたい時に「臥薪嘗胆の日々」「臥薪嘗胆の○年間」などと使えます。

<例文>
高校時代に受験勉強で臥薪嘗胆の3年間を過ごした甲斐あって、第一志望の大学に合格できました。

臥薪嘗胆の類語


「臥薪嘗胆」と同じような意味を持つ言葉を以下に記します。言い換えが必要な時、ニュアンスの違いも含めて使いこなしてみましょう。

1) 座薪懸胆

読みは「ざしんけんたん」。
将来成功するために苦労をいとわず、現在の辛さを耐え忍ぶこと。辛い生活を耐えて、闘志や敵愾心をかき立てること。「臥薪嘗胆」と同じ意味です。

2)漆身呑炭

読みは「しっしんどんたん」。仇討ちや復讐、雪辱のために大変な苦しみや辛さに耐えること。「臥薪嘗胆」と同じ意味です。

3)捲土重来

読みは「けんどちょうらい」。一度敗れた者が、再び巻き返すこと。負けた者が再び勢いを盛り返す点では「臥薪嘗胆」と似ていますが、辛い日々を耐えるという意味までは含まれていません。

▼こちらも合わせてチェック!
「捲土重来」ってどう使う? 言葉の意味や例文を解説

4)汗馬之労

読みは「かんばのろう」。成功するためにあれこれ奔走し、苦労すること。将来の成功を目指して苦労する点では「臥薪嘗胆」と同じ意味です。仇討ちや雪辱のニュアンスはありません。

臥薪嘗胆の対義語

「臥薪嘗胆」と反対の意味を持つ四字熟語です。逆の状況にある時に使ってみましょう。

1)自暴自棄

読みは「じぼうじき」。失敗や失望が原因で捨て鉢になり、自分自身の身体を害し、前途を悲観し、やけになってしまうこと。自分を顧みず、挽回につながる苦労や努力をしない点で、「臥薪嘗胆」と反対の意味です。

2)再起不能

読みは「さいきふのう」。敗戦や失敗、挫折など望ましくない状態から、立ち直れないことを意味する言葉です。努力すること自体が難しい状況にも使われるため、「臥薪嘗胆」と真逆ではありませんが、立ち直れない点では反対の意味だといえます。

3)失望落胆

読みは「しつぼうらくたん」。失望と落胆、どちらの語も気落ちしてがっかりしていることを意味しています。辛苦について触れてはいないため、「臥薪嘗胆」と真逆ではありませんが、夢も希望もなくひたすら失意の底にある点で反対のニュアンスがあります。

まとめ

ビジネスシーンでの成功をどのように達成するかは人ぞれぞれです。情報化、DX化が進む時代にあって、「臥薪嘗胆」という言葉は、どちらかと言えば泥臭く感じるかもしれません。

しかし、成功者や年配者には中国の故事に精通する方も多いので、このような四字熟語を知っていると、コミュニケーション上何かと役に立つこともあるでしょう。ここぞという時に、使ってみるのもいいかもしれませんね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

【著者】前田めぐる(文章術講師)

コピーライターとして「言葉と文章」に関わり続けてきた経験をもとに、企業・自治体・団体向け広報講座の講師を務める。ワークを取り入れた文章術研修では‘伝える’を‘伝わる’に変換する文章の書き方を伝授。「楽しくて分かりやすく、すぐ実務に活かせる」と定評がある。

執筆・ライティングの専門領域は、【言葉・敬語・文章術・マーケティング・リスクコミュニケーション】。公益社団法人日本広報協会広報アドバイザー、文章術講師。著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』など。京都在住。

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