SDGsに貢献するには、特別なことをしなければならないわけではありません。日常の中でも少し視点を変えるだけで、サステナブルな行動に繋げられるのです。
今回は、国内外のサステナビリティに関する情報配信メディア「IDEAS FOR GOOD」にて掲載されている中から、身近なことからSDGsに取り組む事例を紹介します!
企業向けのプラットフォーム「IDEAS FOR GOOD Business Design Lab」のチーフデザイナーを務める宮木志穂さんにお話を聞きました。
→【クレカでの買い物や動物クッキーがSDGsに繋がる?!】実は既に関わってるかもしれない!無意識のSDGs貢献事例をご紹介! #Rethinkとは?
PROFILE
宮木 志穂 (みやぎしほ)
ハーチ株式会社 IDEAS FOR GOOD Business Design Lab開発責任者
◉―― 1994年東京生まれ。大学在学中に東北ボランティア、イギリス留学を経験。社会を良くするアイデアを発信する自社メディア「IDEAS FOR GOOD」の編集者兼ライターを経て、2020年3月に企業向けのプラットフォーム「IDEAS FOR GOOD Business Design Lab」を立ち上げる。現在は、開発責任者として企業の サステナブル・トランスフォーメーションの支援を行う。
▼Rethink INDEX
1.【事例1】髪型で安全を犠牲にさせない!ヘルメット・ヘアサロン
2.【事例2】交通違反をすると音楽が流れ出す!トヨタのアプリ
3.【事例3】制限速度を守ると当たる?!スピードカメラくじ
「格好いいからやってみたいと思えることならば、人は自然と行動するはず」と宮木さんはいいます。
そのいい事例として宮木さんが教えてくれたのは、電動自転車と電動スクーターのシェアリングサービスを提供するLime(ライム)が実施した「Helmet Hair Salon(ヘルメット・ヘアサロン)」というプロジェクトです。
現在、ヨーロッパの国々では、自転車走行時の安全を守るためヘルメットを着用することが推奨されています。しかしLimeが調査を行ったところ、イギリスでは、自転車やスクーターに乗っている人の19%が、髪型が崩れるのが嫌だという理由でヘルメットを着用していません。
そこでLimeは、ロンドンの美容室Blue Titと協力して、ヘルメットが被りやすく、かつ格好良く見える髪型を提案するヘアサロンを期間限定でオープンしました。
With the help of our friends at @bluetitlondon, we launched the first ever Helmet Hair Salon to show Londoners the fear of helmet hair doesn’t have to get in the way of their safety.
Book a FREE helmet hair touchup at Blue Tit's Portobello salon here: https://t.co/xvU43A3bqf pic.twitter.com/10ju7kR0xP
— Lime (@limebike) June 20, 2022
「誰しも危険なものほど魅了されてしまうというのはありますよね。ですが、「ヘルメットをかぶると格好悪い」という認識が、命を奪うことにつながるかもしれないと気づくことが大事。このプロジェクトは、ヘアスタイルを工夫することで安全性と格好良さをきちんと両立させているところが画期的だと思います。」
Helmet Hair Salonでは、訪れた人たちに無造作ヘアのセット方法や低めの位置でのポニーテールの作り方などを提案。ヘルメットを被っても格好良く見えるヘアスタイルにすることで、自発的に行動を変えるように促します。
「自転車やスクーターのシェアリングサービスの会社が、こうした取り組みをしていること自体が素晴らしいですよね。自分たちのサービスが誰かの生活や人生を危うくさせるものであって欲しくないという思いがあって、真剣に取り組んでいるのだと思います。」
→ヘルメット・ヘアサロンが出来たきっかけをもっと詳しく知りたい!
“格好良く見られたい”という若者の気持ちを、安全を守る行動に繋げている事例もあります。
原付以上の車両で交通事故を起こす割合が最も高いのは、16~24歳の世代の若者たち。スピードの出し過ぎによる事故が多い傾向にあります。スピードを出すことが恋人や友人にかっこよくみられる、といったことも一つの潜在的な原因になっているのではないでしょうか。
そこで自動車メーカーのトヨタは、若者の交通違反を減らすためのアプリを作りました。
「ドライバーがスピード違反やよそ見をしていたら、“彼らの両親”がセレクトしたSportifyの音楽プレイリストが自動的に車内に流れるというユニークなアプリです。極端なことをいうと、高速道路を格好をつけながら制限速度以上のスピードで走っているときに、突然演歌が流れるといったイメージですね(笑)」
この音楽は、ドライバーがスピードを落とすか、スマートフォンを触るのをやめるまで流れ続けるため、自然と安全運転を心がけるようになっていきます。
→トヨタの掲げる若年層へのメッセージは〇〇〇にも繋がる?!こちらから詳しくチェック
自発的に交通ルールを守りたくなるように促す事例がもうひとつあります。
車の運転ではスピードの出し過ぎは禁物。わかっていても、つい制限速度を超えて違反切符を切られてしまうことがあります。内閣府の調査によると、令和2年に発生した交通死亡事故のうち、最高速度違反によるものは157件。全体の5.6%を占めています。
そこで「スピードの出し過ぎはだめ」ではなく、「制限速度を守るといいことがある」という視点で交通ルールを守ることを促しているのが、The Speed Camera Lottery(スピードカメラくじ)です。
「スウェーデンの交通安全団体NTFと自動車大手フォルクスワーゲンが行っているキャンペーンで、道路に設置したカメラによってスピードを守っているかを撮影し、速度制限を守っている運転手からランダムに当選者を選んで賞金を送ります。速度制限を守らないと罰金を科す仕組みから、視点を変えて、ルールを守った人を称賛することで、事故が減るように促しています。」
このキャンペーンはストックホルムで2010年9月に試験的に実施され、24,857台の車を撮影。そのうち1人に2万スウェーデン・クローナ(当時約22万円)が贈られたほか、4人に1万クローナ(当時約11万円)が当たりました。試験が行われた道路では、実際に車の平均速度が32km/hから25km/hに低下し、速度違反の減少に繋がったそうです。
「普段、カメラを意識するのは自分がスピードを出しているときだと思いますが、このキャンペーンでは日常の中で自発的にカメラを意識できるようになるというのがポイントです。とても遊び心がありますよね。」
どうしたら自発的に行動したくなるか、視点を変えて考えることが、SGDsを達成する行動に繋げるきっかけになるでしょう。
→漠然としたメッセージを行動に移せるかも!ヒントを詳しく知る
文:安藤茉耶
編集:学生の窓口編集部
取材協力:ハーチ株式会社 「IDEAS FOR GOOD Business Design Lab」
出典・引用:
【事例1】
・引用サイト:LIME公式Twitter
【事例2】
・引用:Toyota Belgium 公式youtube channel
・参照サイト:警察庁 令和3年交通事故統計
・参照サイト:(財)交通事故総合分析センター
【事例3】
・引用:スウェーデン フォルクスワーゲン社 企画「 Rolighetsteorin」公式youtube channel
・参照サイト:最高速度違反による交通事故対策検討会 中間報告書
・参照サイト:内閣府 令和3年版交通安全白書
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