SDGsに貢献するには、特別なことをしなければならないわけではありません。日常の中でも少し視点を変えるだけで、サステナブルな行動に繋げられるのです。
今回は、国内外のサステナビリティに関する情報配信メディア「IDEAS FOR GOOD」にて掲載されている中から、身近なことからSDGsに取り組む事例を紹介します!
企業向けのプラットフォーム「IDEAS FOR GOOD Business Design Lab」の開発責任者を務める宮木志穂さんにお話を聞きました。
→【アプリやコーヒーで観光地の未来を守る?!】視点を変えて観光客と地域を繋げるサステナブル事例を紹介! #Rethinkとは?
PROFILE
宮木 志穂 (みやぎしほ)
ハーチ株式会社 IDEAS FOR GOOD Business Design Lab開発責任者
◉―― 1994年東京生まれ。大学在学中に東北ボランティア、イギリス留学を経験。社会を良くするアイデアを発信する自社メディア「IDEAS FOR GOOD」の編集者兼ライターを経て、2020年3月に企業向けのプラットフォーム「IDEAS FOR GOOD Business Design Lab」を立ち上げる。現在は、開発責任者として企業の サステナブル・トランスフォーメーションの支援を行う。
▼Rethink INDEX
1.【事例1】セゾンカードの明細は、CO2の排出量を見える化?!
2.【事例2】“可愛いクッキー”が生物多様性に気づきをもたらす!
3.【事例3】動物たちに居場所を返す“GIVE SPACE”という考え方
「サステナブルな取り組みは、いかに無意識にやれるかが重要」と宮木さんはいいます。
マイバッグを持ち歩くといった、これまでの生活にプラスアルファで行動が必要になることは、習慣化するのにどうしても時間がかかります。そこで宮木さんが教えてくれたのは、セゾンカードが提案する新たなクレジットカード「SAISON CARD Digital for becoz」です。
今、社会では日常生活や経済活動において避けることができないCO2排出量を把握し、削減しようというカーボン・オフセットへの取り組みが広がっています。しかし、自分が普段どのくらいCO2を排出しているか、把握している人はどれだけいるでしょうか? 買い物を通してそれを明らかにするのがこのクレジットカードです。
「日頃、買った商品のCO2排出量を意識する人は少ないと思います。その商品がいくらなのか、どんな機能なのかを調べることはあっても、商品を購入したことでどれくらいの環境に影響を及ぼすか、というところにはなかなか考えが至らないのではないでしょうか。SAISON CARD Digital for becozでは、決済データから購入した商品のCO2排出量がわかるようになっています。つまり、CO2排出量を可視化することができるのです。」
このクレジットカードは、日々の消費活動におけるCO2排出量を測定・管理できるクレジットカードを提供するスウェーデンのDoconomy社と業務提携して開発したもの。どんな商品を買うとCO2排出量が多くなるかを、毎月のカード明細で確認できるのです。
カード明細は多くの人がチェックするものなので、自然とCO2の排出量を意識するようになるという利点もあります。
「自分がどのくらいのCO2を排出しているかを実感することで、環境負荷の低い生活を心掛けることに繋がります。私は、新しいものを買うときには『これは本当に必要なのか、リペアで以前のものを使い続けることはできないか』と考えますが、本当は自分の好きなものを買いたいという願望もあります。CO2を排出すると認識した上で、それでも購入した商品であれば、大事にし続けようという気持ちが芽生えますし、本当の意味でものを買う行為への罪悪感を減らすことができるのではないでしょうか。」
→CO2の可視化が出来るセゾンカードについて、もっと詳しく知る!
「生物多様性」をテーマに、私たちの身近なものでSDGsに貢献している事例もあります。それが、三重県・桑名市を拠点に活動するクッキー専門店「kurimaro collection」です。このお店では、“クッキー”をフックに、生き物の奥深い世界を知る気づきにつなげています。
「生き物の魅力を発信するメディアのような役割を果たしているお店です。ここで販売しているのは生き物をモチーフにした可愛らしいクッキー。例えば、カエルが卵から孵化して成体になるまでの様子をデコレーションクッキーで表現し、生き物の成長の過程を学べたり、沖縄・奄美地方の固有種の生き物の特徴を落とし込んだクッキーを作り、地球上に存在する生物の豊かさを伝えたりしています。」
最初は「ただ可愛いクッキー店」という認識で訪れても、さまざまな生き物のクッキーを目にすることで生物多様性について考えるきっかけになると、宮木さんはいいます。
「特に都市部で生活をしていると、生物を身近に感じる機会は多くはありません。自分の飼っているペットや動物園、家に出る煩わしい虫などでしか生き物と触れ合う機会がない人も多いでしょう。クッキーを通して、地球上のさまざまな生物に想いを馳せるすごくいい機会だと思います。」
→クッキーの手作り体験も出来るクッキー専門店「kurimaro」の代表の方の想いとは?
宮木さんは、生物多様性を考える上で、とても参考にしている概念があるといいます。ベルリン在住のエコロジカル・アーティスト、井口奈保さんが生み出した「GIVE SPACE(動物たちに居場所を返す)」という考え方です。
GIVE SPACEとは、人間を地球上の動物のひとつとして捉えて、人間が介入しすぎて侵してしまった自然を他の生物たちに返すという考え方のこと。
「例えば、人間は生物の死骸が何万年もの時間をかけて堆積して作られた石油を採掘したり、大量の森林資源を使ったりしています。人間にとって有害な動物は住処を制限して絶滅させることも出来ます。一方で、人間もあくまで地球上の生物の一部である。視点を変えてみると、生態系のバランスの中でうまく共存することが中心にあるべきだと感じます。動物・生物たちの居場所である環境を再生して取り戻すという考え方は生物多様性を考えるうえで欠かせないと思います。」
生物多様性がなくなっていくことは人間にとっても問題だと、宮木さんはいいます。
「私たちとの関わりに目を移すと、例えば花粉媒介者であるミツバチは食糧確保の上で大事な役割がありますし、海に目を向けるとサンゴ礁は海の生き物たちの住処でもあり、防波堤としての機能もあります。これらの生物たちの急激な減少は、他人事ではなく私たちの生活に関わる直接的なものです。」
自分にとって心地よい環境が、他の生物たちにとっても心地よいものなのか。それを常に考えるだけで、日常生活の中での行動が、自然とサステナブルな方向に向かっていくはずです。
→「GIVE SPACE」の考え方に至った井口さんのきっかけって?
文:安藤茉耶
編集:学生の窓口編集部
取材協力:ハーチ株式会社 「IDEAS FOR GOOD Business Design Lab」
出典・引用:
【事例1】
・CO2排出量を可視化する『SAISON CARD Digital for becoz』リリース
【事例2】
・いきものクッキー専門店「kurimaro collection」
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