大きな病気やケガをしたときなど、いざというときに入っておくと安心な生命保険ですが、本当に生命保険は必要なのでしょうか。生命保険の加入率や必要性について、入院した場合や働けない場合など、事例を元に見ていきましょう。
(監修協力:飯田 道子)
世界中を見渡すと、日本人ほど生命保険が好きな民族はいない、といわれています。それは、日本人の生命保険加入率が8割を超えているためで、街を歩けば5人に4人が何らかの生命保険に加入しているというわけです。
では、そもそも生命保険とはどんな仕組みなのかと言うと。
たくさんの加入者から毎月の保険料を集め、「入院してお金が必要になった」「ケガや病気で働けなくなった」という人に対して、保険金が支払われる、という相互の助け合いの形になっています。
医療費には自己負担分がありますが、それを補うために、生命保険が役立つのです。
では、実際に入院したり、働けなくなったりしたときに、生命保険がどのくらい助けてくれ、生命保険がないとどんな困ったことが起こるのか、2つの事例に分けて詳しく見ていきましょう。
日本の社会保障は、世界的に見ても充実しています。そのため、病院で治療を受けたときの自己負担額が全体の3割ですむことは周知の事実です。
さらに、健康保険には「高額療養費」という制度があり、1ヶ月の自己負担額には限度があります。具体的には、以下の計算式で求められます。
つまり100万円の治療費がかかったとしても、窓口で払うのは自己負担の30万円、さらに高額療養費制度によって8万7430円にまで軽減されます。窓口で払った額と自己負担額の差額は後から払い戻される制度なので、一時的に30万円は必要となりますが、治療が長引けば自己負担限度額自体が引き下げられる仕組みもあります。
こうした制度が充実しているので、日本国内で保険は絶対入るべきものではありません。
ただし、高額療養費制度の対象はあくまでも健康保険の対象となる治療費のみですから、保険適用外の先進医療にかかる費用や、病室を個室にしたときの差額ベッド代などは対象となりません。
こういった社会保障がある上で、より手厚い保証を得るためには、医療保険などの生命保険に加入することも選択肢の一つとして考えることができます。
サラリーマンで社会保険としての健康保険に加入している場合、ケガや病気で働けなくなったら「傷病手当金」を受け取れます。働けなくなったときから最長で1年6ヶ月間、給与の約3分の2が支給されますので、最低限の生活費を得ることはできるというわけです。
ただし、傷病手当金はあくまでも企業が加入している社会保険の制度であり、自営業の人や学生でも加入が必要な「国民健康保険」では傷病手当金は受給できません。
もしも就業が不能となった際の補償として、生命保険の加入を考えておくのは間違った選択ではないでしょう。
日本では、社会保障制度が整備されていますが、それだけでは不十分と感じる人もいることでしょう。もしもの場合に、社会保障+αの補償を受けられるようしておきたい場合は、医療保険や就業不能保険など、生命保険への加入を検討しましょう。
特に事故の発生しやすい職場で働く場合は、備えておいた方がいいかもしれません。
そうでない人の場合は、絶対に必要というわけではありません。ですが、けがをするしないに関わらずいつか働けなくなるときがきますから、そのときに備えてなにか資産を残しておくことは考えておいた方が良いでしょう。生命保険としての補償はそこそこに、運用性の高い保険商品もあります。
生命保険に加入するためには、毎月一定額の保険料を支払う必要があるので、家計への負担を考えて、補償の範囲や内容を決め、時に生活のスタイルが変わったら見直すようにしながら上手に保険を利用していくと良いでしょう。
ケガや病気で入院したり、働けなくなったりした場合でも、日本にはさまざまな社会保障制度があります。
生命保険を利用したほうが良いのか、貯蓄に回したほうが良いのか、ライフスタイルに合わせてよく検討しましょう。
(学生の窓口編集部)
監修協力:飯田 道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト。銀行勤務を経て、96年にFP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などを行っている。海外移住にも対応しており、特にカナダや韓国への移住相談や金融・保険情報を得意としている。
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