「遵守」という言葉、書類やネットなどで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。「法令遵守」といった言い回しで使われることが多くなりましたが、正確にはどのような意味なのでしょう。
今回は、今さら聞けない「遵守」の意味と読み方、そして具体的な使い方を例文で解説。「順守」「厳守」との違いや類義語・対義語にも触れていきます。
改めて「遵守」の読み方を聞かれると自信がない…そんな方も多いのでは。ここで「遵守」の正しい読み方と意味について確認しておきましょう。
遵守の正しい読み方は「じゅんしゅ」。実は過去に「そんしゅ」と読み間違いをしてしまっている人もいましたので要注意です。「遵」という字が「尊(そん)」と似ているために、うっかり間違えてしまうことがあるようです。
「遵守」とは、法律や道徳などのきまりを守り、従うことです。
日常生活ではあまり使われることのない「遵守」という言葉ですが、「法令遵守」などという言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。法律関係の仕事についている方には、比較的なじみのある言葉です。
「遵守」は「順守」と表記されることもありますが、この2つに違いはあるのでしょうか。
結論から言うと、この2つに明確な違いはなくほぼ同じ意味で使われており、国語辞典でも2つの漢字が併記されています。ですが、使われるシーンとニュアンスに違いがあります。
まず使われるシーンとして特徴的なのは次の2点です。
・政府は「遵守」を使う
・新聞などのメディアは「順守」を使う
政府が出す文書には「遵守」が使われています。法令に関わる文書もすべて「遵守」です。例を挙げてみましょう。
就活・採用活動日程をはじめとする事項を遵守いただくよう経済団体等へ要請しています。
(引用:内閣官房「就職・採用活動に関する要請」)
上記は内閣官房の公式ホームページからの一文です。「遵守」となっていますね。
一方、新聞や雑誌、テレビなど多くの人が目にするメディアでは「順守」が使われることが多いです。こちらも例を見てみましょう。
ヤフージャパン、欧州で閲覧中止「法令順守困難で」
(引用:毎日新聞2022/2/2)
こちらは毎日新聞のデジタル記事です。今度は「順守」が用いられていることが分かります。新聞社、編集社、テレビ業界や広告業界などでは社内でも「順守」を使う場合がありますので、周囲の人々がどのように利用しているのかを観察してみてください。
さらに、地方自治体や民間企業でも「順守」の方を使うケースがみられます。このように、現在では「遵守」と「順守」がかなり混在している状況なのです。こうした中、今後どちらを使うべきか迷ってしまう場合は、政府にならって「遵守」を使う方が一般のビジネスシーンでは適切とされています(メディア関係など特定の場合を除く)。
なお、ビジネスシーン以外の日常で使う場合は、どちらの表記を使っても構いません。そもそも意味は同じなので、あとは次に解説するニュアンスの違いを参考に使い分けしてもいいですね。
「遵守」と「順守」には、微妙なニュアンスの違いもあります。漢字の「遵」と「順」には両方とも訓読みで「したがう」という読み方があるのですが、「順」の方にはそれ以外に「すなお」という読み方もあります。
遵守の方が「少しもそむかず厳格に守る」といったニュアンスとなるのに対し、順守の方は「素直に従う」といったニュアンスを持っているのです。
多少のニュアンスの違いこそあれ、どうして同じ意味で2つの表記があるのでしょうか。歴史をたどると、もともと使われていたのは「遵守」の方です。ですが昭和29年に「遵」という漢字が『当用漢字』という、一般的に使用される漢字から外す案が出されました。
そのため、新聞などのメディアでは「遵」の代わりに「順」の字を当て「順守」と表記するようになったのです。メディア業界で「順守」が使われているのはこうした背景があったのですね。
しかし、結局「遵」は当用漢字表から外されることはありませんでした。現在でも「遵」は常用漢字として日常的に使われており、「遵守」と「順守」の2つの表記が広まったというわけです。
「遵守」のビジネスシーンでの使い方を例文でご紹介します。
<例文>
「就業規則遵守に関する誓約書を提出していただきます。」
「労働三法の遵守は、企業の責務である。」
「法令を遵守するために、コンプライアンス部門を立ち上げた。」
「飲酒運転などがニュースになっているが、公務員として法令遵守を徹底してもらいたい。」
「当サービスを利用するにあたり、ガイドラインを遵守してください。」
「入社について遵守すべき事項をまとめましたので、ご覧ください。」
「遵守」とあわせてビジネスシーンでよく使われる言葉が「コンプライアンス」。コンプライアンスとは、まさに「法令遵守」を指しています。この機会に覚えておきましょう。
ちなみに、遵守を英語にする場合いくつかの表現方法がありますが、その1つがまさに“Compliance”です。例えば、
・Legal Compliance(法令遵守)
・Compliance with the rule(規則の遵守)
といった具合に表現します。
ここでは遵守と意味が似ている類義語として「厳守」「準拠」「堅守」をご紹介します。
「遵守」と「厳守」は非常によく似ています。例えば「社内ルールの遵守」「社内ルールの厳守」どちらも問題なく使うことができますね。両者の違いとしては「厳守」の方が使用される幅が広いという特徴があります。時間厳守という慣用句があるように、時間やルール・約束・秘密など、さまざまな事柄に対して使うことができます。
準拠には「~をよりどころにする」「~を標準とする」という意味があります。使い方は「教科書準拠のテキスト」など。遵守の方が、より厳格に守る・従うといった強めのニュアンスとなります。
堅守(けんしゅ)とはその文字からも分かるとおり「かたくまもること」を指します。使い方は「ポジションを堅守する」など。何としても守るといった意味合いがあり、法令や規則以外の事柄に対して使われる印象です。
遵守の対義語としては「違反」「違背」を挙げることができます。
法律を守ることを意味する「遵守」に対し、「違反」は法律や契約、約束を守らない、背くという意味を持つため、対義語と定義することができます。
基本的に違反と同じく、決まり事を守らないことを意味します。「違反」は国や会社などが決めた法律、社則などを破った際に使われる一方、「違背」は個人間での決め事を守らなかった場合に使用されます。
遵守の意味や使い方についてまとめました。その意味は「法律や道徳などのきまりを守り、従うこと」。そして順守という表記もあり、この2つは全く同じ意味の言葉です。ビジネスシーンでは遵守を使うことが一般的ですが、業界によっては順守との使い分けが必要な場合もあります。遵守という言葉を使うときは、ぜひ使うシーンや書き方に気を付けてください。
文:マイナビ学生の窓口編集部
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