きめ細やかな気遣い、相手を喜ばせたい気持ち、人に奉仕する心。ホスピタリティは接客業や介護だけでなく、恋愛シーンやビジネスシーンなどあらゆるところで必要とされるものではないでしょうか。しかし、あまりにやりすぎると相手を困らせることも。適度なホスピタリティはどうしたら身に付くのでしょう? 誰か教えて!
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今回のちょいたつ(ちょい達人の略)は、北陸地方の温泉街で約40年にわたり旅館を支えてきた大女将・ミズエさん(60歳)(仮名)。「うちは小さな旅館だから、常連客でもっているようなもの。何度も来たくなる空間にするよう、いつも心がけています」と優しく話すミズエさんに、ホスピタリティについてお話を聞きました。
ホスピタリティを身につける上での心得を教えてください。
■お客様は神様じゃない
「よく『お客様は神様です』なんて文句を聞きますが、実際は、神様のような扱いをされてもお客様は喜ばないもの。ぺこぺこした態度でひたすら『かしこまりました、申し訳ございません』なんて同じ態度ばかりとるのは、お客様を観察する能力の足りない人がやることです。お客様の帰り際、『いらっしゃったときより、なんだかお顔色が良くなられました?』なんて心から伝えられると良いですね」
相手次第で接客の仕方を変えるスキルを身につけるには、まず観察からですね。
■自分の部屋の窓をピカピカにする
「最近の若い人は、自分に尽くすことがあまり上手ではない気がします。しかし、自分へのホスピタリティのない人が、お客様に奉仕できるわけがないんですよ。奉仕の喜びを学ぶため、毎年新人さんに与えている課題は『自分の部屋をきれいにすること』。少しの労力で自分の手で部屋の窓をピカピカにすると、自分のしたことがうれしくなるでしょう。きちんと手をかけて自分を喜ばせる能力のある人が、上手にお客様を喜ばせられる人なんです」
「自分を喜ばせる」と聞くと、自分にお金をかけるようなイメージがありますが、お金より手をかけろということですね。
■花を生ける余裕を持つ
「私の旅館には必ず花を生けています。春なら、ご近所さんの桜の木の枝を少しいただいたり、ミズバショウを生けるなど、必ず旬のものを飾っていますね。私自身もよく旅行をしますが、老舗旅館ほどお花のセンスが良いもの。旅館は景気に左右されやすいので、どうしてもお花代からカットすることが多いようですが、それでもお花代をケチらない旅館は、お客様を喜ばせる気持ちを失っていない証拠。人様の笑顔で、自分の生命線をつないでいける女将のいる旅館は、結果生き延びるんですよ」
自分自身のことでいっぱいになりそうなときほど、人を喜ばせる気持ちや茶目っけを忘れたくないものです。
■ひとことアドバイス
「なぜか旅館で長く働く女性は、家ではわがままなタイプが多い。360度奉仕の姿勢を持つ必要なんてないんです。自分を適度に甘やかすことも、ホスピタリティをわき起こすのに必要なエネルギーなんですよ」
仕事や人間関係で心に余裕がないときは、ホスピタリティ精神なんて吹っ飛んでしまいますよね。それでも人に尽くせるだけの余裕が欲しいものですが、大女将曰く「経験ね」とのこと。若いうちに"いっぱいいっぱい"になるのも大切なことかも。焦らず、頑張りましょう。
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